コアのはなし
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ジュール・ベルヌの「地底探検」、読まれた方は沢山いらっしゃるのではないでしょうか。古い地図を手に入れた主人公が地図を解読し、洞窟から地球の中心めざしてもぐっていくSF小説です。
アイスランドといえば、今でも真っ赤な溶岩が吹き出していて、地球の鼓動を感じられるホットスポットで、観光パンフレットにも登場する人気観光スポットとなっています。テレビで溶岩が流れ出している映像を見ると、地球の内部はどうなっているのだろうか?と興味をもたれるのではないでしょうか。2003年には「the Core」という映画も上映されました。コアの自転が停止してしまって地球磁場がなくなるおそれが出て、このままでは人類滅亡・・、そこでコアまで潜り再びコアを動かそうと奮闘する・・という内容でした。

さて、誰もが一度は思いをはせる地球の内部構造についてですが、
ここに巨大な鉄のかたまりである探査船を自重で沈ませてその船から各種のデータを地上に送らせようというのが私の大学院修士課程 (1986-1987年)での研究課題でした。

1.コアに向かって地底探査船を!(1987年発表)

 

半径数kmの金属鉄の球で船を建造すれば、自重でコアに向かって岩石を塑性流動させつつ降下し、100年後にはコアに到達します。探査船が降下していく途中で、岩石のサンプリングなどの活動を行います。

ここで、マントルの粘性が低いほど、鉄の球は早く落下できます。先に述べたホットスポットならばコアまで高温領域がつながっていて、最適の投下場所といえます。

ただし、・・・

半径5kmの金属鉄の球を作るには、4.2x1017円の材料費がかかる。←日本の国家予算の約 5,000年分。また、世界中の製鉄所をフル稼働させても約 6,000年かかるという途方もないものです。

 

 

2.鉄メルトを使えば20日で到達!(1996年発表)


さて、上記で述べた固体(鉄のかたまり)のストークス沈降だと、半径5kmの鉄(5.2×10 11m3)を使っても、コアまで100年かかります。
もし、 地表から鉄を主成分とするメルトを注入したらどうなるでしょうか?(メルトには硫黄や炭素などの軽元素を意図的に混入させて、凝固点をマントルの温度より下げておくとします。)

鉄をメルト状態で使用して水圧破砕を起こせば、ほぼ同じ量で20日でコアに到達できるというのが、1996年に発表した内容です。( 水圧破砕とは、流体が固体中を亀裂伝播として移動する様式で、岩脈という火山現象でおなじことが起きています。)
まさに 地球創世記に起きたコア・フォーメーションの再現です。
わずか 20日でコアに到達できるなんてすごいと思いませんか?

さて、このコア・プロジェクト、膨大な鉄の量、かかる莫大な費用を考えると殆どの方が非現実的だとお考えになると思います。しかしながら、現在のボーリングによる調査では限界があります。また近い将来、小惑星帯から隕鉄を運んでくることも可能になるかもしれません。(最近よく耳にする宇宙エレベーターなども実現すれば最大の候補となります。)

いつかこのコア・プロジェクトが実現し、地球の内部構造があきらかになる日がくると思っております。

3.ジュール・ベルヌの夢と科学者

なぜ大学院修士課程でこのテーマを選んだのか?
大学院の指導教官、熊澤峰夫さんは、地底探査船の設計を以前から考えていらっしゃいました。 「ジュール・ベルヌの著作のうち、実現していないのは地底旅行だけだ」などの発言に刺激を受けて、1985年の夏、修論のテーマとして選びました。

ジュール・ベルヌのSFに刺激されて科学者になった人は沢山います。コンスタンチン・ツィオルコフスキー(1857-1935)もその一人です。
彼は飛行機が発明されていなかった時代に、どうしたら宇宙に行けるかを追求し、ロケットの理論を次々と発表しました。彼が考えたロケットが今では木星の惑星や火星にまで探査船を送り込んでデータを地球に送ってくるようになりました。隕鉄を宇宙から持ってきて、それをコアに向けて流し込み、コアの謎を解くのも数百年後にはできるようになるはずです。

【研究者は夢を食べて生きる人種である】

 

4.これまでの地底探査に関する論文

このコア・プロジェクトに関する論文は下記よりダウンロードできます。

1864 ジュール・ベルヌ 地底旅行
1987 中島善人, コアプロジェクト:惑星深部の直接探査原理に関する研究, 東京大学大学院理学系研究科地球物理学専攻修士論文
1987 中島善人・熊澤峰夫、コア・プロジェクト(I)問題の定式化。地震学会春季大会講演予稿集。
1987 中島善人・熊澤峰夫、コア・プロジェクト(II)問題の解決。地震学会春季大会講演予稿集。
1992 中島善人・熊澤峰夫、コアの直接探査の可能性:fluid fractureの応用。地球惑星科学関連学会1992年合同大会講演予稿集。
1992 中島善人, Core Project: 固体惑星深部の直接探査計画.物性研究,57,p.540-586.
1995 中島善人, 物理的側面からみた水圧破砕の総説, 地質ニュース,494号,p.33-42.
1996 中島善人, コア・プロジェクト:水圧破砕による地球深部へのサンプル・リタ−ン計画, 地質ニュース,501号,p.45-51.
2003 Stevenson, D.J., Mission to Earth's core - a modest proposal, Nature, 423, 239-240.
2008 中島善人、Excelsior ! (日本ジュール・ヴェルヌ研究会の会誌), No. 2, 59-63ページ

 

 

 

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