産業技術総合研究所(産総研)   地質調査総合センター(地調)

桜島火山2008-2009年昭和火口噴火

                   by A.Tomiya (2009/7/21改訂)

<トピック>

☆噴火:2009年4月9日,やや規模の大きい(中規模の)爆発的噴火(2009/4/9掲載,7/8改訂)
2009年4月9日15時31分,桜島昭和火口でやや規模の大きい(中規模の)爆発的噴火がありました.
噴煙高度は4000m以上とこれまで最高の高度に達し,火砕流が1km流下しました.
対岸の鹿児島市街地にも,視界がかすむほどの降灰がありました.
昭和火口では爆発的噴火が多数起こっていますが,2009年4月9日のものは別格に大きく降灰量もケタ違いに多いものでした.
(ただし,大正の大噴火に比べれば,4月9日噴火は比べ物にならないほど小さい.)


<桜島火山の活動と2008-2009年昭和火口噴火>

■ 昭和火口とは
桜島火山は,年に何度も噴火を繰り返すような活発な火山ですが,通常の噴火は基本的に南岳(標高1040m)の「山頂火口」からです.
ところが2006年6月,新しい火口が山腹(山頂から東に少し下った標高800m付近)に開いて活動を繰り返すようになりました.
この火口は,1939〜48年(昭和14〜23年)にかけて活動した火口とほぼ同じ場所であることから,「昭和火口」と呼ばれています.
1946年の「昭和大噴火」もここから起きています.

■ 2008年2月に活動再開
2008年2月3日,この「昭和火口」からの噴火活動が約7ヶ月ぶりに再開しました.
威力の強い「爆発的噴火」(※1)が何度も起き,火砕流も発生しました.
2006年以降の昭和火口の活動で「爆発的噴火」が起きたのは2008年が初めてです.
2月3日には桜島の噴火警戒レベルが2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げられています.

(※1) 気象庁の解説によれば,桜島における「爆発的噴火」および「噴火」の定義は以下の通り:
“桜島では、爆発地震を伴い、爆発音、体感空振、噴石の火口外への飛散、または気象台や島内の空振計で一定基準以上の空振のいずれかを観測した場合に爆発的噴火としています。”
“桜島では噴火活動が活発なため、噴火のうち、爆発的な噴火もしくは噴煙量が中量以上(概ね噴煙の高さが1,000m以上)の噴火の回数を計数しています。...(略)...基準に達しない噴火は、ごく小規模な噴火としています。”

■ 2008年の活動,その後の推移
昭和火口における噴火活動は,2月3日から6日まで断続した後,一旦静かな状態に戻りました.
しかし,4月3日に弱い噴火が起こったあと,「爆発的噴火」が4月8日(7日深夜)から14日にかけて何度も起こりました. その後,爆発はしばらくおさまって小規模な噴火のみが断続的に起こっていましたが,5月上旬には再び活発化し, 5月15日以降「爆発的噴火」を何度も起こす活発な状態になりました.
6月中旬以降は噴火回数が減少しましたが,7月28日には噴煙高度が3000m以上に達する噴火が2度起きました.
その後は,8月10日に小規模噴火が1回あっただけで,8月28日まで昭和火口からの噴火がないことから,同日桜島の噴火警戒レベルは2(火口周辺規制)に引き下げられました.
以後年内は9月7日に小規模噴火があったのみです.(2009年1月まで噴火無し)

