ショウジョウバエ実験の便利帳 - 花井@産総研

■ショウジョウバエ小道具
●ナイス蚊っち
●ショウジョウバエ掃除機
●倒しても溢れにくいハエ捨て瓶
●吸虫管のフィルター
●バイアルに使い易い筆記具
●バイアルに使い易い筆記具
■ショウジョウバエ・分子生物学実験プロトコール→「便利帳(分子生物学)」へ移動しました。
●ショウジョウバエ一匹からの直接PCR、DNA抽出
●PCRダイレクトシークエンス
○cDNA・遺伝子配列のダウンロードとパソコン上での操作
■ショウジョウバエ実験
●オスメスの区別とバージン取り
●よく使うバランサー・マーカー写真集
●ショウジョウバエの麻酔方法
●ショウジョウバエの飼い方

■ショウジョウバエ小道具

●ナイス蚊っち

ラケット型電撃殺虫装置です。いくつか試しましたが、「シングルネット」 がお薦めです。
多層式は壊れやすかったです。同じような商品に「電撃ラケット」という物もありますが、試していません。
ネットの間隔は4mmでショウジョウバエは素通りしそうに見えますが、静電気的に吸い寄せらるのか素通りできません。
撃墜したハエの多くは羽が一方か両方無くなっていました。即死はしませんが、すぐ死んでしまう様です。
試しに手で触ったら、結構痛かったです。赤い点が二つ出来て、翌日まで残っていました。
ショウジョウバエ実験室だけでなく、害虫が出ても殺虫剤をまけない近くの実験室にも置いています。
叩きたくなる形状ですが、叩かずにそっと被せるようにして使います。

●ショウジョウバエ掃除機

ステージ上の不要なハエ、皆さんどうしてますか? 漏斗を乗せた「ハエ捨て瓶」に捨てようとしてこぼしていませんか?。ハエをまき散らかしたり、麻酔台上のハエを吸虫管で吸って瓶に捨てていませんか?
そこで、ハエ掃除機の登場です。動力はハンディー掃除機(充電でなく有線電源に限る)で、フットスイッチにつなぎます。
概念図
ハエ掃除機

トラップ。圧力が掛からないので空き瓶で可。蓋に穴を開け、3mlスポイトを二つに切って刺す。右のOutにはメッシュを張る。100%イソプロパノール(IPA)を入れる(逆性洗剤だとカビやすく、エタ ノールは飛びやすい)。

フットスイッチ。踏むよりも膝で横に叩く方が使いやすい。ナショナル まごの手式フットスイッチ(フット式リモートスイッチ)WH2711

消音の為に掃除機は箱に入っている。吸引力が強すぎる場合は、配管に穴を開ける。シリコン管は耐圧でなくて可。
オーム電機 ハンドクリーナー SOJ350W。市販の有線電源式で最も小さいもの。かなりうるさい。大型掃除機を低回転で回した方が静かかもしれない。

●倒しても溢れにくいハエ捨て瓶

瓶にロウトを乗せただけのハエ捨て瓶は、倒すとこぼれるし、無麻酔のハエをバイアルから直接捨てるときにロウトと瓶の隙間からハエが逃げることがあります。瓶の代わりに三角フラスコにすれば倒れにくくなりますが、逃げるのは防げません。
そこで、ロウトと瓶の間にビニールを張ってみました。倒しても殆どこぼれませんし、隙間からハエが逃げることもありません。
難点は、バイアルの成虫を払うときに、ロウトに培地が落ちると掃除が大変です。液の交換も少々面倒です。
◇材料:試薬瓶(プラスチック蓋)。ロウト。小さめのポリ袋。結束バンド。
◇作り方:試薬瓶に写真のように穴を開ける。図のように切ったポリ袋をロウトに通し、結束バンド(無ければ輪ゴム)で固く縛る。ロウトとポリ袋を蓋の穴に通す。試薬瓶にIPA等を入れる。ポリ袋を挟みながら蓋をねじこむ。
ハエ捨て0 ハエ捨て1 ハエ捨て2 ハエ捨て3

●吸虫管のフィルター

吸虫管でハエを扱うのは不衛生では? と思うのは素人だ。といえばそれまでですが、やはりゴミを吸い込んでしまいます。
そこで、タバコ用フィルターの登場です。
元々口にくわえる為のものなので口当たりは良く、安価(100円/10個)なので頻繁に交換できます。使い終わったフィルターを見ると、蝿の糞やホコリがかなり溜まっています。短い簡易吸虫管なのでゴミを吸いやすいのでしょうか。

