チャージエンジニアリング

チャージエンジニアリングとは、電荷(チャージ)を積極的に制御することで、 固体の機能を有効に活用して、新機能デバイスを創造したり、従来型電子デバイスの諸問題を克服してゆくためのテクノロジーである。

J. J. Thomsonの電子の発見によって、電子を操る電子工学(エレクトロニクス)分野が拓けてからすでに100年以上を経過した。この間、電子を如何に流し如何に流れを止めるか、という制御方法は、主に電圧を制御(フィールドコントロール)するという手法によって行われてきた。 デバイス内に不要なチャージがあってもそれはマイナーな効果であり、もし問題となるようであれば、製造工程のクリーン化で問題解決してきた。 ところが、微細化がナノスケールにまで及んで来た現在では、そのような意図しない微量チャージが、大きく物理特性・デバイス特性に影響を及ぼすようになってきている。

意図するかしないかに関係なく、電荷がそこに存在すれば、それをそこに存在させるための電子準位があることになる。クリーン化とイオン注入技術で問題解決されていたこれまでの技術では、電子準位まで考える必要はなかったが、今後は、このような電子状態をきちんと制御するような構造設計・製造プロセスが求められるようになる。 これにはもちろん固体物理の法則に基づいたデザインが不可欠である。微細化の進んだデバイスや初めから微細なサイズでの機能発現を狙うナノテクノロジーの具体的構造においては、構築された構造の体積が大変小さいので、表面・界面の物理現象が相対的に重要度を増し、表面・界面にたまるチャージとその原因となる電子準位は、デバイス性能を決定することになる。 それを逆手にとれば、微視的構造においては、微量チャージの制御は機能発現に直結するので、積極的に制御を行うことで、望みの機能を実現できる。 物理現象は発見・解析の時代を経て、使う時代に入っているが、今後はチャージエンジニアリングという具体的目的意識を通して、実践的に利用可能になって行く。

より物理的に鮮明なイメージを表現すると、次のようになる。従来、完成した(デバイス)構造でのポテンシャル制御は、外部電場によって行ってきた。 (デバイス)構造自体のデフォルトポテンシャルは、ドーピングよって行われてきた。 実は以前からそれで制御しきれない沢山の物理現象、たとえば、ショットキー障壁高さや、ヘテロ界面のバンドラインナップの非制御性などは、理論からはずれる外因と見なされていた。 今後は、ポテンシャル制御を、電子状態のエネルギー分布を精密に制御することで行ってゆく。 特に、微視的なスケールでの研究開発が多くなることから、表面・界面の電子状態の制御を、 収容チャージの制御の観点から行ってゆくことで、物理の目的意識が拓ける。

チャージエンジニアリングを行うには、半導体で培われた、原子層制御、ナノテクノロジー、クリーン化技術というツールテクノロジーと、 チャージデザインのための固体物理学の最新知識が必要である。 特に、現実への応用を行って行くためには、意図しない電子状態を排除するために、クリーン化技術を駆使する必要がある。

チャージエンジニアリングは、今後の超微細加工デバイス、具体的には集積回路の主流であるMOS型電界効果トランジスタだけでなく、ヘテロ構造デバイスやショットキー型デバイスにも本質的に有効である。 さらに、ナノテクノロジーの機能発現には不可欠となる。 有機半導体など、電気が流れるプラスチックの応用分野においても、キーテクノロジーとなるだろう。

チャージエンジニアリングの実践例:

Click MOS・MES界面のインターフェースチューニング

Click 界面準位制御による界面電荷のコントロール: 邦文解説[PDF] (1.2MB), 英文論文1 [PDF] (249kB), 英文論文2 [PDF] (1MB)


Click ショットキー障壁問題を主題とした界面準位・界面電荷制御の総合解説

平成16年8月11日


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Last updated: Aug. 11, 2004. Shiro HARA's Web Site