■ 2009年の活動の推移
前年9月からしばらく静穏な状態でしたが, 2009年1月28日に噴煙高度1000mを超える噴火を起こし,再び活発化しました.
2月1日から2日にかけては爆発的噴火が9回と頻発(噴煙高度の最高は2200m),3日から4日にかけても4回の爆発的噴火がありました.
この活発化により,2月2日から桜島の噴火警戒レベルは2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げられました.
一連の活動で2月1日から5日にかけて噴火が22回(うち爆発的噴火は13回)発生しましたが, その後は爆発的噴火や小規模以上の噴火の発生が見られなくなったことから, 2月19日に噴火警戒レベルは3(入山規制)から2(火口周辺規制)に引き下げられています.
しかし2月28日以降,再び爆発的噴火が多発するようになり,3月2日に噴火警戒レベルは3(入山規制)に戻されました. 特に3月10日05時22分の爆発的噴火では,“弾道を描いて飛散する大きな噴石”が2合目(昭和火口より2km付近)まで飛びました.2006年6月からの昭和火口における一連の活動では最も遠くまで飛んでいます.
4月2日より爆発的噴火が非常に活発になり,4月3日には24時間で15回の爆発的噴火が発生しました. さらに,4月9日には噴煙高度4000m以上のやや規模の大きい(中規模の)爆発的噴火があり,火砕流が1km流下しました.
4月11日以降ごく小規模な噴火以外は起こらなくなったため,4月24日に噴火警戒レベルは3(入山規制)から2(火口周辺規制)に引き下げられました. その後しばらくは,爆発的噴火の少ない状態が続きました(発生は5月30日,6月10日・17日).
6月24日以降,爆発的噴火がまた頻発するようになり,7月8日までの2週間に20回以上を数えました. 以後も活発な状態が続き,7月18-19日には大きめの空振を伴う爆発的噴火が続いたため,7月19日に噴火警戒レベルは3(入山規制)に引き上げられました(7月21日現在継続).

■ 噴火の特徴
桜島における通常の噴火活動では,火山灰(数cm以下の小石も含む(※2) )や火山ガスの放出が主なものです.これらは主に風下に影響を与えます.
一方,爆発的な噴火では,空振(衝撃波のようなもの)が感じられるほか,大きな岩片(1mを超えることも(※2))が山腹まで飛んできます.
数十cmの岩片ならば火口から2kmほどの距離までも飛ぶことがあり,過去には麓の家や車のガラスを割るなどの被害を与えたこともあります.
数十cm以上の岩片は風向きにあまり影響されずに高速で弾道を描いて飛んできます.

(※2) 最近の気象庁の解説文では,
ここで言う数cm以下の小石のことを“風の影響を受ける小さな噴石(火山れき)”,大きな岩片のことを“弾道を描いて飛散する大きな噴石”,と記しています.
火山学的には,火山から放出される岩片のうち直径2〜64mmのものを「火山れき」,64mmより大きいものを「火山岩塊」と呼んでいます(直径2mm以下が「火山灰」).
大きな岩片のうち,火口を飛び出したときにはまだ高温で一部融けた状態であったものを「火山弾」と呼びます. 火山弾は,放出時の温度やマグマの性質によって特徴的な形(牛糞状,紡錘状,パン皮状,など)をしています.

昭和火口の噴火では,山頂火口の噴火にくらべて,火砕流が発生しやすい傾向があります.
火砕流は1kmほどの距離なら数十秒で駆け下ります.

火山学的には,桜島でたびたび起こる「爆発的噴火」は「ブルカノ式噴火」と呼ばれます.イタリアのブルカーノ火山にちなんだ名前です.2004年9月の浅間山の爆発的噴火も同じタイプの噴火様式です.
詳しくは下記ページをご覧下さい:
 → 浅間火山:2004年9月1日噴火はどんな噴火だったのか?


<2008年「昭和火口」噴火で放出された火山灰の分析>

2008年2月の噴火活動を受け,産総研地質調査総合センターでは,気象庁が採取した火山灰などの分析を行ない, 同月15日に開催された第109回火山噴火予知連絡会(定例)にて分析結果(速報)を報告しました. そのときの資料は下記で見ることができます.

 → 2008年2月桜島昭和火口噴火の火山灰について [PDF, 1.2MB, 2頁](産総研 火山活動研究推進部会のページ)

2008年2月の昭和火口噴火による火山灰は,新鮮な火山ガラス(一部はよく発泡)と硫黄鉱物を多く含む特徴がありました.
また,その後の噴出物も含めた分析結果が,2008年6月23日開催の第110回火山噴火予知連絡会にて報告されています.