上:フィルター。
下:簡易吸虫管。ゴムひもで首に掛ける。
普通は太くて長いシリコンチューブを首に巻き付けるようにして使う。

タバコ用フィルター。 少々空気抵抗があるので、中身を1/2〜1/3に切りつめて使う。
最近、パッケージが変わった模様(2009.9.1)。

先端。チップを組み合わせたもの。特殊用途で細めを使用中。

適当に切った1 ml tipの間にメッシュを挟んだ。パラフィルムやテープで固定する。ハエの混入を防ぐためにメッシュがよく見える事が重要。

●バイアルに書き易い筆記具


バイアルに書き易い筆記具
バイアルやマイクロチューブにマジックでラベルすることが多いので、マジックペンの使いやすさに気を遣ったりします。
色々と試したのですが、この2つがお気に入りになりました。
三菱鉛筆 PIN-03A (PIN 油性極細03)
1.5 mlチューブのラベルに最適。スポンジにも書きやすい(再使用の方には申し訳ない)。それまで使っていたゼブラハイマッキー極細はすぐにダメになりますが、これはかなり長持ちします。手で強く擦ると文字がかすれます。
赤・青はダメでした。乾いたりペン先がほぐれたり。
ゼブラ おなまえマッキー細字 YYSS7-BK
色がこく、書きやすいです。手で擦っても消えにくい。スポンジにもそこそこ書けます。
両方とも油性ですが、アルコールで消せます(というか消えちゃいます)。

●バイアルに貼り易いラベル


バイアルに貼り付けやすいラベル
系統を中長期的に維持する場合、番号や系統名をテープなどにラベルして貼り付けます。
しかし、ビニールテープや紙テープではノリがべと付いたり、粘着力が落ちる、操作性が悪いなどの欠点があります。
そこで、ポストイットの登場です。紙製はダメでプラスチック製のポストイットが使いやすいです。張り直しは非常に簡単で、ベタ付きやノリ残りはほとんどあ りません。上端を折り曲げてふたの上に出しておくと見分けやすくなります。元々ラベル用なので筆記具を選びませんが、上述の細い油性ペンが良いでしょう
値段が高い(まがい物はダメなので、純正品)のと、面積が小さいのが難点です。
継代以外の実験でも、紛らわしい名前の系統を扱う時に系統を色分けして使うのにも便利です。カラーマジック(ゼブラのページへ)と併用しても良いでしょう。(2009.9.2)

■ショウジョウバエ実験・その他

●オスメスの区別とバージン取り

wild type Drosophila, male&femaleimg/tips_male_female-01.jpg
野生型ショウジョウバエの雄(左)と雌(右)
クリックで拡大。目盛りは1mm
右の写真は野生型ショウジョウバエの雄(左)と雌(右)です。
一見して、♂の方が小さく、腹部がクロっぽいのが分かります。
無麻酔・肉眼で見ても大体区別できます。
しかし、見た目や雰囲気で分けると雌雄を間違えることがあるのは、人間でもハエも同じです。特に生まれたばかりではヒトもハエも性差が少ないです。
人間の赤ん坊の性別はどうやって分けるでしょう? いうまでなく外部生殖器の違いです。ショウジョウバエも赤ん坊(羽化直後)では色や大きさでの区別がつきません。そこで、ハエの雌雄は外部生殖器の構造的な違いで区別します。
色や大きさといった相対的な判断基準で分けてはいけません。

外部生殖器による判別

Drosophila genital
ショウジョウバエの外部生殖器:雄(左)、雌(右)
Drosophila genital: male (L), female (R)
羽化直後のショウジョウバエ♂
羽化直後の雄の外部生殖器

一応、外部生殖器の違いを右に載せました。詳しいことは研究室の先生・先輩に習って下さい。
雄は野生型だと黒すぎて構造が見えづらいので、y w (yellow white) を背景に持つ組換え体を撮りました。
雌の腹部先端はつるっとしてあまり構造物が見えません。
雄の腹部先端にはトラバサミのようにトゲが生えています。

右写真の下は羽化直後の雄です。腹部の色では雌雄の見分けが付きません。外部生殖器に注目すれば、白い腹部にトゲが黒々としているがとても目立ちますから、トゲの色は指標にして良いでしょう。

