ロボット工学ソフトウェアライブラリCD−ROM
(日本ロボット学会誌 Vol.14, No.1付録) 1996年1月

− 編集後記 −

 Richard StallmanのThe GNU Manifestoを御存知ですか?それを読んだことはなくとも,UNIX上でEmacsをはじめとする彼のフリーソフトウェアを使ったことがあるという人は少なくないと思います.誰もが良質なシステムソフトウェアを「空気のように」手に入れることができるべきだ,という彼の主張は実に鮮烈なものでした.そして実際に多くの人々が − それが意味することを意識しているかいないかにかかわらず − その恩恵にあずかっています.

 ロボット工学におけるGNUのようなものは作れないか?つまり,ロボット研究を行うための基本的な道具立てを研究者が共有し,それが誰にでも「空気のように」簡単に入手できる環境が作れないか?せめて,そういったことを始めるきっかけを作れないか?それが「ロボット工学ソフトウェアライブラリCD-ROM」の企画の出発点となっています.ここに集められたソフトウェアは,ツールであると同時にロボット工学の次のステップへと開かれた素材でもあります.会員の皆さんがこれらのソフトウェアをいろいろな形で徹底的に活用されることを願ってやみません.

 そして,こうした動きが広がって行くために欠かすことができないのは,特集本文で扱われている「研究開発プラットフォーム」,およびその標準化への道です.計測自動制御学会ロボット工学部会とSICEアーム,日本ロボット学会のロボット制御理論の実用化研究専門委員会やタスク・ダイレクテッド・ロボティクス研究専門委員会,そして科研費重点領域研究「知能ロボット」にうたわれている「研究インフラの整備」と,さまざまな形で標準化への動きの輪が広がりつつあることを感じ,喜ばしく思います.

 最後に,このような新たな試みを支持して下さった会誌編集委員会の内山勝前委員長・高瀬国克現委員長,もともとはソフトウェアについて素人の筆者を色々と支援して下さった94・95年度委員の皆さん,日常業務ですら手一杯のところに新たな企画の仕事を引き受けて下さった事務局の皆さんに深く感謝致します.思えばこれは日本ロボット学会が若い活力にあふれる学会であったからこそ実現できた企画だと思います.また,実際に多くの方々から貴重なソフトウェアを提供いただいたことには,この企画を進める中でいかに勇気づけられ励まされたか,計り知れません.この場を借りて心から御礼申し上げます.

(荒井 裕彦  機械技術研究所)