印刷用表示 |テキストサイズ 小 |中 |大 |


国立研究開発法人 産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門 合成生物工学研究グループ
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 生命機能分子工学分野 宮崎研究室

HOME > Ecolife

大腸菌周りの遺伝子工学ツール開発

遺伝子工学の宿主として大腸菌は必須アイテムです。当研究室では、いじらない日はないほどEcolifeな日々を送ります。「あったらいいな!」系のツール・メソッドは自作します。いくつかのプラスミドについて、理研BRCから入手できるようになります。
Kentaro Miyazaki's Resource

【キーワード】MEGAWHOP | カウンターセレクション | 遺伝子発現

カウンターセレクション

フェニルアラニルtRNA合成酵素
大腸菌のフェニルアラニルtRNA合成酵素の小サブユニットPheSを改変し、4-クロロフェニルアラニン(4CP)の取り込み能を向上させた変異体PheS*を作成しました。LB2YTなど栄養リッチな培地でも十分に4CPを取り込みます。4CP非存在下では無毒。大サブユニットPheRとの相性があるので、一応、大腸菌専用のマーカーですが、変異部位は生物種を超えて保存されているので、他の生物種でも同様の変異を導入し使っているようです。
RIKEN BRC: pUC18K_ePAG2 | pUC18Z_ePAG2

Miyazaki K (2015) Molecular engineering of a PheS counterselection marker for improved operating efficiency in Escherichia coli. Biotechniques 58 (2), 86-88

ccdB
ccdBは大腸菌F’由来のToxinで、通常はAntitoxinであるccdAにより毒性が抑制されています。ccdB単独では高い致死性を示しますが、ccdB遺伝子内にアンバーコドンを導入し、条件致死となる変異体を作成しました。MV1184株(タカラバイオでコンピテントセルが販売されています)などのsupE-宿主内では毒性を示さず、一般的な宿主(JM109DH5 alphaなど)では致死となります。ccdB遺伝子内のBamHISmaI部位にDNA断片を挿入することで、JM109等を宿主にベクターの自己環状化などのない良質なライブラリーを作成できます*。市販品でもccdBを用いたベクターはありますが、ccdB ORF上流に外来遺伝子を挿入するシステムであり、外来遺伝子の配列次第でなんだかバックグラウンドが出そうな気がして自作しました。

*3 kb程度の小型ベクターなので、制限酵素処理・脱リン酸化よりも、Inverse PCRでプラスミド全体を増幅するのがオススメです(Blunt endの場合)。

Miyazaki K (2010) Lethal ccdB gene-based zero-background vector for construction of shotgun libraries. J Biosci Bioeng 110 (3), 372-373

アンチセンスRNA
Toxin-Antitoxinモジュールはゲノム中にたくさん埋れています。Toxinの毒性はAntitoxinが過剰量発現することで抑えられています。我々は、Antitoxinの発現をantisense RNAによりconditionalに抑制することでToxinの毒性を誘導するカウンターセレクション系を開発しました。

Tsukuda M, Nakashima N, Miyazaki K (2015) Counterselection method based on conditional silencing of antitoxin genes in Escherichia coli. J Biosci Bioeng 120 (5), 591-595

遺伝子発現系

サリチル酸誘導
メタゲノムライブラリーから得られたサリチル酸誘導型の転写因子に対し、誘導活性を高める進化工学を施しました。大腸菌の生育を阻害しない1 mM程度のサリチル酸添加でPLacよりも高発現。無添加条件ではPLacよりも漏れがありません。サリチル酸は安価で室温保存もできます。一般的な発現系(LacArabinoseTetなど)とも直交なので、複数の遺伝子の発現強度を変えながら組み合わせて発現させたい場合などにも有効です。
RIKEN BRC: pSAL7A35VS

Miyazaki K (2018) Molecular engineering of the salicylate-inducible transcription factor Sal7AR for orthogonal and high gene expression in Escherichia coli. PloS one 13 (4), e0194090

MEGAWHOP

部位特異的変異法として広く知られるQuikChangeの変法です。相補的な二本鎖オリゴヌクレオチドをプライマーとして使う代わりに、PCR産物をメガプライマーとして使用することで、長鎖DNA断片の入れ替えが可能です。特に変異PCR産物をベクターに戻すことを念頭に開発しました。QuikChange本家のGeneMorphキットでは変異PCR後のベクターへの組み込みにMEGAWHOPが採用されています(EZCloneという名前になっています)。メガプライマーを利用するのでアニーリング行程はスキップ、経験上、2 step PCRでいけます(EZCloneでは3 stepになっています)。

Miyazaki K, Takenouchi M (2002) Creating random mutagenesis libraries using megaprimer PCR of whole plasmid. Biotechniques 33 (5), 1033-1038
Miyazaki K (2011) MEGAWHOP cloning: a method of creating random mutagenesis libraries via megaprimer PCR of whole plasmids. Methods Enzymol 498, 399-406
Miyazaki K (2003) Creating random mutagenesis libraries by megaprimer PCR of whole plasmid (MEGAWHOP). Methods Mol Biol 231, 23-28

DNAのランダムな断片化

エンドヌクレアーゼVはミスマッチ・脱塩基・ウラシル等の核酸アナログ挿入部位を認識し、2~3塩基下流のリン酸ジエステル結合を切断します。このため、塩基配列に依存しないランダムな断片化が可能となります。特にdUTPTaq polymeraseの良い基質で、dNTPとともに適当量PCR反応液に加えることで、チミンの一部がランダムにウラシルに置換された増幅産物が得られます。再現性が高く、完全分解なのも大きな特長です。

Miyazaki K (2002) Random DNA fragmentation with endonuclease V: application to DNA shuffling. Nucleic Acids Res 30 (24), e139-e139