クリーン化技術(1985〜2000年頃)


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Page40 層流CRでの強制的な発塵除去

■クリーンルーム(Clean Room: CR)内の製造品不良の代表的原因は、浮遊粒子(airborne particle)である。

■このパーティクルの主たる発生源は、人である。

■人から発生したパーティクルは、性能の良い層流CR(天井から(全面網格子によって出来た)床へ向かう清浄度の高い層流を作り出しているCR)では、その層流により、室外へ排出される。

■人から発生したパーティクルは、実際には層流により、だんだん床へ押しやられるので、図のような発塵オーラを描いている。

■製造中の製品を持った労働者が、前を行く人のパーティクルオーラにかかってしまうような歩行をすると、 パーティクルオーラによりその製品は汚染され、歩留まりの低下を招くことになる。 従って、そのようなことのないよう、層流の秒速に応じた人と人との間合いを常にとった製品運搬が必須となる。

★このように、時にクリティカルにそしてたいていの場合ボディーブローのように累積的に製品歩留まりに影響するパーティクル汚染は、 製品解放系層流CRにおいては、労働者の質と教育に依存していることに注意すべきである。


Page43 問題となる汚染物質(1) Na

■集積回路製造上の歩留まりに影響するパーティクル汚染は、施工時層流CRの導入とCR運営時の汚染回避のためのケア等によって防ぐことができるが、それと並んで重要なものとして、 より小さな粒子による汚染、すなわち金属汚染や有機物汚染、ガス分子汚染が挙げられる。

■集積回路の特性に影響を与える代表的な汚染物質について、古典的なものと最近問題となっているものを挙げる。

■まず、古典的に最も有名なものは、人の汗など塩分が起源のナトリウム(Na)汚染である。

■Naは、右図にあるように、MOSトランジスタの酸化膜中に入り込むと、トランジスタ出力電流のゲートによる制御を不能なものにしてしまうので、 製造工程中のウェーハ表面への付着は絶対に避けなくてはならない。

■右図にあるNaのデバイス特性との直接的因果関係が明らかとなってから、半導体ウェーハを直接手で触れないような習慣が常識として広まっていった。


Page44 問題となる汚染物質(2) B, P

■ボロンやリンのデバイス内濃度が正確にコントロール出来ていない場合は、 デバイス単体では汚染による影響をとらえることが出来ない、集積回路を作成した場合のみ統計的に発現するややこしい問題を引き起こす。

■図は、ボロンのメモリでの問題を科学的に立証した最初の論文である。 図中の左図横軸は、集積化メモリの保持時間(1が0かの記憶を保持できている時間)で、縦軸はその保持時間をもっているメモリセルのメモリ全体の中での確率である。

■確率が1に近いプロット、すなわちほとんどの数のメモリセルは保持時間が1秒程度の性能を有するが、 非常に僅かの数のセル、たとえば1000個に一個(縦軸が1E-4)とかのセルでは、保持時間が0.1秒程度になってしまう。 さらに僅かの10の6〜7乗個に1個くらいのセルは、保持時間が0.01秒程度になっている。 さらに、この数は僅かであるが、保持時間の長いセルはメジャーセルとは違ったTail distributionとラベリングされた違った特性を持っている。

■図で明らかなことは、CMOSデバイスのpウェルのボロン濃度を変えた場合、その保持時間への影響は、Tail distributionにしか現れないことである。 すなわち、ボロンの不用意な拡散は、メジャーなメモリセルには影響しないが、僅かな数のメモリセルには甚大な影響をもたらし、 それによりチップ性能を規定してしまうことになる。 商品としては、その最低の性能のセルに合わせた性能のメモリチップとしてしか販売できないことが重用である。

