ナノテクノロジーによる生産技術革新
〜 ナノテクノロジーを活用し、ローコストでオンデマンドなミニマル生産を実現する
H17年度、(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの受託により、
「ナノテクノロジーによる生産技術革新に関する調査研究」を行いました。
本調査研究は、様々な産業分野の製造工程の中でも、セル生産など組立工程と比較して、
生産技術革新の進んでいないナノスケールレベルでの製造工程における生産性向上の障害となるボトルネックを調査、抽出することで、
今後のナノテクノロジーによる生産技術革新の有り方を試験的に描き出すことを目的としました。
具体的には、(1)ナノテクノロジー分野及び様々な産業分野の有識者による専門会議(ナノテクノロジー生産技術革新検討会議)を開催し、
(2)製造工程やボトルネック、マーケットなどの調査を行うと共に、ボトルネックや生産技術革新の可能性を議論しました。
さらに、(3)上記調査と専門会議の議論を踏まえつつ、ボトルネックを極小化した理想的生産技術とその生産性について探索的検討を行いました。
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抽出された主要課題
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主要製造業のマーケットは、飽和傾向を示している。
また、変量多品種ないし少量多品種が支配的になっている。
それにもかかわらず、製造システムは単品大量生産型である。
特にインテグレーション工程(半導体集積回路、液晶パネル製造等)では、強い単品大量生産型から変わっていない。
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品質を落とさないコストダウンテクノロジーとそのための戦略が存在していない。
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高付加価値・高機能指向の日本の大きな国内マーケットが、日本の製造業の国際競争力を削いでいる。
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ナノテクノロジーはこれまでの所、自己完結型のInnovation for Nanotechnologyであって、生産技術革新につながっていなかった。
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インテグレーション工程では、人の生産性への寄与が低く、トヨタ生産方式的なムリ・ムダ・ムラの徹底排除が進んでいない。
また、生産物が小さい割に、環境負荷やエネルギー消費率が巨大であり、生産効率/設備投資という本質的な点で実は生産的でない。
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日本の得意とする、高品質製造が危うくなっている。
生産設備投資の巨大化と、研究開発費の先細り、激しい時間軸でのマーケット変化、そして、匠の技の伝承に陰りが見られることが原因である。
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課題解決のための指針
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変量多品種向け技術開発や生産システム開発は、単品大量生産ビジネスに応用すべきでなく、変量多品種に向いたビジネスに利用されることで、
真のオンデマンド生産と低コスト生産が可能になり、企業利益をもたらす。
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品質とコストダウンを両立するテクノロジーを開発推進すべきである。
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インテグレーション工程に於いては、原子スケールレベルやナノ・ミクロンレベルでの生産性の革新がすすんでおらず、
十分に生産性の革新の余地がある。
ナノテクノロジーの活用で産業活性化に活路が拓ける可能性がある。
ナノテクノロジーを、Nanotechnology for Innovationと新たに位置づけることが重要である。
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変量多品種生産の具体的技術やシステムとして、インクジェット技術、マイクロリアクター、局所クリーン化生産システム(環境分離型生産システム)、
Self-Assemble MEMS(またはSelf-Functional MEMS)が例示された。
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持続発展可能な社会を構築し、かつ国際競争力を確保するための方策として、
ミニマル・マニュファクチャリングコンセプトが有効であり、その具体的実現には、変量多品種生産システムの普及が有効である。
平成18年7月5日
ナノテクノロジー生産技術革新プロジェクト 研究推進主任 原 史朗
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Last updated: Dec. 13, 2006. |
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