■ 局所クリーン化がミニブレーク状態に

このところ、筆者への局所クリーン化に関する問い合わせが増えてきた。 それも300mmウェーハの半導体最新鋭工場関係以外に関する問い合わせが多い。 実際、局所クリーン化技術導入に相当のメリットがあるという認識が広がり始めている。 このコラムでは、その辺の現状をまとめておく。

300mmウェーハの半導体チップ工場の現状
まず、300mmのシリコンウェーハを使う最新鋭工場においては、局所クリーン化はすでに規定路線になっており、国内全工場はもとより全世界の工場で、局所クリーン化技術が実際に導入されている。 具体的には、ミニエンバイロンメントシステムの要素技術である、密閉型容器(FOUP)、ミニエンバイロンメント室、ウェーハ転送ロボット、各室扉開閉機構などが商品化されたり実用品が開発されたりしている他、それらの自動制御が可能になっている。 これにより、工場全体(ボールルーム)のクリーン化を推し進めることなしに、歩留まり向上を達成したし、また、現時点においても省エネルギー化を図ることが出来るようになった。 さらに、ミニエン導入により、容器が標準化されたおかげで、工場内のロボット化・自動化が急速に進んだ。半導体工場は世間的には自動化が進んでいるように誤解されてきたが、実際局所クリーン化導入で初めて本格的自動化が可能になったのである。 もう一つ重要なことは、局所クリーン化は、ボールルーム方式(大部屋方式)と二律背反的なものではなく、融合が可能な柔軟な特徴を有していることである。これにより、初期導入リスクが大幅に低減された。 実際、300mmの工場では、ボールルームの中にミニエンシステムを導入している。今後、ミニエンシステムへの信頼が高まるにつれ、ボールルームの性能を落としてゆくことになろう。

300mmウェーハ以外のデバイス生産
デバイスメーカでは、300mmウェーハ以外に200mmや150mm等の既存工場を有している。200mmラインでは、もう一つのシステムであるSMIFシステムが追加で導入可能である。 FOUPやSMIFの導入が生産技術面で大変メリットがあることをすでに検証しているこれらデバイスメーカでは、局所クリーン化は300mm工場の1技術という捉え方を越え、局所クリーン化を新しい生産技術として検討し始めていところも現れている。 さらに、いわゆるシリコンの集積化チップだけでなく、他の事業部においても、局所クリーン化のメリットを目の当たりにして、興味を示すところが出てきている。

部品メーカ
日本では総合電機メーカが多いこともあり、部品生産事業部門も、局所クリーン化メリットを横目で見ている実態がある。 これらの部品事業では、局所クリーン化導入の検討を行っているところも出てきている。

液晶ディスプレイ生産
液晶ディスプレイは、現在1枚のガラス板のサイズが世代を更新するごとに肥大化している。 しかし、1メートルを遥に超えるサイズのガラス板の生産性が本当に高いかどうかは、生産全体の効率から言って疑念の余地がある。 一方で、パーティクルの存在は、ドット抜けにも直結する意外に重要な課題であり、液晶ディスプレイ生産工程の局所クリーン化対策は、真剣に検討すべき課題である。 現在でも人で扱うことの出来ないサイズであり、半機械化がすでにできあがっている。従って、可能な工程から部分的に局所クリーン化してゆくことは、実は可能な課題である。 過去のLSIチップ製造技術の汎用化の反省もあり、製造技術がオープンになっていない部分が大きいので、スタンダード化出来る部分と、自社独自技術としての局所クリーン化推進する部分との併用が望ましい。 しかし、現状では、残念ながら、パーティクル対策を対症療法で対応する段階に留まっている。潜在ニーズがありながら、局所クリーン化が進んでいない代表的業種と言えるだろう。 すでに工場投資額もLSI先端工場と比肩するレベルに達した。 液晶においてもムーアの法則の考え方が原理的に成り立ってきたが、その限界もLSIと同じように、設備投資・研究開発投資額の飽和で、規定されてしまう可能性が高くなっている。 そうなるとコストダウンである。 今後は、局所クリーン化を戦略的に導入することは検討されて良い。

今後
このようにデバイス生産だけでなく、部品生産においても、そのメリットを体験した企業は、局所クリーン化の導入を検討し始めている。 今後、中期的には、デバイス関連企業からそれ以外の広いフィールドの製造業へ認知が広がってゆく可能性がある。 長期的でなく中期的と言える理由は、(1)局所クリーン化がコストダウンに直結する、(2)既存製造環境と親和性が高いという、その長所があり、また、(3)300mm工場でメリットが実証されたからである。 もう少し正確に表現すると、300mmウェーハ工場のような、高度に発達した産業においては、容器の規格化、全ての装置の一斉導入が不可欠となる。 このような場合には、業界として規格化・スタンダード化が最初の仕事になる。しかし、よりシンプルな製造分野においては、それほどの努力は必要ない。 端的に言えば、局所化と同時に自動化を進めるには、高精度な容器・搬送系が要求され、また標準化も厳密になる。 シリコンチップ以外の製造分野では、自動化が可能なシステムを想定しながらも、実際には自動化は次のステップとすることで、局所クリーン化導入の開発・生産コストを大幅に下げることができるだろう。 さらに黎明期の産業においては、導入は極めて簡単である。そのような、産業規模と成熟度に応じてフレキシブルに導入が可能なのが、局所クリーン化技術である。 究極の例として、研究開発のレベルにおいては、筆者が一人で製作・構築したハイパーミニプロセスシステムのように、個人レベルでも、性能的に最新鋭工場を上回るシステムが現に構築可能である。

アルファベット3文字で表現されることが多い、技術マネージメントや生産技術のマネージメントのテクニックだけでなく、 今後は、生産技術そのものの実態として、局所クリーン化は、基盤技術として成長し、また、真っ先に導入することで差別化技術としても注目されるようになって行くだろう。 さらに、局所クリーン化を単なるクリーン化の新要素技術として捉えるのでなく、 製造技術の革新、そして企業戦略の中核として先進的に位置づけることが出来る企業は、 大変強い競争力を持つメーカーとして変貌を遂げることになる。 少なくとも今世紀前半の世界をリードする象徴的企業となってゆくことになるだろう。

Click 関連解説: 局所クリーン化技術:21世紀の戦略的環境分離技術 (プロ・経営向け解説)

平成16年9月1日初稿、9月10日一部加筆, 9月21日リンク追加

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Last updated: Sep.1, 2004. Shiro HARA's Web Site