仕事関数

定義:
仕事関数(work function)とは、固体内にある電子を、固体の外、正確には真空中に取り出すために必要な最小限のエネルギーの大きさのことである。 電子は固体中で多数あり、下図にあるように、veffの底にある最低運動エネルギーのものから、順次高いエネルギーのものまで、容器に水が入っているように詰まっている。 水面に当たるのが、フェルミレベルである。このフェルミレベルから真空準位までの高さが仕事関数である。

説明:
電子は固体中で座りの良い座席、すなわち一つ一つのレベルへ入って行く。座席はだんだん高い位置になる。電子の数は、原子の数で決まっている。 もしも、表面に電子が固体外へ出て行くのを妨げるものがなければ、- 実は仮想的には初めは妨げるものはなかったのであるが - 電子の中には、拡散して固体から出て行こうとするものもでてくる。 そうすると、相対的に、内部はプラスになる。これにより、表面付近は、電子がしみ出したマイナスと、そのすぐ直下はプラスになって、プラスマイナスの電気的2重層が形成する。 こうなると、この2重層の壁のせいで、もはや、これ以上、電子は外へしみ出せなくなる。 この壁が表面ダイポールである。 実際には電子がどこまで詰まっているかは、固体内の電子の個数で決まってくるから、壁の大きさである仕事関数は、表面ダイポールの大きさから、電子の個数により、すなわちフェルミ準位の位置により、ずれて変わってくる。 下図の例では、真空準位から表面ダイポールの大きさ分下がったところからさらに下がったところにフェルミ準位が来ている。

仕事関数を別の言い方で表現すると、次のようになる。 固体内の電子は、真空準位をスタートレベルとして、表面ダイポール分だけまず下がっており、そこからさらに電子が集団でいることでの安定化エネルギー、すなわち相関交換エネルギー分だけさらに下がる。 この位置が底で、ここから電子数に応じて上へ詰まって行く。最上部のフェルミ準位まで詰まっている。 であるから、最初の真空準位とフェルミ準位の差が、最上部の電子が外へ出るのに必要な最低エネルギーということになり、仕事関数に対応する。

仕事関数を計算で予測する方法は、まず、交換相関エネルギーと運動エネルギーを求め、内部仕事関数を算出する。そして、表面ダイポールを計算してやれば、その両者から仕事関数が求まる。 ただし、特に表面ダイポールについては、表面の原子配列の僅かな変位に強く影響されるので、実際の表面では、原子配列が正確にわからない場合がほとんどである。このことから仕事関数を正確に計算で求めるのは、事実上不可能である。これは、計算が無意味だということでなく、 計算結果と実験結果をつきあわせることで、より表面の電子状態の理解が深まることになる。さらに注意が必要なのは、実験値が不変ではないということで、僅かな吸着原子によっても、仕事関数は大幅に変化するので、実際の表面状態はかなり複雑ということになる。

表面でも電子状態はこのような複雑さを呈するので、埋もれた界面の電子状態はなおさら理解しにくい。

補足:
表面ダイポール分下がった位置φ(-∞)とフェルミ準位の位置との差は、表面によらない固体内の性質を表す2つの物理量、相関交換エネルギーVexと運動エネルギーとの差であり、その差も固体内の性質になるので、内部仕事関数という。

平成15年9月5日


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