写真よりイラストの方が分かり易いでしょう。JDDの「部位の名称」のページなどが参考になります。

Sex combsによる判別

Drosophila male sex combs D.mel. sex combs (pupa)
ショウジョウバエ雄の性櫛(性節)
Sex combs of Drosophila melanogaster male
クリックで拡大。
知っていると便利なのが雄にしかない Sex combs です。
ショウジョウバエの多くで雄の前脚に見られます。求愛・交尾に関与するらしいですが詳しくは知りません。ただし、melanogaster以外では無い種類もいます。

蛹の時期でも分けられます。
羽の発色が始まった蛹でSex combsが無ければメスです。
右の写真はバイアルの外から見た所です。
休みの前日にメスの蛹をそっと剥がして新しいバイアルに集めておけばバージンメスを確保できます。
また、後期蛹で致死となる場合にオスメスの判別が出来ます。

交尾しない時間

羽化後、室温で8時間以内、18度で16時間以内はショウジョウバエは交尾しないのでバージン雌が取れる。と、一般に言われています。あまり知られていない事です が、どうやら交尾が出来ないのは雄の方で、雌は若くても受け入れてしまうようです。羽化した直後でまだ真っ白い雌が年寄りの雄と交尾していた事がありまし た。捨てたので受精したかは分かりません。

モノエックス

【性決定はXYだけではない】ヒトとショウジョウバエはXX=♀、XY=♂ですが、性決定の仕組みはかなり違います。また、他の生物ではXY以外の性染色体や性決定もあります。wikiの性決定性染色体あたりが参考になりそうです。
ショウジョウバエの雌雄はX染色体の数で決まっていて、XXはメス、XYはオスです。普段気がつきませんが、たまに出てくるX0(モノエックス)は元気なオスで不妊です。オス一匹の交配で子が取れない時や、出てくるはずのないX致死のオス(XLethal/FM7 x X/Y →FM7でないオス出現)が出たときはモノエックスかもしれません。

バージンチェック

Virgin female fly (バージンの英語には性別がなく「雌」と特定する必要がある)を集めたら、20匹程度の小分けにして通常の培地で室温(〜25度)で放置します。特に処女 性が重要な場合(※後述)は、3日ほど置いて、幼虫が出てこないバイアルを使います。幼虫の確認が実体顕微鏡で餌の表面を見ます。処女雌でも一日に1個程 度(系統による)の未受精卵を産卵するので、卵があっても孵化しなければ問題有りません。使うまでの保存はグルコース寒天培地の方が普通のと比べてクラッ クなどの面倒が少ないのですが、幼虫が分かりにくいので注意が必要です。
バージンであることの必要性は、実験の性質によって異なります。交配の結果がマーカーで判別できる場合は必須とまでは言えません。しかし、Non-virginが混じると効率が下がるので、極力バージンを確認して使うべきです。

