2010年7月15日に発生した可児市土田の集中豪雨災害の現地報告 (2010.8.16)

                    

 2010年7月15日に発生した岐阜県南部集中豪雨では,可児市土田で可児川が氾濫しました.この部分は鬼が島と呼ばれる地点で,可児川の流路が2つに別れ,名鉄の鉄橋の手前で合流します(下図).

地質図を見ると可児川本流は.低位段丘上を東方から蛇行しながら延々と流れてきます.段丘堆積物は薄く,しばしば河床には中新世の瑞浪層群(M2)が露出します.氾濫の起きた鬼が島より下流は,瑞浪層群蜂屋層(M1)の安山岩角礫岩が露出し,さらに下流には硬いジュラ紀付加体の岩石(チャート,Mc)があります.さらにここから下流の木曽川の河床までの標高差(20m以上)があるために,可児川は上流側に比べて河川勾配が急で,狭く切れ込んだ谷になります(刎橋付近の写真参照).

地質図を見ると,中央部で可児川と木曽川の流路は接近するものの,木曽川泥流堆積物(K)の台地があって木曽川に合流できません.可児川は広い集水域で降った雨が,鬼が島から西の部分の地質的に川幅が狭く切れ込んだ谷になる部分に集中する特徴があります.このため豪雨の水量を流しきれなかったと推定されます.そして,右岸(北)側が左岸(南)側より平坦面が少し低いことから,北側に氾濫したと推定されます.

一見,このような災害は,地形と降水が原因に思われますが,地形の奥にはこのように地質が要因となっていることが多く,自然災害の理解や対策には地質の検討が重要です.

 

地質情報研究部門シームレス地質情報研究グルーブ 斎藤 眞

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写真の番号と地図上の番号は同じ

 

1.鬼が島上流の橋から見た可児川本流.鬼が島の南側を流れる.この付近から河床は中新世の瑞浪層群蜂屋層の角礫岩.

2.鬼が島上流の橋から見た可児川の分流.流れが弱く浸食が進まず,河床は高い.

3.鬼が島上流の橋のさらに上流側.平坦で川幅は広い.河床には瑞浪層群の砂岩がしばしば露出する.

4.氾濫した部分(分流の合流点付近)を南からみたところ.北側の平坦地の方が手前の南側より1-2m低い.

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5.鬼が島に露出する中新世の瑞浪層群蜂屋層の角礫岩.

6.名鉄の鉄橋の西側の可児川,堰がある.角礫岩が続く.

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刎(はね)橋付近の可児川の様子(位置は地質図参照).ジュラ紀付加体のチャート(三畳紀〜ジュラ紀)からなり,川幅は狭く,切れ込んでいる.川岸の樹木はなぎ倒されている.あふれる寸前まで増水した.

 

(地質図) 山田直利・脇田浩二・広島俊男・駒澤正夫(1990) 20万分の1地質図幅「飯田 (第2版) 」

 

写真は2010年8月12-13日に撮影しました.