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荻野 拓
産業技術総合研究所
エレクトロニクス製造領域 電子光技術研究部門 超伝導エレクトロニクスグループ
主任研究員
e-mail: h−ogino@aist.go.jp
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経歴

1999年3月 東京大学工学部応用化学科卒
2001年3月 東京大学工学系研究科超伝導工学専攻
2001年4月 (株)村田製作所 研究員
2002年6月 東北大学多元物質科学研究所 寄附研究部門教員
2003年7月 科学技術振興事業機構 研究員(福田プロジェクト)
2005年3月 博士(理学) 東北大学理学研究科(論文博士)
2005年10月 東北大学多元物質科学研究所 助手
2006年11月 東京大学工学系研究科 助手(2007年4月より助教)
2015年9月 東京大学工学系研究科 講師
2016年4月 産業技術総合研究所 主任研究員


所属学会・学会活動

応用物理学会 分科会幹事、学会誌編集委員
日本セラミックス協会 セッションオーガナイザー
日本学術振興会第161委員会 運営委員
日本結晶成長学会 評議員
低温工学・超電導学会
電気学会


研究歴

東京大学工学部応用化学科、超伝導工学専攻(学士・修士)

新規層状酸硫化物の合成と構造
層状の無機化合物は高温超伝導・巨大磁気抵抗効果をはじめとする特異な物性を発現する舞台となっている。一方、酸素と硫黄、酸素とリンなど、複数のアニオンを同時に含む層状複合アニオン化合物は、他の化合物では見られない独特の構造を有し、単一アニオンの化合物では実現不可能な機能性発現の舞台となる可能性を秘めている。そこで、ペロブスカイト酸化物層とアンチフルオライト型CuS層の積層構造よりなる層状酸硫化物に着目し、新規化合物の合成を試みた。既存化合物の傾向からこの系における相生成の指針を見出し、元素の選択及びカチオンの原子価・熱力学的要因を考慮した合成法などにより、Scのペロブスカイト酸化物層を有する(Cu2S2)(Sr3Sc2O5)及び(Cu2S2)(Sr4Sc2O6)、CuO2面を持つ初めての酸硫化物である(Cu2S2)(Sr2CuO2)など、多数の新規化合物の合成に成功した。これらの化合物の物性を評価したほか、構造的な面からペロブスカイト酸化物層を有する層状酸硫化物の特徴を明らかにした。

 

東北大学多元物質科学研究所(研究員・助手)

共晶体バルク・ファイバー結晶作製技術の開発
特異的な組織を有し、高温域での高い機械的強度を有する酸化物共晶体バルク結晶・ファイバー結晶の作製技術開発を行った。構成元素や作製方法による微細組織強度の違いを検討し、構造材料及びファイバーレーザー応用に向けた検討を行った。

ワイドバンドギャップ半導体のバルク結晶作製技術の開発
次世代の半導体材料として注目されているZnO及びGaNについて、ソルボサーマル法を用いたバルク単結晶の作製技術開発を行った。特にZnOに関しては、東京電波(株)との共同研究により、水熱合成法でのZnOバルク単結晶の作製条件の検討、大型化・高品質化のための方策などを研究し、3インチサイズまでの大型化を達成した。基板用途に向けた検討のほか、ZnO結晶のシンチレータとしての基礎的な特性評価などを行った。

新規単結晶シンチレータ材料の開発
既存のシンチレータ材料であるCe:LSO、Ce:GSOといったCe系シンチレータは高密度・短寿命・高発光量という優れた特性を有しており、従来使用されてきたBGOを置き換えつつあるが、製造コスト・蛍光寿命などの問題も有している。新規材料の開発も行われているが、Ce:LuAlO3, Ce:LaBr3など、開発が行われてきた物質はいずれもCe3+の5d-4f遷移を利用したものである。そこで我々は更に次世代の材料を見出すべく、Yb3+の電荷移動遷移、ワイドギャップ半導体の室温エキシトン発光、Pr3+の5d-4f遷移といった、シンチレータとしては新しい発光メカニズムに基づいた材料の探索を行った。マイクロPD法を用いたコンビナトリアル的な材料探索により様々な材料を見出し、特にPr3+の5d-4f遷移を利用したPr:LuAGは、既存材料を上回る特性を持ち有力な新規シンチレータ材料候補であること明らかにした。

東京大学工学系研究科応用化学専攻(助教・講師)

鉄系超伝導体新物質探索
新しい高温超伝導体として基礎・応用両面から注目されている鉄系超伝導体について、新物質探索を中心として研究を行っている。鉄系超伝導体の化学的特徴に着目した系統的な物質探索を行い、ペロブスカイトブロック層を有する系で多数の化合物を発見したほか、最近ではAsチェーン層を有する新しい超伝導体CaFeAs2を発見している。

新規層状複合アニオン化合物の探索と機能性開拓
 酸硫化物・酸リン化物など複数のアニオンを有する化合物は、ある元素の組み合わせにおいて、他には見られない独特の層状構造を形成することが可能である。これらの化合物は超伝導や熱電特性、室温での励起子発光など様々な物性発現の舞台となることが徐々に明らかになってきているが、現在でも系統的な物質探索が行われているとは言い難い。そこでこれらの系について、高い特性が期待される新規化合物を設計し、合成を試みている。例えば過去に発見したスカンジウム酸硫化物に着目し、発光特性及び透明導電体としての可能性を探っている。この他にも層状複合アニオン化合物の持つ特異性に着目し、本系における新たな機能性開拓を目指している。

高捕捉磁場RE123溶融凝固バルクの開発
 RE123超伝導体は90 Kを超える超伝導転移温度を持ち、他の高温超伝導体に比べ磁場中での臨界電流密度が高いという優れた特長を持っている。このRE123を用いた溶融凝固バルクは結晶方位の揃った擬似単結晶的な組織を持ち、磁気分離やドラッグデリバリーシステムなどへの応用が検討されている。一方で、結晶方位と成長方向に依存した結晶配向性や微量添加物の効果などは、完全には明らかにされてはいない。そこで、より小型で高い捕捉磁場を有する溶融凝固バルクを開発するため、結晶組織の改善、希薄ドーピングによるピンニングセンターの導入など結晶化学的・物理的な様々な観点からバルクとしての特性向上を目指している。

単結晶シンチレータ材料の欠陥制御による特性向上
 既存の単結晶シンチレータにおける発光効率の決定因子に着目し、化学的な手法による特性の改善を目指している。酸化物シンチレータは扱いが容易で大型単結晶が容易に得られることから今後とも応用の主流を占めると考えられるが、ハライド系シンチレータでは理論限界に近い発光量が報告されている一方で、酸化物シンチレータでは理論限界の数十%程度の低い発光量しか得られていない。これは酸化物中では励起エネルギーの発光中心による捕獲能力が低く、相対的に点欠陥などによる発光の遅延や消光効果が強いためと考えられる。そこで特にガーネット系酸化物シンチレータを中心に、結晶中の点欠陥と特性との関連を明らかにし、その制御指針を確立することにより特性の向上を試みた。特にLuAG:Ceシンチレータにおいては、Ga置換により発光量が数十%向上することを見出した。これらの手法はその後の実用シンチレータ開発にも用いられている。