 → 桜島昭和火口噴出物の構成物・付着成分分析(2008年2〜5月)  [PDF, 1.6MB, 8頁](同上)


<2008-2009年の「昭和火口」からの主な噴火>

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[2008年第1期]
2月3日00:39 噴火(昭和火口では2007年7月以来7ヶ月ぶり)
 同10:18 爆発的噴火(噴煙高度1500m以上,小規模な火砕流
 同15:54 爆発的噴火(噴煙高度500m,火砕流が1.0km流下)
   → 同日16:10,気象庁が「噴火警戒レベル」を2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引上げ
2月6日10:33 爆発的噴火(噴煙高度300m)
 同11:25 爆発的噴火(噴煙高度1000m以上,火砕流が1.3km流下,火口から3km地点で径3-5mmの火山れきが降下,大きな爆発音)
----------------  2月6日11:25爆発以後,4月3日まで噴火なし
         →2月20日14:20,気象庁が「噴火警戒レベル」を3(入山規制)から2(火口周辺規制)に引下げ  ----------------
[2008年第2期]
4月3日10:55 噴火(昭和火口では2月6日以来2ヶ月ぶり)
4月8日00:29 爆発的噴火(噴煙高度1200m,火砕流が約1km流下?)
   → 同日10:30,気象庁が「噴火警戒レベル」を2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引上げ
4月11日17:21 爆発的噴火(噴煙高度2200m)
 同21:09 爆発的噴火(噴煙高度2200m)
4月12日11:15 噴火(噴煙高度1400m)
4月13日05:59 爆発的噴火(噴煙高度1000m以上)
 同07:03 爆発的噴火(噴煙高度1000m以上)
4月14日02:31 爆発的噴火(噴煙高度不明)
----------------  この間,ごく小規模〜小規模な噴火のみが断続的に発生
         5月2〜7日には火映現象を観測(夜間に高感度カメラで捉えられる程度)----------------
[2008年第3期]
5月7日06:38 噴火(噴煙高度2400m)
5月8日14:13〜16:45 噴火(噴煙高度2800m) =昭和火口からの噴煙としてはそれまで最高の高度
5月15日04:51 爆発的噴火(噴煙高度1000m;爆発的噴火は約1ヶ月ぶり)
 同20:03 爆発的噴火(噴煙高度1300m)
5月17日00:17 爆発的噴火(噴煙高度2000m)
 同18:13 噴火(噴煙高度1500m)
5月18日03:18 爆発的噴火(噴煙高度1600m)
 同15:25 爆発的噴火(噴煙高度700m)
5月19日01:10 爆発的噴火(噴煙高度800m)
 同19:56 爆発的噴火(噴煙高度不明)
5月20日21:00 爆発的噴火(噴煙高度2400m)
5月21日16:21 噴火(噴煙高度1200m)
5月22日11:13 噴火(噴煙高度1300m)
5月23日23:57 爆発的噴火(噴煙高度不明)
5月30-31日  噴火多数(噴煙高度1200-1900m)
6月9日02:34 爆発的噴火(噴煙高度不明)
 同13:09 爆発的噴火(噴煙高度1000m)
 同20:46 爆発的噴火(噴煙高度不明)
6月10日10:23 爆発的噴火(噴煙高度不明)
 同12:36 爆発的噴火(噴煙高度不明)
 同16:55 爆発的噴火(噴煙高度不明)
 同18:51 爆発的噴火(噴煙高度不明)
6月11日05:15 爆発的噴火(噴煙高度不明)
6月12日00:09 爆発的噴火(噴煙高度不明)
 同02:37 爆発的噴火(噴煙高度2200m)
 同10:39 爆発的噴火(噴煙高度不明)
 同18:19 爆発的噴火(噴煙高度2200m)
6月13日22:59 爆発的噴火(噴煙高度2500m程度,噴煙はやや多量)
 同23:36 爆発的噴火(噴煙高度2500m程度,噴煙はやや多量)
6月28日06:36 爆発的噴火(噴煙高度不明)
----------------  その後噴火回数は減少
         →7月14日15:00,気象庁が「噴火警戒レベル」を3(入山規制)から2(火口周辺規制)に引下げ
[2008年第4期]
7月28日07:05 噴火(噴煙高度3300m) =昭和火口からの噴煙としてはこれまで最高の高度
 同10:10 爆発的噴火(噴煙高度3200m;弾道を描いて飛散する大きな噴石が4合目まで達する)
   → 同日11:05,気象庁が「噴火警戒レベル」を2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引上げ
8月10日  噴火(噴煙高度1800m以上)
          その後噴火は観測されず
         →8月28日15:00,気象庁が「噴火警戒レベル」を3(入山規制)から2(火口周辺規制)に引下げ
9月7日13:49 噴火(噴煙高度1200m)
(その後,2008年内に噴火は確認されませんでした)
 
