What's the DCHE ?


 DCHEは研究者が提案している同軸型あるいは二重管型の地中熱交換器です。
 研究者は1984年に数値シミュレーションによって検討を行い、高性能の断熱内管と逆循環方式を併用すれば、高効率の熱抽出が可能になることを明らかにしました。

 そこで、この地中熱交換器を坑井内同軸熱交換器 (Downhole Coaxial Heat Exchanger, DCHE) と命名して、高温湿潤岩体やマグマ近傍の超高温岩体、さらにはマグマなどの未利用地熱資源を利用したDCHEによる地熱発電の実現をめざして研究を始めました。
 1987年度から1998度までは、国のサンシャイン計画とその後のニューサンシャイン計画で研究を行いました。

 DCHEは、理論的に最も性能が優れた地中熱交換器で、かつ、多様な条件と用途に適用できることが特長です。
 また、従来の地熱エネルギー採取方法と異なり、地中熱交換器を含めたシステムの挙動をかなりの精度で予測でき、適切なシステムの設計が可能という特長もあります。


DCHE概念

DCHEの特徴

 DCHEは、
 (1) 高性能の断熱内管を用いること
 (2) 坑壁と内管の間の間隙に水を注入して、断熱内管を通して熱水を取り出す逆循環方式を採用していること
 (3) 完全なクローズドシステム(閉鎖システム)であること
が、特徴です。

 研究者は、数値シミュレーションによって検討を行い、このDCHEによれば、高効率の熱抽出が可能になることを明らかにしました (例えば、Morita et al. (1985), Down-Hole Coaxial Heat Exchanger Using Insulated Inner Pipe for Muximum Heat Extraction, Geothermal Resources Council Trans., Vol. 9, Part 1, 45-50)。


 なお、私達は、DCHEを地熱発電に利用する場合には、DCHE内や配管内を加圧水の状態にして運転することを1988年から論文や学会の講演要旨、資料などで繰り返し述べてきています。

ボタン DCHEを加圧水の状態で運転することを述べた誌上発表のリスト

  最近、地中熱交換器内を加圧水の状態で運転することを特徴とした特許(特許第4927136号)が成立したようですが、地中熱交換器内を加圧水の状態にして運転することは1988年から公知の事実です。
 なぜ公知の事実のみからなる特許が成立したのか不思議です。


断熱内管の効果−逆循環方式

温度分布 熱伝導率と熱出力
 上図は、DCHEの特徴の一つである断熱内管の効果を示したものですが、逆循環方式の場合について、内管の熱伝導率の違いによる熱交換器内の温度分布の違いを示しています。

 内管の熱伝導率が0.01W/m・Kの場合は高性能の断熱内管を用いる場合で、46.1W/m・Kの場合は鋼管を用いる場合です。
 図から、内管の熱伝導率が小さくなるにつれて、すなわち断熱性能が高くなるにつれて、熱交換器の出口温度が高くなることが分かります。内管の熱伝導率が0.01W/m・Kの場合の出口温度は、鋼管を用いる場合に比べて98℃高くなっています。
 上図は、左図の場合について、内管の熱伝導率とDCHEの純熱出力の関係を示したものです。

 内管の熱伝導率が0.01W/m・Kの場合の純熱出力は、鋼管を用いる場合の10倍以上にもなっています。
 断熱性能が優れた内管を用いれば、熱交換器の熱出力が大幅に増大することがわかります。

 また、内管の熱伝導率が 0.1W/m・K以下では、断熱性能の違いが熱出力へ及ぼす影響が小さくなることがわかります。
 これは、熱伝導率が 0.1W/m・K程度の断熱管があれば、十分に高性能のDCHEを構築できることを示しています。

順循環方式

順循環方式の場合の熱交換器内温度分布

 図は、順循環方式の場合で、かつ、熱伝導率が0.01W/m・Kの内管を用いる場合の熱交換器内の温度分布を示しています。
 順循環方式の場合には、断熱内管に注入された水は、ほとんどそのままの温度で熱交換器の底まで到達します。その後、地層との間で熱交換をしながら坑壁と内管の間を上昇します。
 この順循環方式で問題なのは、図のように浅部で熱損失が生じる上、熱抽出区間が短くなることです。このため、同じ断熱性能の内管を用いる逆循環方式の場合に比べ、熱出力が小さくなります。

 地中熱交換器によって効率良く地層から熱を抽出するためには、地層と熱抽出媒体の温度差の極大化を図るとともに、熱損失の極小化を図る必要があります。
 DCHEでは、この二つの要件を満たすことができますが、ヒートパイプやU字管熱交換器など、他の熱交換器ではこれらの要件を両立させることができません。
 これらのことから、DCHEは、最も効率が優れた地中熱交換器だと考えられます。


断熱管の構造

DCHEに適用可能な断熱管

 DCHEに用いる断熱管は、肉薄でありながら、高度の断熱性能を有していなければなりません。また、高い吊り下げ強度と高い耐熱性能が要求されます。
 研究者は、サンシャイン計画で、DCHEに適用可能な断熱管の開発を行いました。図は、開発した断熱管の接続部の構造を示したものです。この断熱管は、真空二重管式の断熱管ですが、外側管と内側管の間の空隙に粉体を充填した上で、真空にひいているのが特徴です。
 等価熱伝導率で0.02W/m・Kという、非常に高い断熱性能を達成しています。

 また、JFEチュービック(株)では、やはり二重管式の断熱管を製造・販売しています。この断熱管は、もともと石油の二次回収法である蒸気攻法用に使われていたものですが、現在は温泉の揚湯や湿式酸化法による汚泥処理にも使われています。
 いずれの断熱管も、350℃程度までの条件で使用可能と考えられます。


発電の絵

DCHEによる発電の可能性

 ハワイ島で行ったDCHEの概念実証実験によって、実際に高性能のDCHEを構築可能であることが確認されています。
 また、この実験結果から、当面のターゲットである350℃程度までの高温湿潤岩体においては、システム構築上の大きな問題はないと考えられました。

 したがって、現状でも、DCHEによる発電の実証は可能と考えられます。
 研究者は、次のステップとしてDCHEによる発電の実証をめざしていますが、もし、これを実現できれば、人類の夢の一つであるマグマ発電に一歩近づくことになります。


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