有珠山2000年4月2日噴火推移(速報)
有珠山2000年4月2日噴火推移(速報)
by 地質グループ(北海道立地質研究所,地質調査所,北海道大学理学部
地球惑星科学教室,北海道教育大)
観察者;広瀬 亘,田近 淳(北海道立地質研究所)
有珠山では現在,有珠山西方の国道230号線の洞爺湖温泉・虻田町の間の峠付
近と,洞爺湖温泉から南西へ約1kmの金毘羅山西山腹で,噴煙高が最大で2000m
前後に達する噴火を繰り返している.ここでは,4月2日13時11分から有珠
山の北約9kmに位置するサイロ展望台から観察した噴火の推移を速報として報告
する.ビデオ時刻は前々日午前にラジオの時報にて時刻合わせ済み.誤差は±
5秒以内.
なお,文中の火口名は暫定的な呼称であり,今後の詳細な検討により変更される
可能性が有る.
4月2日
13時11分 金毘羅山の西山腹上方の火口(以下,金毘羅山a火口)の西端
付近から,高さ最大300mの黒色のコックステイルジェットとと
もに高さ1500mにおよぶ白色の噴煙が上昇する.13分には金毘
羅山西山腹の下方の火口(以下,金毘羅山b火口)からも白色の
噴煙が上昇し始める.噴煙は東〜南東に流れる.
13時14分 有珠山西方の国道230号線の峠付近の火口群(以下,西火口)
から,高さ数十mの噴煙が上昇するが,非常に上昇力が弱い.
金毘羅山b火口からは断続的に灰混じりの噴煙が数十m程度まで
上昇する.金毘羅山a火口ではコックステイルジェットが次第に
減少,火口から高さ200mまでは灰混じりの濃い灰色,それより
上部では白色の噴煙が高さ1000mまで上昇する.濃い灰色の噴煙は
勢いが良いが,高さ200mまで上昇したところで上昇力をなくし,
落下している.その後,13時52分まで噴煙は消長を繰り返す.
13時53分 金毘羅山a火口の西端から,やや東側に倒れたコックステイル
ジェット(高さ200m)を伴う,勢いの良い白色の噴煙が立ち上がる.
噴煙高は1500mに達する.
13時59分 金毘羅山a火口から,カリフラワー状の真っ黒な噴煙が非常に勢い
よく立ち上がり,高さ1500mに達する.噴煙は東へ流れるが,一部
はやがてうずを巻くように北方へも流れ始め,14時23分にはサイ
ロ展望台へ到達する.
14時04分 金毘羅山b火口からも灰混じりの白色〜灰色噴煙が立ち上がる.
高さ200m前後のコックステイルジェットを無数に噴出しながら,
a火口とつながっていくように見える.
14時09分 西火口から高さ100mの灰色の噴煙が立ち上がり,数分で白色の
噴煙のみとなる.この後,観測終了まで西火口では高さ最大300m
程度の白色の噴煙が間欠的に上昇する.
14時10分 金毘羅山a,b火口からの噴煙はほぼなくなる.
14時23分 金毘羅山a火口からの噴煙がふたたび強くなる.高さ数十mのコッ
クステイルジェットと勢いの良い灰混じりの濃い灰色噴煙をとも
なう白色噴煙が噴出し,高さ700mに達する.数分で白色の噴煙の
みとなり,7分後に停止する.この後,高さ100〜300mのコックス
テイルジェットを伴う白色噴煙→白色噴煙→噴煙停止(継続時間
4〜7分)を,数分の休止期をはさみ,間欠的にくりかえす.
15時37分 観測終了.サイロ展望台から撤収する.