地質で語る百名山 「岩手山」

 岩手火山は,約30万人が生活する盛岡市の北方約18kmに位置し、日本百名山の1座に数えられる北東北を代表する山岳の1つであ る。また、江戸時代の国絵図で山頂部に噴煙が描かれているように歴史時代においても数回にわたって噴火活動を繰り返してきた.
 岩手火山の誕生は約30万年前と考えられており,それ以降現在に至るまで,主に玄武岩質〜安山岩質マグマによる噴火活動を行 い,大規模な山体崩壊とその後の火山体の再生を複数回(少なくとも5回以上)繰り返した.
 岩手火山は,ほぼ東西に配列した複数の火山体から構成され,地形 的 に西岩手山と東岩手山に大別される.西岩手山は約30万年前から形成した成層火山で,成因は明確ではないが山頂部には西岩手カルデラ(東西約2.5km, 南北約 1.5km)が開いている.一方,東岩手山は薬師岳(標高2038m)を山頂とする成層火山体で,西岩手カルデラの東部を埋積し,東麓から北東麓には特に なだらかな裾野を広げている.
 岩手火山で発生してきた噴火は,山麓部に火山灰を降り積もらせたり,火砕サージをもたらす様な爆発的な活動や,山頂部に火口丘を成長させたり,山麓部に 溶岩流を流下さ せる活動など,多様で,その推移も一様ではない.
 最近約3万年間では,マグマを大量に放出するような本格的な噴火は東岩手山で発生し,江戸時代の1732年に焼走り溶岩を流出した活動が最近のものであ る.しかしながら,昭和時代(1934年,1960-70年頃)には東岩手 山の山頂部(薬師岳の火口周辺)での噴気活動が活発で,盛岡市街地からも山頂部の噴気が観察されていた.一方,西岩手火山では約5千年以降現在まで水蒸気 爆発が度々発生しており,大正15(1919)年7月には大地獄谷と呼ばれる地熱地域で小規模な水蒸気爆発が発生している.

 1998年3月からは,活発な火山性の地震活動と地殻変動が観察さ れ,地 下におけるマグマの活動が活性化し始めたと考えられた.幸い噴火活動には至らなかったが,この火山活動に伴って1998年9月4日にはM=6.4の岩手県 西部地震が発生し,南西山麓部に地表断層が出現した.また,1999年12月からは大地獄谷や岩手山西部の黒倉山-姥倉山鞍部の地熱地帯において,噴気 活動が以前に比べて活性化した.その後,地震活動・地殻変動は徐々に沈静化し,噴気活動も2003年以降は減衰傾向にある.これにより,1998年以後実 施されてきた入山規制は,2004年から緩和された.
 この様に,岩手山はまさに今生きている火山である.


  目次
1.岩手火 山の概要                         
  • 1686(貞享三) 年噴火;山頂噴火[盛岡市街地にも降灰]
  • 1732(享保十六 -十七)年噴火;山腹噴火[焼走り溶岩の流出]
  • 大地獄谷の水 蒸気爆発
  •    2.文献史料による岩手火山の噴火活動史   (火山,43巻,no.6 )  
       3.西岩手火山で有史時代に発生した水蒸気爆 発の噴火過程とその年代(火山,44巻,no.5) 
       4.岩手火山における3.7-1.8kaの噴火活動史-山頂火口丘を形成した 噴火ステージの活動史-
                              (月刊地球 号外39「活動的火山」) 
       5.1998-年岩手山の活動に対する産総研の対応     [NEW, 2005.05]
               ・調査・研究計画の概要,火山地質調査,地熱観測
                                                      (盛岡国道管理事務署・岩手県「岩手山の記録」)
             6.岩 手火山地質図[NEW, 2005.05]
                        (産総研,地質調査総合センター 火山地質図 no.13
                          参考HP :  火山地質図データペース(産 総研,地質調査総合センター)
      


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      参考リンク
        地質調査総合センター (GSJ) ホームページ
          → 出版地質図のカタログ
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    産業技術総合研 究所(AIST)ホームページ