----------------
[2009年第1期]
1月9日〜  ごく小規模な噴火が時々発生
1月17〜21日  微弱な火映現象
1月28日13:52 噴火(噴煙高度1000m以上)
 同16:21 噴火(噴煙高度1200m)
2月1日11:10 爆発的噴火(噴煙高度700m)
 同17:17 爆発的噴火(噴煙高度1400m)
 同18:35 爆発的噴火(噴煙高度1200m)
 同19:57 爆発的噴火(噴煙高度1200m)
 同20:22 爆発的噴火(噴煙高度1000m)
2月2日02:00 爆発的噴火(噴煙高度2200m)
 同04:57 爆発的噴火(噴煙高度1200m)
 同06:26 爆発的噴火(噴煙高度1400m)
   → 同日9:30,気象庁が「噴火警戒レベル」を2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引上げ
 同11:09 爆発的噴火(噴煙高度1400m)
2月3日16:32 爆発的噴火(噴煙高度1600m)
 同17:21 爆発的噴火(噴煙高度1600m)
 同23:58 爆発的噴火(噴煙高度1600m)
2月4日07:15 爆発的噴火(噴煙高度1300m)
----------------  その後噴火回数は減少
         →2月19日15:00,気象庁が「噴火警戒レベル」を3(入山規制)から2(火口周辺規制)に引下げ
[2009年第2期]
2月28日19:09 爆発的噴火(噴煙高度不明)
3月1日〜3月2日06:53  爆発的噴火3回(噴煙高度最大2000m)
   → 3月2日10:30,気象庁が「噴火警戒レベル」を2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引上げ
3月3日〜4日  爆発的噴火2回(噴煙高度最大2000m)
3月7日〜10日05:01  爆発的噴火12回(噴煙高度最大1800m)
3月10日05:22 爆発的噴火(噴煙高度1200m;弾道を描いて飛散する大きな噴石がこれまで最遠の2合目まで達する)
3月14日  爆発的噴火3回(噴煙高度最大700m)
3月20日05:55 爆発的噴火(噴煙高度不明)
3月23日00:58 爆発的噴火(噴煙高度不明)
----------------
[2009年第3期]
4月2日  爆発的噴火7回
4月3日  爆発的噴火15回
4月4日  爆発的噴火10回
4月5日  爆発的噴火8回
4月9日15:31 爆発的噴火(噴煙高度4000m以上,火砕流が1km流下) =昭和火口からの噴煙としてはこれまで最高の高度
----------------  その後噴火回数は減少
         →4月24日14:00,気象庁が「噴火警戒レベル」を3(入山規制)から2(火口周辺規制)に引下げ
5月30日20:23 爆発的噴火(噴煙高度2500m)
6月10日07:24 爆発的噴火(噴煙高度1500m)
6月17日17:06 爆発的噴火(噴煙高度2500m)
----------------
[2009年第4期]
6月24日03:06 爆発的噴火(噴煙高度不明)
6月25日14:57 噴火(噴煙高度2200m)
6月26〜27日  爆発的噴火4回
6月28〜30日  爆発的噴火6回
7月2〜4日  爆発的噴火7回
7月6〜7日  爆発的噴火5回
7月8〜13日  爆発的噴火13回
7月14〜17日  爆発的噴火5回
7月18〜19日  爆発的噴火6回(うち2回は火口から3kmで100パスカルを超える強めの空振を観測)
         → 7月19日11:00,気象庁が「噴火警戒レベル」を2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引上げ
----------------------------------------------------------------

時刻や噴煙高度などは気象庁の発表にもとづきます. 噴煙高度は火口縁からの高さ.第1期などの区分は本ページにおける便宜的なものです.
ここで挙げたほかにも,ごく小規模〜小規模な噴火が多数起こっていますが,ここには列挙していません.詳細は気象庁サイトの資料をご覧下さい.

また,この間に起こった「南岳山頂火口」からの爆発的噴火は下記の通り:

[2008年]
・5月20日 00:22(噴煙高度2000m)(南岳山頂火口の爆発的噴火は1月7日以来)
・7月 5日 17:08(噴煙高度1600m)
・8月23日   (噴煙高度不明)

[2009年]
・1月15日 04:55(噴煙高度700m)
・2月22日 10:58(噴煙高度1500m)

#このほか爆発的でない小規模な噴火は南岳山頂火口でもときどき起こっています.


<桜島火山関連情報>


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Created:Feb. 14, 2008


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