MCMC 法を用いた最適化法ではお互いに両立しがたい二つの要請がある. 一つは,最適化問題を効率的に解くために,できるだけ広い空間をむらなく 探索したいということである. そのためには提案分布はできるだけ 上を広く飛び回るものである必要がある(Exploration).
一方で,MCMC 法では採択と棄却というステップが入るため,候補が採択されなければ 意味がない. 採択されやすい候補というのは単純に言えば現時点の よりも確率値ができるだけ高いもの(つまり の値が小さいもの)である. これは に何も仮定を入れなければどうしようもないが,たとえば に弱い連続性のようなものを仮定すると,今まで の値が 小さかったところの周りはやはり値が小さいと思われるので,その周りに 集中して候補を出すようにすれば,高い確率で採択されるかもしれない (Exploitation). しかし,それでは最初のできるだけ飛び回って欲しいという要請には 矛盾してしまう.