K. Chinzei, K. Miller, K. Homma, K. Hyodo, "Experiments of Brain Tissue Deformation; in vitro and in vivo (in Japanese)," in Proc. 36th Conf Japan Soc Med Electronics Biol Eng BME (Japanese J Med Electronics Biol Eng), vol. 35, No. Suppl., 1997, p. 316. 脳組織変形のin vitro,in vivo実験 Experiments of Brain Tissue Deformation; in vitro and in vivo ○鎮西清行,  * Karol Miller,  本間一弘, 兵藤行志 工技院機械技研 基礎技術部バイオメカニクス研究室 * NEDO 最先端分野技術研究員 ○Kiyoyuki CHINZEI, * Karol MILLER, Kazuhiro HOMMA, Koji HYODO Biomechanics div., Mechanical Eng. Lab., MITI * NEDO Advanced Industrial Technology Researcher [緒言] 新鮮なブタ大脳から得た円柱形状試料を単軸定速圧縮するin vitro実験を行い,ひずみ−応力特性を計測した.さらに,生体ブタ大脳をin vivoに単軸定速圧縮して,in vitro特性とin vivo特性の比較を行った. 本研究の最終的な目的は,仮想現実感による脳外科手術シミュレーション等で必要な,脳組織の力学挙動のシミュレートのための力学モデルを構築することである.本報では独自に行った実験結果につき報告する. [in vitro実験] in vitro実験では円柱形状の大脳試験片を単軸定速圧縮した.大型哺乳類の冷凍しない多数の大脳が収集可能なブタの大脳を用いた.食用に屠殺された後に,くも膜を破損せぬ様留意して採集した. ・ 試料…ブタは成体に達した約6ヶ月程度の食用種である.約5℃の生理食塩水に保存し,輸送した. ・ 形状…直径約3cm,高さ約1cm程度の円筒形状.試料は白質,灰白質,くも膜などからなる複合物である. ・ 圧縮条件…定速圧縮.歪みが約0.5に達したところで圧子を停止して荷重緩和を観察した.圧縮速度として5.0x102,5.0x101,5.0x10-3 mm/minの3種類を試みた.(以後それぞれV1, V2, V3と略記). 圧子には摩擦低減のためPTFEシートを貼付した.実験は室温で行い,1つの試料を繰り返し圧縮する事は行わなかった.Fig. 1に試料外観を,Fig. 2に圧縮中の試料を示す. 各速度につき12,13,6例のデータを得た.データの反復性は良好であった.平均値による歪み−応力線図をFig. 3に示す.荷重緩和の部分は含んでいない.歪み−応力線図は下に凸の曲線であり,いずれの歪み領域でも定数によって弾性率を代表させることは困難である.また,応力が圧縮速度(歪み速度)に強く依存することが改めて確認された. [in vivo実験] ところで,in vivo状態の脳では血流とCSFの寄与がいわれており,in vitroでの実験結果をin vivo状態の推定に直ちに用いることはできない.そこで麻酔下のブタ大脳の単軸定速圧縮を試みた.ブタ(体重約40 kg)側頭部に直径約20 mmの開頭を行い,硬膜まで除去した.圧子直径10 mm,圧縮速度1 mm/sで深さ7 mm程度までくも膜上から圧縮した.またブタの頭部をMRI撮像し,脳の3次元形状を計測した.これまでに1例の実験を行った.(Fig. 4) 得られた変位−荷重関係をFig. 5に示す.in vitro実験結果と比較してより直線性が顕著であった.定性的には,in vitro実験と類似する非線形のひずみ−応力関係になると予想される. [結語] 現在,in vitro実験結果に基づいて導出した非線形粘弾性構成式を用いて,in vivo実験の実験条件を再現するFEM解析を計画している.in vivo実験のデータは今後,少なくとも若干例増やす予定である. 本研究の一部は,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)提案公募型・最先端分野研究開発事業の「先進MRI画像化手法の基礎研究」として実施された. [参考文献] [1] Chinzei K., Miller K., "Compression of Swine Brain Tissue; Experiment In Vitro", J Mech Eng Lab, 50-4, 1996, pp. 19-28.