科研費課題

産総研
研究者 山脇浩 > 科研費課題
  1. 科研費基盤C採択課題(2005-2007)
    「プロトン拡散速度の赤外分光計測手法の開発と硫酸水素セシウム結晶多形への適用」
  2. 科研費基盤C採択課題(2010-2012)
    「錯体水素化物のリチウムイオン伝導圧力依存と構造の相関による伝導パス形成因子の解明」
  3. 科研費基盤C採択課題(2021-2023)
    「水晶振動子を用いた高圧液体の密度・粘度測定」

1. 赤外分光を用いたプロトン伝導機構の計測と解析


科研費基盤C採択課題(2005-2007)
「プロトン拡散速度の赤外分光計測手法の開発と硫酸水素セシウム結晶多形への適用」
研究課題/領域番号 17550091

研究代表者:山脇 浩(産総研)
連携研究者:藤久 裕司(産総研)

研究目的(概要)
本研究の目的は、代表的な無機固体酸型プロトン伝導体である硫酸水素セシウムを対象として
温度・圧力等により出現する様々な結晶多形のプロトン拡散速度を測定し、その構造との相関関係を明らかにする。

成果(概要)
赤外およびRaman散乱分光により硫酸水素セシウム各結晶相における水素結合状態を調べ温度-圧力状態図を作成し、新しくHPHT1,HPHT2相を見出した。これらの相は室温高圧下でも安定相であった。水素イオンと重水素イオンの相互拡散過程における0-H、0-D結合の空間分布の経時変化を赤外分光測定により追跡することで相互拡散係数を求める手法を開発した。赤外マッピング測定することでD体濃度の2次元分布の経時変化を測定し拡散対モデルを適用して解析することで、相互拡散係数を求める事ができた。この手法を硫酸水素セシウムの室温高圧相へ適用し、373Kでの相互拡散係数の圧力依存性を求めた。II相においては圧力変化はほとんど無いが、1.5GPaでHPHT1相に転移すると拡散係数が減少し、HPHT2相でも同程度の低い拡散係数を示すことが明らかとなった。常温常圧II相から室温高圧HPHT1相(斜方晶)へ転移すると四面体イオン間は接近するが、水素結合距離は一旦長くなる。HPHT2相(斜方晶)では水素結合距離が短くなった。相互拡散係数の測定ではHPHT1相、HPHT2相では拡散速度が低下しており、水素結合距離だけではなく構造全体と四面体イオンの回転運動の関係を考える必要がある。
硫酸水素セシウムに対して、銀蒸着基板上で2倍程度の表面増強効果を観測した。H体とD体の区別も可能であり、拡散計測への適用を試みた。しかし、試料の薄膜化や、赤外測定用基板の耐酸性の問題などをクリアするに至らず拡散データの取得には至らなかった。他の物質への適用などへ展開を図ることで手法自体は発展の余地がある。




2. 錯体水素化物のリチウムイオン伝導圧力依存と構造の相関による伝導パス形成因子の解明


科研費基盤C採択課題(2010-2012)
「錯体水素化物のリチウムイオン伝導圧力依存と構造の相関による伝導パス形成因子の解明」
研究課題/領域番号 22550185

連携研究者:藤久 裕司(産総研)、中野 智志(物材機構)

研究目的(概要)
我々は、次世代電池の電解質の高イオン伝導の発現の仕組みを解明することを目指している。
本課題では、高イオン伝導を示すことが発見されたLiBH4 の温度・圧力により出現する様々な結晶 相のイオン伝導度と構造との相関関係を明らかにすることを目的とする。
原子間距離をコントロールし、相転移により結晶構造の異なる複数の相を出現させるための手段として圧力を用いる。
高温I 相および高温高圧V 相を中心として、各相のイオン伝導度を調べ、振動分光によるイオン の振動状態、粉末X線回折による構造変化、DFT 計算による構造最適化やMD 計算等により、高イオン伝導の発現の仕組みを解明することを目指す。

成果(概要)
リチウムイオン伝導性を有する錯体水素化物に対して、温度-圧力相図、各相の結晶構造、イオン伝導性を研究した。LiBH4について高温域での相境界を確認し、I 相及び V 相で相転移に伴う伝導度変化は小さく、圧力と共に伝導度が減少することを明らかにした。 LiNH2, Li2(BH4)(NH2), Li4(BH4)(NH2)3に対しても それぞれ構造相転移を見出した。さらに、LiBH4と大気中の水分との接触により形成される水和物の結晶構造を明らかにした。




3. 水晶振動子を用いた高圧液体の密度・粘度測定


科研費基盤C採択課題(2021-2023)
「水晶振動子を用いた高圧液体の密度・粘度測定」
研究課題/領域番号 21K04760

研究代表者:山脇 浩(産総研)

研究目的(概要)
水晶振動子センサーにより高圧力下での粘度と密度を求める手法を開発し、バイオディーゼル燃料の主成分である脂肪酸メチルエステル類等に適用して、
高圧下での物性(粘度、密度など)を評価する。
常圧下で報告されている水晶振動子表面に液体をトラップするための加工を施すことで密度測定を行う手法を高圧力下での液体密度の測定手法としての適用を試みる。
少量サンプルで粘度と密度の圧力依存性を同時計測できるようにすることを目標とする。