須藤定久は地圏資源環境研究部門に所属しています。
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コンクリート製品の話
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1.はじめに
道路の舗装工事といえば,まず砂利道の両側に溝を掘り,玉石や砕石を入れて突き固め,型枠を組み,中に鉄筋を入れて,コンクリート・ミキサーで練った,あるいはミキサー車で運んできた生コン(*1)を流し込んで側溝を造ることから始まった.
しかし,最近ではこんな光景をめったに見なくなった.これに代わって,砕石を敷き込んで固めた地盤の上に,大型トラックが運んできた既製の側溝をクレーンで並べ,ユニットの間をコンクリートで固めて側溝ができあがりといった光景を目にするようになった.
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【写真1】コンクリート製品がたくさん使われている工事現場
土浦市内のドラッグストア建設現場で撮影
運ばれてくる側溝はどこで,どんなふうに造られているのだろうか? 土木工事がどう変わっているのか?
早速,コンクリート工場を訪ねて教えていただくことにした.
*1:セメント・骨材・砂利や砕石と砂・水・混和剤などを混ぜた未固結のコンクリート.JIS規格では「レディ−ミクストコンクリート(ready mixed concrete)」と呼ぶが「生コン」という言葉が広く使われている.レミコンと呼ぶ企業もある.
コンクリート製品で良く目にするものといえば道路脇の側溝,歩道や車線の間を仕切るブロック,電柱,それに道路に溝めこまれたマンホールなどである.大きく分けると電柱や下水管のような筒状のものと,箱状・ブロック状のものに大別される.これらは製造法が異なり,コンクリート工場では箱状・ブロック状のものを造ることが多い.一方,筒状の製品はヒューム管と呼ばれ,これをつくる工場もヒューム管工場と呼ばれることが多い.もちろん,両種の製品を作る工場も多い.
まず,箱状・ブロック状の製品を作る工場を訪ねてみた.
地質調査所から北へ車で約1時間,下館市の郊外にある富山コンクリート工業(株)を訪ねた.この工場では,箱状・ブロック状の種々な製品がつくられている.
コンクリート製品をつくる工程には,コンクリートを造る工程,鉄筋を組む工程,型枠と鉄筋を組みたてる型枠組立工程,コンクリートを流し込んで形を作る成形工程,コンクリートを早く固める養生工程,型枠を外す脱型工程,製品の検査・加工工程などがある.
工程表
さっそく工程順に見てみよう.
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骨材ビン
工場の中でひときわ高くそびえ立っているのがこのプラント.
主な材料である「骨材」を貯めておく「骨材ビン」と骨材やセメントを混ぜてコンクリートにする「混合塔」からなり,両者の間にベルトコンベアが渡されている.
貯蔵されている粗骨材(径25〜5mmの砂利または砕石)と細骨材(径5mmまでの砂,または砕砂 *2)とセメント・水,そしてコンクリートの流動性・収縮量・固化時間・強度などを調整するための各種の混和剤を混合して,コンクリートとして成形工程へこれを供給している.
*2:砕石用の岩石を細かく砕いて造った人工の砂
コンクリート製品の中に鉄筋の網や篭を入れる.従来は人手で鉄筋を切断して曲げ,鉄筋の交わる所を結線したり,溶接したりしていたが,今は自動化がすすみ,人手が必要なのは要所のみとなったという.
この工場では見学できなかったので,別の項で改めて紹介しよう.
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コンクリートの混合塔
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型枠への剥離剤の噴霧
型枠を組み立て,内側にはコンクリートと型枠がくっついてしまわないように剥離剤が噴霧される.
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型枠内に鉄筋をセット
次に型枠の中に鉄筋篭をセットすると成形の準備が完了である.
型枠の中にベルトコンベアでコンクリートが流し込まれ,成形される.
コンクリートがきれいに型枠におさまっているが,これには秘密がある.実はこの型枠全体が振動する台の上に載せられているのである.このために,型枠の隅から隅までコンクリートが行き渡り,上面も平らになるのである.
このような成型法は「振動法」と呼ばれ,ブロック・板・箱状のコンクリート製品の製造で最もよく使われる方法である.
成形されたコンクリートから4つのU字形の鉄筋が飛び出しているのに注意して欲しい.この小さなアイデアが後々役に立つのである.
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生コンを流し込んで成形
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蒸気養生を行う
コンクリートを固めて強度の大きな製品とするためのプロセスを養生という.成形された製品をそのまま放置すると,枠から外すことができる強度に達するまでに約1週間が必要だ.しかし,65度ほどの温度で蒸気を送り込んだ部屋に入れておくと,8時間程でこの強度になる.これを蒸気養生といい,型枠の使用効率を上げるために,ごく一般的に行われている.
この工場でも成形場の脇にビニールシートで区切られた蒸気養生室が設けられ,成形された製品は型枠ごとこの中に入れられて,蒸気養生が行われる.
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汚れを除去
養生により固化したコンクリート製品は型枠がはずされて,製品としての姿を現す.
まず,型枠についた余分なコンクリート片を圧搾空気で吹き飛ばして清掃する.
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型枠を外す
次ぎに型枠を外すと,製品が姿を現す.
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工場内で養生する.
そして製品から飛び出したU字型の鉄筋をクレーンで引っかけてつまみ上げ,脇の仮置き場へ積んで,さらに養生を行う.
製品から飛び出したU字型の鉄筋は,出荷時にトラックに積み込むときも,工事現場に下ろすときも,そして施工するときも,便利に使われ,能率アップに貢献しているのである.
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振動台上で型枠に生コンを流し込み...
板状製品の代表といえば「側溝の蓋」,その製造過程を見てみよう.
型枠は側溝1枚毎に1つだが,これが15個連結されて,長さ2.5m程の型枠がつくられている.この型枠を振動台上にセットし,振動させながら生コンを流し込んでいく.
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さらにバイブレーターで型枠の隅まで生コンを行き渡らせる.
その後さらにバイブレーターで振動させて成形終了.
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梱包された製品
養生された後で,梱包されて,出荷を待つ.
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用水路の側壁と大型U字溝
脱型後,2週間ほど製品置き場で養生すると製品の強度が実用強度となり,ようやく出荷となる.工場のストック・ヤードには,さまざまな製品が見られる.
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擁壁用のL型と道路用縁石
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深型U字溝と、石積みを模した小河川用側壁
U字溝や道路用縁石などよく目にするものが多いが,変わったものもある.例えば,小河川用側壁,自然志向の高まりから石積みを模した表面のものの需要が伸びている(←写真右).中央下部矢印の先に穴があいているが,この穴の裏には小さな部屋がつくられている.小魚の住みかだという.田圃中の小川の小魚にもマンションが用意される時代となったようだ.
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地下貯水タンク用ブロック
また,兵庫県南部地震以後,急に需要が増えたのが地下貯水タンク用ブロックだという.このブロック,簡単に設置でき,地震に強く,つなぎ合わせて大きさを変えられるなどの特徴があり,災害時には強い身方になりそうである.
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Sudo Sadahisa and Arita Masafumi(2001): Concrete factory and it's products.

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