■ ブリルゾン教授とのショットキー障壁についてのディスカッション

先日、オハイオ州立大学のレナード ブリルゾン(Leonard J. Brillson)教授が、当研究所に来訪されたので、筆者(原)は、ショットキー障壁に関して、ディスカッションを行う機会を得た。 ブリルゾン教授は、ショットキー障壁の実験的及びその物理学的理解に関して、世界的に屈指の業績を残している実験物理学者である。 Xerox在籍中の1990年には、金属/GaAs界面の界面準位密度を、界面を精密に制御性良く形成することで、大幅に低減することが出来る可能性を示した研究成果を挙げている [S. Chang et al, Phys. Rev. Lett. 64, 2551 (1990)]。 最近では、GaNやSiC系などのワイドバンドギャップ系半導体でのショットキー問題に取り組んでいる。

教授とのディスカッションでは、双方の実験的アウトプットをベースに多岐にわたる議論を行い、ショットキー問題の根幹に関わる物理的論点に関して、かなりの意見の一致を見た。 以下に要点をまとめる。

補足解説
ショットキーの歴史を紐解くと、1960年代以降、特に1980年代以降からは、MIGSを信奉する一部理論家と実験研究者との間で、激しい論争が行われてきた。 MIGS理論は、金属が半導体に接触するだけで、半導体中に、その影響によるバンド内準位、つまり界面準位が発生するとするモデルである。 従って、MIGS理論によるならば、あらゆる半導体では、半導体材料によって程度の差こそあれ、MIGSによって、多量の界面準位が発生し、そこにチャージがはいりこむので、 界面のフェルミ準位は、概ねバンドギャップの中程に固定(ピニング)されるということになってしまう。 ところが、実際の界面では、ショットキー障壁高さは、様々な形成要因で変化するので、MIGS理論だけで問題解決できているわけではない。 世間の半導体電子デバイスに携わる研究・開発者は、ショットキー障壁は理論的には固定されると言われながら、 実際には、かなり不安定で大きく変わり易く、安定したデバイス電極を形成することがどの界面でも難題であるので、この問題に苦しみ続けてきた。 また、ほとんどの研究・開発者は、ショットキー問題に精通していないことから、 電極特性に重大な困難が内包しているのを知らずに研究開発を行っており、所望のデバイス・材料機能を出せずに苦労している。 そのような背景を踏まえ、実験物理学者は、何がショットキー障壁高さを変えるのか、その要因をえぐり出そうと、長年実験的努力を重ねてきた。 1984年にNiSi2/Si界面での双晶で障壁高さが大幅に変化することを、ブルックリンカレッジのR. T. Tung 教授(当時AT&T)が示した後、 ブリルゾン教授が、GaAsの界面準位の大幅な制御性を示唆していた。 そして、最近の筆者らの界面準位の完全制御の実験的検証を経て、すでに一部GaAsでは実用に供されてはいるが、 ショットキー障壁は一般論として人工的に制御可能なデバイス機能として本来利用可能なものであることが明らかとなったと言って良い。 MIGSモデルの定量性の検討も迫られている。(Jun. 29, '04)




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Last updated: Jun.29, 2004. Shiro HARA's Web Site