岩脈(Dike, Dyke)

岩脈:クラック(引張割れ目)に充填されたマグマを岩脈という.地下のマグマは,基本的に岩脈で移動すると考えられているので,マグマの上昇から噴火までのすべてに関与する.クラックなので周辺の応力場の影響を受けやすく,テクトニクスにも発展できる(Nakamura, 1977).岩石中の高温マグマの物質輸送なので,母岩を破壊する破壊力学,母岩を押し広げる振る舞いを支配する弾性力学と塑性力学と,クラック中を移動する液体マグマを支配する流体力学,母岩と熱交換をするための熱力学からなる複合メカニズムである.岩脈研究はE. M. Andersonにより始められた.岩脈や断層の基礎理論を構築し,地球科学への応用も試みている(例えば,Anderson ,1951).岩脈の相互作用から火山への応用のレビュウは高田(1994),岩脈の基礎理論のレビュウはRubin (1995)参照.

左の写真は,産総研正門横に立てられた石碑.花崗岩(薄い灰色)に貫入した岩脈(濃い灰色).

岩脈の写真


クラックのバリエーション:クラック先端で塑性変形を伴うもの,浸透流を伴う開放系のものまで,バリエーションは様々.

岩脈の発生:マントルなどで部分融解し,結晶粒間に存在するマグマが,浸透流から数cmスケールの岩脈に成長するしくみと,マグマ溜りなどの規模の大きい不定形の”たまり”から岩脈として成長するしくみと両方ある.

岩脈の貫入方向最小圧縮主応力軸に垂直(Anderson, 1951).岩脈や割れ噴火火口の分布が,広域応力場の指示者である場合は,テクトニクスに貢献する(Nakamura,1977).局所応力場の指示者の場合は,山体応力場(斜面安定性)や火山周辺の応力状態を表現している(高田,2003).


図 岩脈によるマグマの移動方向.写真はゼラチン中の油クラックの例.


クラックのバリエーション:クラック先端で塑性変形を伴うもの,浸透流を伴う開放系のものまで,バリエーションは様々.

岩脈の発生:マントルなどで部分融解し,結晶粒間に存在するマグマが,浸透流から数cmスケールの岩脈に成長するしくみと,マグマ溜りなどの規模の大きい不定形の”たまり”から岩脈として成長するしくみと両方ある.


岩脈の貫入方向最小圧縮主応力軸に垂直(Anderson, 1951).岩脈や割れ噴火火口の分布が,広域応力場の指示者である場合は,テクトニクスに貢献する(Nakamura,1977).局所応力場の指示者の場合は,山体応力場(斜面安定性)や火山周辺の応力状態を表現している(高田,2003).岩脈の移動方向浮力(上下のいずれかに)+応力勾配(勾配により任意の方向のいずれかに)+余剰圧力(全方向に平等に拡大).応力勾配はTakada,(1989)で提案された.式全体は,Rubin, (1995)で一般化された.


岩脈の移動速度:十分成長した岩脈では,充填したマグマの粘性に支配される.Lister and Kerr (1991)などの基礎理論の研究参照.


岩脈の流走距離:固まるまで
に移動する距離は,幅の4乗に比例.

岩脈の形状Weertman (1971); Secor and Pollard (1975); Lister and Kerr (1991); Nakajima (1993).マグマの物性は岩脈の形状に影響を与える(例えば,Wada, 1992).幅/長さは,玄武岩質マグマで小さい;珪長質マグマで大きい(下左図).走向方向で応力の勾配があれば,厚さも変化する(下右図).




図上左 岩脈の水平規模と幅の関係.マグマの物性に依存している(高田,2001).

図上右 岩脈走向方向の幅の変化の例(高田,2001)

岩脈の規模:マグマの供給量による.幅mmオーダーから,Mackenzie dike swarm (Canada; 1.3 Ga)の長さ2500kmまで様々.

岩脈周辺の応力場岩脈延長方向に引張場,直交方向に圧縮場を作る岩脈同士の力学的相互作用に貢献し,マグマ供給系の構造や時間発展を支配する.


図左 岩脈が周辺に及ぼす応力場(高田1994a).

岩脈の役割マグマの移動・蓄積・噴火を支配している.マグマ供給系の基本要素であり,火山のバリエーションや時間発展に重要な役割を果たす.過去の岩脈の配置は,将来の貫入時期や位置に影響をあたえるので,火山の将来予測に寄与する(Takada, 1997; 1999).長期では,地殻の進化にも貢献.例えば,海洋地殻はが岩脈群の集合である.地球史からいえば,1000-2500kmの水平規模の岩脈は,大陸の分裂にも寄与している.広がる岩脈の世界

相互作用:外環境との相互作用が強いので,地震や地殻変動の応力変化をトリガーとしてマグマの移動が促進されたりすることもありうる.岩脈貫入は,固まりかけた珪長質マグマ溜まりの破壊や噴火を誘発する可能性もある.岩脈蓄積による応力は,地震や山体不安定を増長する.岩脈周囲の壁との熱的,物質的な相互作用もありうる(Bruce and Huppert, 1990).

最近の噴火:三宅1983年噴火,大島1986年噴火,1989年伊豆東方沖噴火,雲仙1990-1994年噴火,有珠2000年噴火,三宅2000年噴火, などのすべての噴火をもたらしたマグマの移動には岩脈が使われた.

地球科学:火山学,岩石学,地震学,地熱,鉱床学に関与している.地球内の流体の移動には不可欠な仕組みである.

国際会議International Dyke Conferenceは4年に一回開催されている.第4回2001は南アフリカ.第5回2005はフィンランド.

マグマ上昇の文献