ロボットの効用に関する一考察

谷江和雄(機械技術研究所)

1.はじめに

ロボットの産業規模:約5000億円 << 半導体産業:数兆円

ロボットの産業技術戦略上の意義?

実用化の視点からロボット研究が抱える課題を考察

 

2.産・学・官におけるロボット研究の変遷

産業界:過去2回のロボットブーム

 第1次:1960年代後半〜70年代中頃(バーサトラン,ユニメートの輸入)

 第2次:1980年〜バブル崩壊(教示再生型ロボット中心)

大学,公的研究機関,一部企業の研究所:知能ロボットへの関心

 1960年代中頃:人や生物の手足の機構・制御の工学的追究

 70年代:産業用ロボットの高性能化,非単純作業への拡大

 80年代:産官学そろってロボット研究の飛躍的伸び

  危険作業からの人間の解放を目指す→ロボットの知能化が不可欠

  国家プロジェクト,専門学会の設立

 90年代:バブル経済の崩壊

  産業用ロボットの伸び悩み,産業界のロボット研究の撤退・縮小

現在のロボット研究 … 官学でさらに盛んに,産業界は低調

理由:経済環境の悪化.

   基礎研究が実用的成果に結びつかなかった.

   (産業の現場:教示再生型,遠隔操作型が主流,知能ロボットは約1割)

  80年代におけるロボット高級化,知能化への研究投資

  (脚歩行,力制御,多指ハンド,モデルベース知能…)

 → 実用化成果は生まれなかった(デモンストレーションのみ,既存技術に勝てず)

  (効力の主張が説得力を失う … 産業界の関心低下へ)

 

3.ロボット研究が実用的成果を生み出さなかった理由

  学問成果の効用に対する誤った解釈(研究者,ユーザーともに)

  (純粋科学的な研究課題を具体的効用を持つ技術開発と錯覚)

   ← 生物の賢さ器用さ,SFの世界のロボットとの混同による

 生物体,生命体の持つ機能の実現(知能,脚移動,アーム,多指ハンド,熟練技能…)

=生物が持つ未知の機能の追究(⊂「真理の探究」原理原則の解明)

しかしロボット研究では... ニーズに役立つ成果の効用の図式の先行

 (知能→汎用機械,脚移動→不整地,多指ハンド→万能把持・操り)

科学:元来は知的願望を満たす営み

→ 基礎研究から得られた科学的知識・知見に基づいて応用的用途を考え出す努力

 (例:素粒子物理学→核兵器,原子エネルギ利用)

ロボット研究は順序が逆(科学的解明以前から具体的効用を論じる)

画一的な有用性のイメージ(災害応用,福祉…) → 逆に有用性を制限

 

4.ロボット研究の効用を拡大するために

研究課題を取り上げるに至った動機から離れて適切な応用分野を発掘する努力が必要

ペットロボット(AIBO) … 従来とは別の発想

 知能:人を飽きさせない行動の生成(×汎用作業機能)

 4脚:愛嬌のある行動を人に見せる手段(×不整地の移動手段)

従来のロボット研究:

 3K作業からの人の開放,福祉現場における弱者救済等の問題解決手段

 一方においてロボット技術の成果の効用に制約

これからは,社会に氾濫している既存ロボットのイメージにとらわれず成果の応用を発掘する「製品コンセプト提案型」研究開発との組み合わせが重要