●よく使うバランサー・マーカー写真集

バランサー
以下のような特徴を持つ特殊な染色体です。くわしくは首都大学のページをご参照下さい。
【複数の逆位】複数の逆位により減数分裂でのキアズマ形成が妨げられ、遺伝的組換えを防ぐことが出来ます。名称は第一染色体なら First Multiple (Inversion?) → FM シリーズ、第二ならSecond Multiple → SM, 第三はThird Multiple → TMとなりますが、CyOのように例外もあります。
【優性マーカー】その存在が分かるように、バランサーには優性マーカーがあります。バランサーではない優性マーカーもあるので混同しないように気をつけましょう。Sb, Cyなどはバランサー以外でも使われます。
【致死か不妊】元々は、致死変異を維持するために使われました。バランサーがないと、マウスのように致死変異を +/- で維持し、一世代事に +/+, +/- を選り分けねば成りません。Bal/- とすれば、Bal/Balは致死か不妊なので、選別しなくても「バランス」された状態で維持できます。それ以外の用途として、複数の変異体を組み合わせる 為にも使います。
染色体 バランサー マーカー 備考
1st FM7DDJB参照 FM7 は First Multiple の略。第一染色体(X染色体)のバランサー。FM7, y[31d] w[a] B[1] を例とした。FM/FMの雌、FM/Yの雄は少数が成虫となり、雌は不妊。第一には他に幾つかバランサーや複合染色体がある。なお、遺伝子型の記述は、バ ランサー名の後にカンマで区切り、変異遺伝子をスペースで区切って列記する。遺伝子の順番は染色体上の位置に合わせ、未確認ならアルファベット順。
B[1] Bar(バー、棒状眼)。FM7/+で空豆状、FM7/FM7 or FM7/Yで棒(bar)状になる。右写真は w[1118] parg[27.1] / FM7 の雌と、FM7/Yの雄。
なお、FM/FMの雌も羽化するが不妊。
w[a] ホワイトアプリコット。w[a]/w[a]は白目(上段の写真:左)、w[1118]/w[a]はアンズ色(上段の写真:右)になる。※w はアリルや組換え体によって色の程度が様々
y[31d] yellow (黄体色)。上段の写真左(FM7/Y)の雄や、FMホモの雌では体色が薄い。
2nd CyO
カーリーオー、キャリオー
CyO (Curly of Oster)は代表的な第二染色体バランサー。他にSM1 も多用されるが、CyOと簡単には判別できず、CyO/SM1は致死である。
Cy Curly(カーリー、反り翅)。羽がカールする。温度が低いとカールが弱くなり正常と判別できない場合があるので18℃での飼育や、冬場の室温飼育では注意が必要。右写真はBc[1] Gla[1]/CyO。
DDJCyも参照
3rd 第三染色体には幾つかバランサーがあり、特にTM3とTM6はペアにして使えるので重宝する。TM2で維持されている変異は、TM3, TM6ではバランス出来ない可能性がある。
TM2 Ubx[130] ウルトラバイソラックス。平均棍(→DDJの画像)が大きくなり、毛が生える。見分け難いのでできるだけ避けたい。TM2/TM3ではUbxの表現型が強くなった。
TM3(ストックによりマーカーは多様) TM3は経験的に成虫で判別易いので多用している。マーカーは e Sb Ser だが、系統により持っているセットが異なるので要注意。経験的だが、TM3ホモは孵化しない模様。
Sb Stubble (スタブル、切り株)。全ての毛が太く短くなる。Sb変異を持てば必ず表現型が見られ、個体間のバラツキはない。TM3意外にもSbを持つバランサーや単独マーカーもあるので注意。右図は w;; Dr/TM3, e Sb Ser の雄。
DDJSbも参照
Ser ショウジョウバエSerマーカーSerrate (セレート、鋸歯状翅)。羽の先端が欠け、バットマンのマントのようになる。ストックによっては個体間のバラツキが大きく、表現型が見られない場合も多い。DDJSer参照
e ショウジョウバエebonyマーカーebony(エボニー。黒檀体色)。劣性なので、ヘテロでは現れない。右写真は TM3, e Sb Ser/TM6B, e Hu Tb のバランサーストック。ebony+のTM3もある。
TM6B TM6Bは成虫ではHuが見分け辛いと学生には不評。幼虫〜蛹ではTbが見分けやすいので、羽化前に致死となるか見分ける時に便利(使えればGFPバランサーはさらに便利)。TM6は稀にホモの成虫が出る。
Hu ショウジョウバエHuマーカーAntp[Hu](アンテナペディアエイチユー)カタの毛(肩剛毛
psotpronotal seta(e), (humeral(s))が増える。減ることもある。
DDJの胸部の構造も参照
Tb Tbと野生型ショウジョウバエ蛹の比較Tubby(タビー。ずんぐり)。体長が縮む。成虫では分かりにくい。右写真はTbと正常の蛹の比較。同一縮尺で上端の目盛りは1mm。
e 前述。TM6Bのebonyは強いのか、ヘテロでも体色が少し黒っぽくなっている。
TMS, Sb P{ry+ delta2-3}99B delta2-3によるショウジョウバエモザイク眼の 染色体はP因子を飛ばすときに、転移酵素のソースとして重宝。 俗に、delta2-3(デルタツースリー)や99B(ナインティナインビー。染色体の位置)とも呼ばれる、Δ2-3とは、転移酵素のエクソン2と3の間のイントロンが無いという意味で、その為に本来は働かないはずの体細胞でもP因子が動 く。マーカーはSbなのでTM3と交配する場合にはSerのTM3を使うなどの工夫が必要。右写真は、P 因子の転移が起こりモザイク模様となった複眼。
マーカー (優性のもので、ホモで致死が多い)
マーカーはバランサーではないので、メスでは遺伝的組換えが起こる可能性があります。オスでは遺伝的組換えが起こらないことがモルガンによって示されています。 第2、第3の二重変異を作成する場合など、mutant/If や mutant/Dr などのメスを用いてはいけません。大文字で始まるマーカーは優性です。他にもマーカーはたくさんあります。
2nd Bc[1] Black cells。全身にホクロのように黒い斑点が生じる。ホモは致死。下の写真の系統にもBcが入っているはずだが判別できない。
Gla[1] wg[Gla-1]?目がガラスのようになる。ホモは致死でない?
If Kr[If-1]目が縮む。ホモは致死。
Sp wg[Sp-1](ウィングレスエスピーワン)Sternopleural(足の付け根)の毛が増えたり、配列がおかしくなる。ホモは致死。剛毛の変化が一定しないので見分けにくい個体もいる。写真右では、本来「中小大」の並びが「中大大」に変化している。
DDJの胸部の構造も参照
3rd Dr[1] Drop。 個眼の数が「落ちる」。アリル[1]と表記されていても、ストックにより表現型に強弱がある。ホモは致死。右図は w;; Dr/TM3, e Sb Ser の雄。個眼の数がかなり減っている。次項のPrと同時に使われることがあり、PrDrと誤記される事がある。
Pr[1] Prickly。背中の毛が縮れ、みすぼらしくなる。PrとSbが同時にあると、背中の毛はPrの影響が強く、Sbが分かりにくいが、側面など背以外の毛にはPrは影響しないのでSbを判別できる。→DDBJのPrページへ
バランサーもマーカーも道具なので、強いてあまり難しい物を使う必要はありません。
ブルーミントンストックセンターにバランサー一覧ページがあります。
表のバランサー・マーカーはGMO(遺伝子組換え)ではありません(TMS, Sb P{ry+ delta2-3}99Bは組換え体)。ストックセンターのバランサー染色体にはGFPやLacZなど遺伝子組換えによるマーカーを持つ物もありますので、それらは適法に使用する必要があります。

