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マグマで満たされたクラック(岩脈)によるマグマ供給系

マグマ供給系:マントルから地表までのマグマの通路.マグマの移動・蓄積・噴火などの過程を含む."magma plumbing system", "magma feeding system","magma supply system"という.

相互作用:マグマで満たされたクラック(岩脈)の研究は,周囲の環境と相互作用するので,岩脈を道具として,火山システムや地球システムの研究に発展できる.力学的な相互作用は,貫入・噴火や地震などと関係している.物質的な相互作用は,地殻や火山体の成長に関与している.化学的な相互作用は,火山や地殻の化学進化に関与している.岩脈を知ることにより,大げさにいえば地球を知ることができる.井戸の中の蛙は,井戸の水位や組成を通して,地球を知っている.

岩脈による移動:マグマで満たされたクラック(岩脈)の移動,停留(マグマ溜り),噴出の基本的な仕組みは,浮力と応力勾配などの駆動力できまる(Takada, 1989),一般には,マグマ溜りは,浮力によるクラックの駆動力がなくなる,マグマと母岩の密度が釣り合う深さ(浮力中立点)に形成されると考えられている(例えば,Ryan ,1987).地殻変動の応力源として,また,地震観測より,マグマ溜りの位置や規模が推定できつつある.揮発性成分を含んだマグマやそれの発泡により浮力を新たに確保したマグマは,さらに地表に向かって上昇できる.また,逆に,揮発性成分を失ったマグマは,マグマ溜りに蓄積されいく.実際の地殻では,浮力に応力勾配が加わり,マグマが横に移動したり,斜めに移動したりする.


図上 噴出量/供給量の推定(Takada ,1999).海嶺の火山活動は,海洋地殻の断面より,Kilaueaは,噴出量と地殻変動から推定された供給量より,他は,岩脈群の水平規模と厚さより.

噴出量と貫入量:火山は氷山の一角である.一般には,噴出量に比べて貫入量はずっと多い.貫入量と噴出量の比については,Takada(1999)で実例を編集した(上図).KilaueaやIcelandの火山では,長時間平均で噴出量の2-3倍から数倍が地下に貫入している.海洋地殻の断面から推定すると,枕状溶岩の噴出量の10倍程度が岩脈とはんれい岩として地殻に蓄積されている.火山ガスの観測からも地下での多量のマグマの蓄積が推定されている(例えば kazahaya et al., 1994).洪水玄武岩では,岩脈の貫入体積に比べて噴出量(10-1000 km3)は極めて多い(Takada,1999).例えば,長さ100kmの岩脈体積は1km3;長さ1000 kmの岩脈体積100km3.Overshoot (Lister and Kerr, 1991; Takada, 1999)の可能性がある.

岩脈によるマグマの移動と化学組成移動中の岩脈からの結晶の分離,あるいは岩脈の固結,岩脈の壁の融解,岩脈同士の連結は,マグマの化学組成を変化させるで,マグマ自体の物性も変化させる.層状液体溜りから岩脈を使って2種の流体が移動する挙動やその混合過程は,Koyaguchi and Takada (1994)の実験的研究がある.先駆的なより低粘性マグマの岩脈貫入が珪長質マグマの噴火を支配する(Takeuchi and Nakamura, 2001; Takeuchi, 2004).

