磁気異常のメモ その3

産総研
last updated 2023.9.22
磁気異常分布をもとめる手順
必要なデータを得たら、いくつかの処理を行い磁気異常図(メッシュデータ)を作成する
概略

全磁力測定値から定点観測データを用いて時間変動磁場に対する補正(日変化補正)を行う。
定点観測が行えない場合は観測エリアの近くの地磁気観測所のデータをもらってもよい。
ただしこの場合は、観測エリアと地磁気観測所の間に地磁気値のバイアスがあると考えるほうが良い。
観測線の位置を点ごとに計算しておく
交点コントロール
(物理探査ハンドブック(物理探査学会編(1998)、第9章3節 中塚正より))
  • 主測線と交差測線との交点において両磁力値の比較を行う(交点数値計算と呼ぶ)。
    理想的には両磁力値は一致するが、現実には位置測定誤差・機体磁気ノイズ残留分および地上定点と探査区域の間の時間変動磁場の相違などのため、差を生じる。
  • 一般には各種資料から差を生じた原因を推定し、磁力線、位置のいずれか(または両方)に補正を加える。
    近年は測位精度が向上したので位置を修正する必要はほとんどなくなった。
  • 交点コントロールは探査飛行が海抜面高度一定で行われた場合、あるいは海上での探査の場合のみに有効である。
日本海東縁部における海上磁気異常データのコンパイル(森尻(1999)より)
  • 1990年代前半までは、海上における測位精度は良くはなかった。そこで違う年度のデータをコンパイルするためには交点コントロールを行う必要があった。
    ただし、海域調査は地形調査の「ついで」に行われることが多く、空中磁気測量のような補正用の交差測線が設定されていることはまれである。
    そのため、交点コントロールを行えるようにデータの取捨選択作業を事前に行う。
  • 現在は即位精度が向上し、古いデータのように悩む必要がなくなった。
    • 船舶で得られるデータは水深を考えると空中磁気異常よりも分解能が低い。
    • 空中磁気図は20万分の1空中磁気図でコンター間隔は5nTであったが、20万分の1日本海の海洋地質図の付図では25nT程度となっている。
    • 日変化補正はしていない
    • 一本の測線の測定時間が長いので空中磁気のように直流バイアスが妥当かどうかわからないが、測定誤差が大きいことから、空中磁気と同様に直流バイアスを見積もることにする。
  • 必要なデータセット(白嶺丸の場合は1分間隔のCR80というデータセットになっている→こちら参照
    • 測定位置
      • データとして得られるのは船舶の位置である。
        実際のセンサーは船尾300mくらいのところを曳航しているので10ktで航行していれば1分前の位置を採用する
      • 測定高度は海面である0mとする。
        実際センサーは水深数mのところにあるが、水深が1000mの場合は測定誤差の範囲である。
    • 測定点の全磁力値
    • 測定時刻
  • GH90航海の例
残差計算と地質図図化
(物理探査ハンドブック(物理探査学会編(1998)、第9章3節 中塚正より))
  • 交点コントロールを終えると、ただちに磁気図を描くこともできるが、傾向面の除去のため、標準的にIGRF残差を計算する。
    コンピューターによる図化のためには十分細かいメッシュデータが必要であり2次元の補間計算を行う。
    メッシュサイズは表現したい構造の規模やデータの精度を考慮して決定される。
    ちなみに日本の空中磁気データベースでは200mメッシュのデータとして磁気図データベース(中塚・大熊,2005)が構築された。
    またこの時はデータ取得年度に幅があったので予測分が含まれているIGRFではなく確定した磁場を表現するDGRFの残差を採用している。
日本空中磁気データベースの使い方
参考:中塚 正 (2001) 日本周辺空中磁気異常のデータベース構築について. 地調月報, 52, 125-132.

1.画像を使う
画像を使う場合は、CDの指示に従って閲覧できる。

2.地櫃図Naviで見る
重ねて見ることができるが磁気異常図のカスタマイズはできない

3.メッシュデータを使う
CDに収録されている磁気図DBをフリーソフトGMTで使用できるようにする。
やり方は「こちらを参照」
空中磁気図
1kmメッシュのデータ