写真が汚いのは、デジカメマウントがあるツァイス実体顕微鏡の画像が白っぽく濁ってしまう(なんでだろう?)のが困りものです。CO2麻酔をしている(氷冷やエーテルの方が体がこわばらない)、背景が麻酔台など色々手抜きをしている事もあります。

ショウジョウバエの麻酔方法(作成中)

ショウジョウバエ麻酔の種類

ショウジョウバエの麻酔には幾つかの方法があります。常用しているのは操作性が良い二酸化炭素です。
二酸化炭素
(液化炭酸ガス)
エーテル
(diethyl ether)
低温
麻酔が掛かるまでの時間 一瞬 10秒程度 10秒程度
持続時間 無制限 数分程度 無制限
麻酔から覚めるまでの時間 早い 遅い(培地に戻したときに培地に貼り付きやすい) 早い
麻酔中の追加投与 有り 無し 有り
設備 大がかりで高価
(レギュレーター、ボンベ架台など)
麻酔瓶(無くても可) 氷か冷蔵庫
消耗品費用 30kgボンベで6000円ほど。3ヶ月〜半年。 一級500mlで二千円ほど。消費期間は忘れました。 -
安全上の注意 >3%で中毒。狭い密室での使用は換気が必要。バルブの閉め忘れに注意する。麻酔台から吸虫管で吸い込まないようにする。 引火性がきわめて高い。身体への影響もあり換気が必要。 -
ハエの致死性 かなり長時間でも死なない。 液体のエーテルに触れると即死。 数時間なら死なない。容器の結露に張り付いて死ぬ場合がある。

二酸化炭素麻酔の方法

道具
方法

ショウジョウバエの飼い方(作成中)

ショウジョウバエ飼育に必要な設備・道具・消耗品

ショウジョウバエの飼育に最低限必要なもの
部屋 25度の空調が望ましい。害虫が入らない様に、窓を閉め切る。できれば土足禁止。トランスジェニックを用いる場合は適切な逃亡防止措置が必要。
インキュベーター 室温(25度に固定)でも飼えるが、出来るだけ25度のインキュベーターを用意する。維持・バージン取り用に18度もあると望ましい。
バイアル・ボトル 維持や少量の飼育には直径2-3cm、高さ10cmのバイアルを用いる。ガラスバイアル、使い捨てポリスチレンバイアルが入手できる。適当な試験管立ても必要となる。
大量の飼育には200mL程度のボトルを用いる。使い捨てポリプロピレンボトルが入手できる。牛乳瓶を洗って使っても良い。
適当なキャップが必要。使い捨てスポンジ・バスプラグ、再利用可能なスポンジ・コットンがある。
餌作りの道具 ヤカンは少量の餌(〜1L)に便利。注ぎ口の網を除去すると良い。0.8Lで小バイアル100本程度作れる。
寸胴鍋で 中量〜大量(〜10L)の餌を調整する。撹拌装置があると楽。分注はチャッキリを使う。
いずれの場合も、コンロが必要。臭いが強いので換気の良い部屋か、ドラフトも必要。
小物 ハエ捨て容器。誘蛾灯はお薦め(ホームセンターで電撃殺虫機として売られている)。
ショウジョウバエを選別する操作に必要な道具
実体顕微鏡 あまり高性能は必要ない。簡単な選別には低倍率で視野が広い方が使い勝手はよい。
炭酸ガス麻酔台 ルーチーンで麻酔する場合、二酸化炭素が最も使いやすい。エーテルなどでも可能だが、引火性・換気の必要性がある。二酸化炭素を用いる場合、ボンベ(ガス取り)と架台、レギュレーターが必要。麻酔台は安価に自作できる。

