研究課題 - 花井@産総研

主にショウジョウバエをモデル動物として、体内時計の解析を行っています。
  1. ショウジョウバエ体内時計の光受容↓
  2. ショウジョウバエ新規時計遺伝子の検索↓(準備中)
  3. ショウジョウバエ交尾活動リズムの解析↓
  4. カタユウレイボヤ遺伝子発現リズムの解析↓

ショウジョウバエ体内時計の光受容

体内時計(概日リズム)は「概(おおむ)ね一日」なので、実時間とのズレが生じる為、体内時計をリセットする必要があります。
光は最も強い体内時計の同調因子(Zeitgeber, ツァイトゲーバー)です。
ショウジョウバエでは目からの情報と、CRYによる情報によって体内時計がリセットされます。
光による体内時計のリセット機構を解明するため、ショウジョウバエを用いて以下のような研究を行っています。

ショウジョウバエ体内時計の赤色光受容色素を解明

【こぼれ話】以前いたメンバーが、「安全灯でもショウジョウバエが順応してしまう」と不思議がっていました。安全灯は赤いフィルターで白熱電球を覆った物です。今回の研究でようやくその謎が解けました。
ショウジョウバエは走光性の実験から赤色が見えないと言われますが(Dobzhansky1974)、体内時計は赤色光に順応します(Zordan2001, Helfrich-Förster2002)。 また、体内時計のリセットには朝夕の光が重要で、朝夕の自然光には赤色成分が多く含まれます。また、CRY↓は赤色に反応しないため複眼から時計への入力を知ることが出来ます。
赤色発光ダイオード(R-LED)を用いて調べると、正常なショウジョウバエは2-4lux程度の弱い赤色光でも6時間遅れの時差を与えたるとしました。複眼が失われるeya(→FlyBase)変異体は赤色光に順応せず、R-LEDからの光量を500luxにしても順応しませんでした。red light photoreception
ショウジョウバエ複眼には5つの視物質(ロドプシン↓)があります。その中で、最も波長が長いRh1, Rh6の二重変異体を作成したところ、体内時計は赤色光に全く反応しなくなりました。R-LEDからの光量を500luxにしても順応しませんでした。
特定波長の光とはいえ、オプシンの変異のみで体内時計の光順応を消滅させたのは世界で初めての成果です(Hanai2008)。

ショウジョウバエ体内時計の緑色光への順応機構解明

赤色よりも短い波長(オレンジや緑、青)では、CRYが反応するために、複眼での光受容を観察することが出来ません。そこで、オプシン変異体にcry変異を導入しました。
【苦労話】Rh1, Rh6, cryは同じ染色体にあります。その場合、互いの変異体を掛け合わせ、Rh1[-] cry[+]/Rh1[+] cry[-]の雌で起こる遺伝子乗換えによってできる Rh1[-] cry[-]  という染色体を選んで系統化します。ところが、Rh1とcryは約670kbの近い位置にあるので、乗り換えの頻度は悪くなります。実際には1000系統作成し、 そのうち1系統で二重変異体が取れました。この変異は外見ではわからず、全てPCRによって検定し、しかもcry変異は点突然変異なのでPCR-RFLP で鑑定したため、作成には意外に手間が掛かっています。
Rh1, Rh6, cryの三重変異体(1-6-C)では、緑色(緑色LED)やオレンジ色(蛍光灯+セロファン紙↓)の光に順応しましたが、cry単独や二重変異体(1-C, 6-C)よりも順応が遅れました。これは緑〜オレンジ色光の受容にこれらの遺伝子が重要である事、そして、それ以外にも受容するオプシンが有ることを示しています。
緑色を受容する可能があるのはRh5(ピークは青)ですが、変異体はありませんでした。そこで、遺伝子組換え技術を用いてRh5遺伝子欠失変異体を作成しました。
Rh1, Rh5, Rh6, cryの4重変異体(1-5-6-C)では、緑色(緑色LED)やオレンジ色(蛍光灯+セロファン紙↓)の光に順応しませんでした。従って、Rh5も緑を受容することが分かりました。一方で、この4重変異体は白い光に順応したので、それ以外のオプシン(UVを受容するRh3, Rh4)も関与していると思われます。(Hanai2009)


LEDの波長
FL=蛍光灯、
LED=発光ダイオード、
R=赤、G=緑、B=青、W=白
【LEDの波長】
右は、実験に用いたLEDと蛍光灯の波長です。
USB4000という装置で測定しました。
面積が同じになるように描いたので、高さがバラバラで、縦軸は適当です。横軸は波長 (nm) です。
ピークは
R-LED, 634.43 nm; G-LED, 524.19 nm; B-LED, 463.56 nm
でした。
蛍光灯は、尖った水銀由来の輝線を無視すると、580 nmほどにピークがありました。
白色LEDは青色LED+黄色っぽい蛍光物質で出来ているので、青に強いピークがあります。
バルブはOHM電機の市販品(3LED常夜灯)です。

ショウジョウバエ新規時計遺伝子の検索

準備中

ショウジョウバエ交尾活動リズムの解析

交尾活動リズム ショウジョウバエの交尾活動には時刻依存性があります。ショウジョウバエの種類によって交尾リズムが異なり、異種交配を避ける性的隔離の一つになっている可能性があります。   交尾リズムは暗黒条件でも継続し、時計遺伝子変異体では継続しないので、体内時計によって支配された現象であると言えます。
交尾活動リズムをつかさどる中枢がどこにあるのか、組織特異的な細胞除去や時計の阻害を用いて解明を進めています。
右図は、雌側の交尾受入(子宮内の精子)の日内分布グラフです(坂井貴臣らによる)。

現在は、雄が雌を追尾する"close-proximity rhythm(→PubMed)"をビデオで撮影し、デジタル処理しています(浜坂、鈴木ら、投稿準備中)。

カタユウレイボヤ遺伝子発現リズムの解析

ホヤ写真
カタユウレイボヤ(Click)
カタユウレイボヤ(Ciona intestinalis)はゲノム解析で日本も中心的な役割を果たしたモデル生物です。
尾策動物であるホヤは進化的には脊椎動物と古い時代に分かれた生物群であり、時計遺伝子の進化を探る上で良いモデルと考えられます。
マイクロアレイ解析の結果、暗黒条件でも発現リズムの見られる遺伝子が多数見いだされました。(源利文ら、投稿中)
また、この生物にはPeriod, Clockといった「コア時計遺伝子」が見つかりません。他の動物を調べたところ、時計遺伝子は共通性が高いのですが、コア時計遺伝子は必ずしも保存されていませんでした。
動物の時計遺伝子ホモログのデータは、ClockBaseとして限定公開中です。(花井、投稿中)



用語

以下アンカースクロール用の余白