■右図のリーク電流の特性でも同じ現象が見られる。



Page45 問題となる汚染物質(3) アンモニア

■アンモニアは、人体も汚染源の一つとなるものであるが、最近になるまで全く問題となっていなかった、新しい問題である。

■微細加工が進むにつれ、露光技術も発展しているが、露光暴露量自体は次第に弱まっている。 そこで、フォトレジストの感度をあげてやる必要が増している。 化学増幅型レジストはそのようなレジストの感度を上げる手法として考案されたものである。 化学増幅型レジストの最初の報告は、IBMのHiroshi Itoにより、1982年に出版されているので、比較的古いが、 その必要性が出てきたのは、それが実際のリソグラフィプロセスに使用され始めた近年のことである。

■化学増幅型レジストでは、図にあるように、アミンやアンモニアが雰囲気に存在すると、感度増幅のために露光中に発生したプロトンを中和してしまい、 エッチング不良を引き起こしてしまう。

■従って、露光雰囲気ではアンモニア濃度は極力低減されなければならない。 なお、このようにアンモニアの問題対象は化学増幅型レジスト工程に限られるので、この工程のみに限定された問題でもある。


Page46 問題となる汚染物質(4) 有機物DOP

■有機物汚染の問題は、集積回路だけでなく、単体のトランジスタにおいても、古くから存在した。 なぜなら、有機物はあらゆるところにあり、あらゆる形で、ウェーハ表面を汚染し簡単に数原子層程度の厚さで表面を覆ってしまうからであった。 デバイスのあらゆる界面に原子層以上の有機物があれば、正常動作しないのは自明である。 そこで、昔から、製造工程の随所に洗浄工程を挟み、パーティクル除去と並んで、有機物除去を行うことが必須となってきた。 CRでの清浄雰囲気においては、最も最初の工程で、有機物を徹底的に除去しておけば、のちの工程では、オーソドックスなRCA洗浄によって、多少の有機物は除去できる。

■そのような訳であるから、図に列挙したように原則有機物はきちんとした洗浄工程を含む製造プロセスでは問題とならない。 問題は、装置内ウェーハ転送・ウェーハ一時保存等のハプニング的汚染によって問題となりうる場合が有ることである。

■また、数原子層という量は他の汚染物質の制御レベルより何桁も甘いモノであり、有機物は最後に残された、out of controlな今後制御に取り組むべき対象であるということができる。


Page58 まとめ

■本図にあるように、洗浄の歴史を見てみると、真空管洗浄の技法をまねた、CP-4(chemical polishinig No.4)またはその亜種のCP-4Aの洗浄の基本メカニズムを発達させ、 酸化とエッチング工程を分離したRCA洗浄が、LSIの出現とともに広く利用されるようになったことがわかる。 その後、RCA洗浄を改良しようとする試みは、表面分析ツールの発達とLSI微細加工技術発展からの要請により、近年盛んになっているが、 現状では、RCA洗浄が未だに基本となっている。


Page55 金属/半導体界面の科学と技術の変遷

■LSIプロセスにおいては、製品の不良率は利益に直結しているので、それを回避するために多大な努力がなされてきた。 しかし、製造プロセスの複雑さとともに、高度でディーテールにまで行き届いた発達したクリーン化技術は、製造コストを押し上げてしまった。 その結果、最新鋭工場ラインに1千億円を超える投資が必要になり、LSIの開発期間もどんどん長くなった。これは製造コスト高を意味する。 また、プロセスはあまりに複雑になり、一部だけプロセス変更することは、多大なリスクを負うようになり、結果として、大変保守的で 融通性のないプロセス技術へと発展し、それ自体が新しい技術を取り入れることを拒否するような行き詰まりを見せるようになった。

■本問題の解決策として、現在、小さな工場や飛躍的短時間工程で集約された装置による製造工程(ミニファブ、ミニラインなどと呼ばれる)を目指した技術革新が進行中であり、 また、歩留まりの向上と工場の建設・運営コスト削減に大きな効果のあるミニエンバイロンメント技術が導入されつつある。

平成16年4月12日初稿

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Last updated: Apr. 12, 2004. Shiro HARA's Web Site