ショウジョウバエの入手

研究目的であれば、ストックセンターから様々なショウジョウバエを安価で入手できます。ただし、「沢山欲しい」のようなリクエストはムリです。野生型や基 本的系統なら、ショウジョウバエを扱う研究室から分けて貰いましょう。日本国内でトランスジェニックを扱う場合は法令に基づいた許可が必要なので誤って入 手しないよう気をつけましょう。
支払いはほとんどが、クレジットカード払いで、実費程度の安価な設定です(京都の例: 年会費込み¥1570〜BDSCの例: $42.58〜)。ただし、Szegedはユーロ建て銀行振り込みで少々面倒です。VDRCはかなり高額でFedexの送料も別払いでした。

ショウジョウバエの繁殖・継代

ドンドン増やす場合。餌を入れたバイアルに、数匹〜数十匹の親バエを入れ25度に置きます。3〜4日卵を産ませ、親は捨てるか新しいバイアルに移します。3〜4回まで繰り返せます。産卵後10日で子バエが羽化します。
継代・維持する場合。ショウジョウバエは凍結保存が出来ません(一応、受精卵を凍結保存出来るという論文もありますが(Mazur1992) 点突然変異の保存以外では使われていないそうです)。餌を入れたバイアルに、数匹〜数十匹の親バエを入れ18度に置きます。親は二週間程度で捨てます。3 週間程度で子バエが羽化しますので、植え付けから3~4週目に新しいバイアルに植え継ぎます。重要な系統は2本維持し、さらに二週間ずらして重複して維持 します(合計4本)。

ショウジョウバエの廃棄

全て殺虫して捨てています。特にトランスジェニックが含まれる場合、確実に殺虫する必要があります。
おまけ※バナナトラップ。野外の採集用と実験室での捕虫用があります。捕虫用は以下のように作 ります。大きめのコーヒーの瓶などを用意します。バナナを1/2〜1/4程度に切って瓶に入れます(出来れば潰す)。パン酵母・水を少量入れます(アル コール・酢酸を1%程度入れると良いらしい)。A4の古紙で漏斗を作ります(穴は数ミリ程度)。漏斗をビニールテープを一周巻いて固定。一週間使ったら凍 結殺虫して中身を廃棄します。ガラス瓶はゴミを軽く洗い流した後、適当に希釈した塩素系漂白剤を満たして半日ほどおいてすすぎます。
家庭用には不向きです(というより台所には置きたくありません)。家庭のコバエ対策は、首都大学進化遺伝学研究室・細胞遺伝学研究室の「ショウジョウバエに関するFAQ」を参照。上述のナイス蚊っち
は猫がいる自宅でも使っています。

ショウジョウバエの輸送

郵便・宅配便などで送れます。(2009年7月現在)
生きている生物は通常の郵便や宅配便では海外に送れません。
ショウジョウバエ(Drosophila)は万国郵便条約で認められた特例(→日本郵便の記事)です(参考2)。(※同条約に従うのは郵便事業=総務省所管のみであり、宅配便=国土交通省所管とは別だが禁制品などは概ね同様らしい)
参考 - ショウジョウバエ遺伝資源センター(京都工芸繊維大学)のニュース(※過去の情報なのでご注意下さい。)
  1. ショウジョウバエの郵送等による送付に関するまとめ。[承認申請手続き情報追加] 2005年11月
  2. 郵便でショウジョウバエを送ることが可能になりました 2005年1月
  3. ショウジョウバエの送り方(国際郵便約款)2004年3月