高見澤 昭文(Akifumi Takamizawa)

  • 国立研究開発法人産業技術総合研究所
  • 物理計測標準研究部門 量子センサー計測研究グループ
  • 主任研究員
  • e-mail: akifumi.takamizawa(あーっと)aist.go.jp
  • ((あーっと)は@に置き換えてください)

【研究テーマ】

@原子泉セシウム一次周波数標準器の開発とその高精度化・高信頼化

1秒は、セシウム原子に共鳴するマイクロ波の周波数(9 192 631 770 Hz)に基づいて定義されています。 現在この周波数を最も正確に決定する手法は、原子泉と呼ばれるものです。 原子泉では、大雑把にいって

  • 1.レーザを用いてセシウム原子の運動をほとんど止め(レーザ冷却)、上方に打ち上げる。
  • 2.上昇時と落下時に共鳴マイクロ波を照射し(ラムゼー共鳴法と呼ばれる)、原子の内部エネルギー状態を変える(下準位から上準位に遷移させる)。
  • 3.レーザの照射により発する蛍光を観測することにより、遷移確率を測定する。
  • 4.遷移確率が最大になるように、マイクロ波の周波数を制御する。

といったプロセスを経て、共鳴マイクロ波の周波数を得ます。 ただし、磁場、黒体輻射および原子間の衝突などの影響を受けて共鳴周波数がずれてしまうので、 こうしたシフト量を実験的・理論的に見積もってその分を補正します。 我々は産総研における原子泉2号器のNMIJ-F2(右写真)を作製し、シフト量と不確かさの評価を完了しました。不確かさは典型値で4.6×10-16(約7000万年に1秒の精度)です。 また、

  • 1.光ポンピングを用いた原子数の増大
  • 2.真空槽一体型のマイクロ波共振器の使用

といった工夫がされていることが特徴です。 当原子泉は、世界の標準時の元となっている国際原子時の校正に用いられます。

A半永久的に周波数ロックをかけ続けられるレーザの開発

レーザ冷却などの原子操作を行うには、原子の狭い共鳴線にレーザの周波数をロックする必要があります。 しかし、レーザが壊れたわけでもないのに、モードホップと呼ばれる現象が起き、周波数ロックが外れることが時々あります。 ロックが外れると、例えば原子泉の長期連続運転が止まってしまいます。 そこで、半永久的に周波数ロックをかけ続けることができるレーザの開発に取り組んでいます。 装置としては、外部共振器半導体レーザ(ECDL)と呼ばれる10 cm程度のサイズのコンパクトなもので、

  • 1.アライメントのずれに強いキャッツアイ配置と呼ばれる方式を採用
  • 2.位置微調器具を使わないことで機械的な安定性を向上
  • 3.筐体を密閉することで、大気圧変動の影響を抑制

といった工夫により、1か月以上の連続的な周波数ロックを実現しました。

Bチップスケール原子時計の開発

前述の原子泉は高さ2 m以上に及ぶ比較的大きな装置ですが、 小型化や省電力化を目指した原子時計の研究も盛んに行われています。 1 cm角以下のサイズのガスセルを用いたチップスケール原子時計の研究にも参加しています。

【研究業績リスト】

【略歴】

1998年3月東京工業大学 理学部 応用物理学科 卒業
2000年3月東京工業大学大学院 総合理工学研究科 電子システム専攻 修士課程修了
2003年3月東京工業大学大学院 総合理工学研究科 電子機能システム専攻 博士課程修了(博士(工学)取得)
2003年4月(独)科学技術振興機構 ERATO大津局在フォトンプロジェクト 研究員
2003年10月(独)科学技術振興機構 ERATO大野半導体スピントロニクスプロジェクト 研究員
2004年4月日本学術振興会特別研究員(ミュンヘン大学物理学科)
2005年8月同上(慶應義塾大学理工学部電子工学科)
2007年4月(独)産業技術総合研究所 計測標準研究部門 時間周波数科 時間標準研究室 研究員
  組織変更等のあと、現在に至る

【所属学会】

応用物理学会、日本物理学会


最終改訂日 2025年7月14日