2010年12月11日(土)
ジオネットワークつくばフォローアップカフェ
「アゲハチョウの尿検査 -水飲み行動のひみつ」開催報告
代行タクシーの行列ができる天久保の繁華街の一角にFPGAカフェという一見不釣合なものづくり系カフェがある.ここはハンダ付けや回路設計などのコンサルティングをおこないつつ,カフェとしてコナコーヒーなどを嗜みつつ寛ぐというイノベーションの最前線の現場でもある.ここではオーナーの意向で技術開発の探求のみならず,ノンジャンルでのイベント開催などの科学コミュニケーションの推進にも寄与している.その一環としてサイエンスカフェを開催させていただいた.今回のテーマは「アゲハ蝶の尿検査」と題して,蝶の行動生態学を研究している井上A.尚さん(農業生物資源研究所)が最新の研究成果を紹介した.2010年7月のジオネットワークつくばサイエンスカフェの続編かつ上級者編という位置づけである.今回は新しい取り組みとして,WECAFEを主催する蓑田裕美さん(WEcafe)がファシリテータとして参加者と研究者の橋渡し役を務めた.
井上氏はまずDVDによる動画を上映して,蝶の水飲み行動についての研究成果を紹介した.水飲み行動はNaの摂取が主な目的で,きれいな水よりも人間の排水やほ乳類の死骸などからも吸水することなどがあるそうだ.尿の採取実験については生データに近い研究成果が豊富に示され,参加者は圧倒されたかもしれない.このDVDは参加者全員にプレゼントされた.動画の後に質疑応答を行い,小学生を含む参加者から熱心な質問が飛んだ.
後半はフィジーにおけるアゲハ蝶の調査の様子が紹介された.環境の変化や地質の違いによってアゲハ蝶の分布や生態が制約され,種の消長が決定されることが示された.たとえば石灰岩を好むような蝶は新しい火山島にはいないらしい.長期的に見ると,過去の環境変動に比べれば,現在の環境は安定しており,種数が激減したりすることはないという見解が印象に残った.
最後は井上氏のミドルネームの秘密が明かされ,FPGAカフェからは子供向けに特製チョコレートをプレゼントしていただいた.カフェの大家さん(平藤さん)から辛口の講評をいただき,サイエンスカフェはお開きとなった.
(古川竜太)
会場となったFPGAカフェの建物はこの2階奥にあります.手前はアダルトな雰囲気,,,
チラシを貼ってみました
店長さん,必死にクレジットカードの処理をしています.今日はメイドさんがいないのです.
お客さんは幼稚園児からアマチュア研究者まで,超(蝶)幅広です.
話題提供の井上さん.今日は無地のTシャツです
コーヒー片手に,方や図鑑を見ながら,見ているのはガチの研究データ(!)です.
ファシリテータの蓑田さん(WECAFE)
最後にオーナの平藤さんから講評をいただきました.今日は独身じゃないようです,,,
今日のサプライズ、サモア諸島特産の Papilio godeffroyi。フィジーのアゲハによく似ていますが、既にサモア独立国では絶滅説も流れ始めてしまったそうです。写真の標本はアメリカ領サモア産(2010年9月)。従来知られていた標本と違い、♀(左手前)が異様に黒っぽいとの事。
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