現場にアタック

2015年01月27日(火)

担当:田中 ひとみ

 

    

 

先週末行われたサッカーアジアカップ。日本代表はUAEと対戦、PK戦まで縺れ込みました。
ここで1人目の本田選手がまさかのミスキック、さらに香川選手も外して負けてしまいました。
サッカーファンの間では「PKの失敗は伝染する!」という都市伝説みたいな話があるそうで、香川選手も伝染したのかなぁと思った人もいたかもしれません。

 

 

 

 

ただ、このほど「下手なプレーは伝染する」ということを科学的に証明した研究結果が発表されたんです。
発表したのは、脳情報通信融合研究センター池上剛さんと、フランス国立科学研究センターゴウリシャンカー・ガネッシュさん
詳しい話を池上さんに伺いました。

 

 

プロを含むダーツのエキスパートに素人がダーツを投げている映像を見てもらった。そのダーツがダーツボードのどこに刺さったかという結果が見えないように編集されてあるビデオ。
素人の結果が予測できるようにつれて、エキスパートのダーツの運動の能力が悪化してしまう=つまり下手になったということがわかりました。素人の動きを見ただけでは影響はなくて、素人の動作の予測ができるようになるということが重要。

 

 

 

 

詳しく説明します。

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予測課題.png

クリックで拡大できます。

 

今回、池上さんたちは、ダーツのプロなど22人のエキスパート=熟練者を集めて、その人たちに素人がダーツの矢を投げている映像を見せました。

 

映像には、投げている姿だけ映っていて、的のどの辺に当たったかは分からない様にしています。
そして、「腕の振り方」などを見てどの辺に当たったかを予測=イメージしてもらった後、実際にどこ当たったか答え合わせをします。(予想は右下だったけど、実際は左上だったとか)
最初は正解率が低かったんですが、繰り返し答え合わせをすると、熟練者は、「この腕の振り方だったら、この辺」という風にイメージが膨らんで正解率が高まっていきます。

 

そして最後に、熟練者にダーツを普段通り投げてもらいました。
すると、正解率が高かった人ほど、自分の命中率が落ちる、という結果が出たんです。

下手なイメージが膨らみ脳に影響を与えた。このことから『人の動きをみてそれを予測する』という脳の働きと、『自分が動く時の脳の働き』は共通するということがわかりました。
下手なプレーを「みて理解した」人ほど下手になる、という結論に行き着いたということです。

 

 

 

※調査結果の詳細はこちらです↓

http://www.nict.go.jp/press/2014/11/11-1.html

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そんな「下手がうつる」という実験結果。
ダーツだけでなく、他の運動・スポーツでも起こり得る、さらにプロじゃなくても誰にでも起こるそうなんですが、実際、みなさんそんな経験したことあるのか?
街で聞いてみました。

 

 

PKで自分の前に蹴ってた子が失敗して、それに影響されちゃって自分も外した。
走り高跳びで失敗した跳躍を見ると失敗しちゃう。なので、人の跳躍を見ないようにしてます。
野球はやってましたけど、引きずられることはなかった、人のプレーを見てなかったんで。
★僕はゴルフのキャリアは30年ありますけど人のスイング見たら連鎖反応起こすとかいう人はいるかもしれませんが、私はないです。下手な人とまわるのはなんの苦もない。
野球とかはやってたけど、エラーした時は続きますね。むしろ自分がエラーばかりしてたので・・・・。

 

 

 

 

 

 

ほかにも例えばボーリングで下手なプレーがうつったり、バスケットでフリースローの時、さらにチームプレーでも連鎖しちゃうとかいう方も。
そしてみなさんの対処法は「人のプレーを見ない」という人が多かったです。
実際に池上さんに対処法をきいたところ、今回の実験結果からも「人のプレーを見ないほうが影響されない」ということが導き出されたとのこと。

 

 

ただ、ここで思ったのは「下手がうつる」よりも、どうせうつるなら、反対に下手ではなく「上手いプレー」がいいですよね?
「上手いプレー」はうつらないのか?
再び、池上さんのお話です。

 

 

人が運動が上手くなるというのは2つのプロセスがあって、1つは知識をつける=ダーツのもち方とか投げ方、そういう知識的なものと、ダーツを思い通り投げることのできる能力=うまく筋肉を動かす能力の2つだが、それぞれを切り離して実験することができないので、素人の人をうまくするやり方というのは分かっていない。

 

 

 

 

 

知識という部分と運動能力という部分、どちらかを切り離して考えられないので、「上手いプレー」がうつる(上手くなる方法)は、これまで証明できていないんです
ただ、人の行動を見ることと、自分が動くことには何か関連があるのではということで、今回は上手いと逆の「下手になる」という仮説を立てて実験したそうなんです。

 

 

今後は、その証明できてない部分を解明して、こんな風に活かしていきたいということでした。
再び池上さんです。

 

 

今後は下手な人が下手な人がどうやったら上手くなるかというメカニズムを解明して、今回の研究成果と組み合わせることで、例えば脳梗塞などで手が上手く動かせなくなり、物が上手く掴めなくなった患者さんに、物をつかむ動作を行っている他の人の映像を見せることで、物をつかむという動作の機能を回復する手助けになるリハビリやトレーニング方法の開発に活かしていきたいと思います。

 

 

 

 

  

まだまだ人の動きと脳の働きは、わからないことだらけなんですが、今回の結果を足がかりに医療スポーツの現場で役立つような研究にしていきたいとおっしゃっていました。

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