微量水分測定法

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 低湿度・微量水分の測定法


低湿度・微量水分領域における、信頼性の高い湿度測定法として、鏡面冷却式露点計とキャビティリングダウン分光装置について紹介します。




 鏡面冷却式露点計


5に鏡面冷却式露点計の概念図を示します。鏡面上に湿潤気体を流しながら鏡面を冷却していくと、鏡面の温度が湿潤気体の霜点と等しくなったところで霜が結ばれます。その時の温度を読み取り、霜点を決定する装置です。




この装置は、鏡面、鏡面冷却機構、結霜検知機構、温度制御・測定機構で主に構成されています。光源からの直接光と、鏡面からの反射光の光量を検出器で測定し、結霜によって減少する反射光量と、直接光量との比較から、鏡面での霜量が一定となるように温度制御します。そして平衡状態となったところで温度を測定して、湿潤気体の霜点を決定します。


鏡面冷却式露点計は、測定原理が明確で、霜点を直接測定できる利点があります。この方式の露点計は信頼性が高く、各国の標準機関が維持している、湿度の国家標準の同等性を調べる国際比較で仲介標準器として採用されています。測定の下限は、通常、霜点で-75 ℃程度と考えられていますが、冷却機能の強化や、結霜検知能力を高めることで、-100 ℃あるいはそれ以下の霜点測定が可能と表示されている装置も販売されています。ちなみに霜点を測定する場合でも、露点計と言います。


鏡面冷却式露点計を使った測定で、微量水分領域において、特に注意する点として、ここでは以下の4つを挙げておきます。


  1. (1)霜量が少なく平衡達成までの時間が長くなるため、一般に低湿度になるほど応答性が悪くなる。


  2. (2)湿潤気体の温度が霜点より高い場合は指示が低めとなる可能性がある。 (参考資料[2])


  3. (3)雰囲気ガスの沸点・昇華点より低い霜点は、原理的に検出できないため、測定対象となる湿潤気体の種類、含まれる不純物とその量、湿度領域によっては、問題となる場合がある。


  4. (4)霜点のガス種依存性に注意する。例えば、HClガス中に含まれる水蒸気量が xW=1 μmol/mol (ppm)の場合、-50 ℃付近で結霜するとの報告がある(窒素中の霜点は約-75 ℃)。(参考資料[5])




 キャビティリングダウン分光装置



キャビティリングダウン分光法(CRDS)は (参考資料[6,7])、最近になって、飛躍的に高感度化された吸収分光法です。図6にCRDSの概念図を示します。




2枚の高反射率ミラーで構成された光学キャビティの片側のミラーM1外部から、パルス化されたレーザー光を注入します。キャビティ内に進入した光は、もう片側のミラーM2に到達すると、わずかに光を外部に漏らしながら反射します。この反射光は再度M1で反射され、再びM2に到達します。この現象がミラー間で何度も繰り返されます。M2外側に漏れ出す光強度は、反射の回数を重ねる毎に、指数的に減少していきます。M2外側に置かれた検出器で測定した光強度信号を、時間の関数として描くと、図中オシロスコープ画面上側の曲線の様になります。これは、強度の初期値をI0とし、時間tにおける強度を I(t)とすると、




の関係式で表されます。ここでτ0は強度が1/eとなるまでの時間を表し、リングダウンタイムと呼ばれています。τ0は、ミラー反射率R、光速c、キャビティ長Lを用いて、




の関係式で表されます。キャビティ内に光を吸収する物質がある場合は、強度減衰がさらに速くなり、(6)の関係式は、




となります(オシロスコープ画面下側の曲線)。ここで、τは吸収がある時のリングダウンタイム、σは物質の吸収断面積、nは物質の数密度を表します。 (7)式から、




が得られます。吸収断面積が既知の水の振動回転遷移を対象とし、τ0τの測定を行えば、(7)式を使って、水の数密度を求めることができます。この測定法は、高反射率ミラーを使い、レーザー光をキャビティ中で何度も往復させ、長い実効光路長を得ることで、検出感度を高めています。例えば、R=0.9999L=50 cmの場合、実効光路長は5 kmになります。


発生法で紹介した産総研の拡散管方式発生装置で発生させた窒素中微量水分を、キャビティリングダウン分光法を用いた微量水分測定装置で測定した結果を、図7に示します。標準の値は24 h毎に変化させています。




標準値と測定装置の指示値はよく一致しており、系統的に見られる両値の差は、水の数密度計算に用いる吸収断面積の不確かさと、測定装置の光学キャビティ内の気体温度に関する系統効果で説明できることが分かっています。また、図より、CRDSは、応答性・安定性に優れた測定法であることが分かります。この結果は一方で、開発した微量水分発生装置の評価にも繋がっています。すなわち、応答性・安定性に優れた微量水分標準が実現されている事を、CRDS測定からも確認できます。


この測定装置の検出感度に関しては、別に行った水の吸収スペクトル測定から、1 nmol/mol (ppb) 程度までの窒素中微量水分検出が可能であることが分かりました。

 

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