フェムト秒レーザー
フェムト秒レーザー(femtosecond laser) と呼ばれる極めて短い時間の間だけ光るような パルスレーザーの開発と応用に関する研究を行っています。 1フェムト秒 (fs) とは、1000兆分の1秒のことを意味し、 1秒間に地球を7周半進む光が髪の毛の太さ程の距離すら進めないぐらい極めて短い時間です。 我々人間はこんなに短い時間では、まったく動くことはできませんが、 このような短時間でも物質中の電子や格子(イオン核)は動くことができます。 物質が光励起された直後のダイナミクスは非常に高速であると言われており、 そのようなダイナミクスを調べるツールとして、フェムト秒レーザーが不可欠となります。 また、フェムト秒レーザーを材料に照射すると、 材料に対する熱的損傷を少なくしたレーザー加工を実現することができます。
超短パルスレーザー加工(フェムト秒加工)
フェムト秒レーザーに代表される超短パルスレーザーを材料に照射すると、 非常に短い時間に物質除去(アブレーション)に必要なエネルギーを材料に与えることができ、 材料に対する熱的損傷を抑制した加工を実現することができます。 この方法は、微細加工において有用なレーザー加工法として期待されています。 しかし、超短パルスレーザーによる加工のメカニズムは非常に複雑で未だその詳細は明らかになっていません。 ニーズに合った素材・形状・品質のレーザー加工を行うためには、 パルス幅・パルス強度・パルスの繰り返しレートなどの加工パラメータを最適化する必要があります。 そこで、我々は東京大学物性研究所と共同で、各種パラメータを自動で広域に可変することができる パラメータ自動可変レーザー加工システム(automatic parameter-variable laser processing system)を 開発し、柏センターのレーザー加工プラットフォームに設置しました。 この装置を用いて、金属・ガラス・セラミックス・樹脂等の様々な材料の微細加工に関する研究を行っています。
ファイバレーザー
古くは、フェムト秒レーザーは主にチタンサファイア結晶を用いた固体レーザーが主流でした。 現在もチタンサファイアレーザーは多く用いられていますが、 近年、ファイバレーザー (fiber laser) の技術革新が目覚ましく、省エネ・低コスト・コンパクト性・高安定性という 実用上の利点から注目を集めています。 また、ファイバレーザーは高繰返しで増幅することが可能であるため、 計測や加工に応用する場合に、計測や加工の速度を大幅に向上できる可能性を秘めています。 我々は、ファイバレーザーの利点を生かして、実用性の高い計測・加工用光源を実現したいと考えて、研究を行っています。光ファンクションジェネレーター
光の電界波形は通常、正弦波と考えられていますが、 複数の異なる波長の光を合成することにより、 正弦波ではない矩形波・鋸歯波などのような任意波形の電界を生成することが原理的には可能となります。 我々は、複数の波長のフェムト秒レーザー光を合成することにより、 任意の電界波形を生成することができる装置、光ファンクションジェネレーター(optical function generator) の実現を目指しています。 そのためには、波長の異なる複数のレーザー光のタイミングと電界位相を高精度に同期制御する 技術の確立が重要となります。 このような光源が実現すれば、市販されている電気的なファンクションジェネレーターよりも 約6桁も高速(広帯域)な電界波形を生成することができるようになり、 超高速現象を計測・制御するための有力なツールとなると考えられます。
研究の詳細な内容については、研究紹介をご覧ください。