図右 岩脈を素過程としたマグマの移動とマグマ供給系

マグマ供給系と火山の構造:すると,マグマ供給系は,マグマで満たされたクラック(岩脈)の集合体である.岩脈同士,火山同士,海嶺同士など様々な時間空間規模で,岩脈同士の力学的相互作用が起こる(Takada, 1994a).岩脈はその周辺に延長方向に引力と直交方向に斥力を及ぼすので,様々な相互作用がうまれる.岩脈同士が連結してその体積を増やすこともできるので,マグマの集積に寄与できる(Takada, 1994c).差応力が大きければ,相互作用は小さくなり平行な岩脈群が,マグマの供給が大きければ相互作用大で,放射状岩脈群が発達する.岩脈の向きと広域応力場の関係は, Nakamura (1977)の研究がある.マグマ供給系の力学的形状は,応力場と岩脈(クラック)の供給率で決まる.すなわち,複成火山と単成火山のバリエーションや発達史もこれらに支配されることになる(Takada, 1994b).隣接する複数の火山は,互いに応力を及ぼしあい火山同士の相互作用を起こしている可能性が指摘されている(高田,1994a).Kilauea火山とMauna Loa火山や,Nyamuragia火山とNyiragongo火山はその候補である.組成進化を考慮すれば,火山のバリエーションは,岩脈に対する境界条件で決まる.境界条件は,マグマ供給率(x,t)すなわち岩脈の供給率,地殻構造(海洋地殻,大陸地殻,島弧)つまり,密度,物質,温度そして,応力・変位(広域・局所)からなる.

図右 岩脈を素過程としたマグマ供給系の時間発展.岩脈蓄積による応力が,脆性破壊,塑性変形などにより緩和されないと,負のフィードバックが作用して,マグマ供給を制御する(紫の矢印).このとき,準安定火道形成(中央),バイパスの形成(左),マグマ供給抑制と蓄積(右)などがおこる.

時間発展:マグマ供給系と火山体は,多くの岩脈からできている.岩脈の相互作用を応用すれば,n番目までの岩脈の配置とそれによる応力を緩和する仕組みがわかれば,n+1番目の岩脈の貫入位置が予測可能である.場合によっては,噴火様式,噴火間隔などにも影響を与えている可能性がある.すなわち,マグマ供給系と火山体内の応力緩和機構のバリエーションが,火山の時間発展を決めている.応力緩和機構は,広域応力の違い,塑性変形の程度,有効な断層系などに支配される.特に,火山体内部の緩和機構を,自己制御機構(作用)と名付け,と広域テクトニクスと区別しておく.この仕組みを知るのに,複成火山の割れ目噴火位置の時間変化はよい指標となる(Takada, 1997),噴火位置,噴出量・貫入量などの時系列を噴火時系列として整理すると,自己制御機構をモデル化したマグマ供給系の仕組みが見えてくる(Takada, 1999).マグマ供給量を制御する負のフィードバックもあり得る.Hawaiiの例.


KilaueaとMauna Loa (Hawaii)の噴火時系列図(1800-2000)(図上)

図 上は,Mauna Loaの割れ目噴火位置の時間変化.中は,Kilaueaの割れ目噴火位置の時間変化.下は,KilaueaのHalemaumau火口の溶岩湖の高度変化 Loaの割れ目噴火位置の時間変化.中は,Kilaueaの割れ目噴火位置の時間変化.下は,KilaueaのHalemaumau火口の溶岩湖の高度変化.高田(2001)より.

ホットスポットの火山(図下)

岩脈の貫入距離,マグマ噴出量と供給量,それらの比

図 マグマ供給系の時空分配を表す時系列図(Takada, 1999).Kilauea(Hawaii) (1900-2000), Kirafla (Iceland)(1970-1990). 岩脈の貫入距離が収斂するに従って,マグマの供給量は下がり,噴出量/供給量比はあがる.最終的には,中心での規模の大きい噴火か連続的な噴火に移行する.


地殻拡大と重力崩壊:地殻拡大するには,水平方向か垂直方向しかない.水平方向は岩脈を使う.極端な場合が海嶺である.山体周辺の重力場による断層系を利用した拡大機構は,ハワイなどの海洋島で起こっている.垂直方向の拡大機構は,地殻を厚くする方向に寄与する.また,マグマ供給系が重力崩壊して再
構成されることがある.集積された沈積岩,ガスが抜けたマグマ,固まったマグマなどは重いので,マグマ供給系内での重力崩壊の不安定が起こる可能性がある.溶岩湖のドレーンバックもその一つである.崩壊したマグマや沈積岩は,マグマ供給系のより下部か,火山体の外のより引張場な地域に応力勾配を利用して引き込まれていく.玄武岩質火山の場合,移動する体積が大きければ,地表にカルデラが形成される.これらの長期のマグマ供給系の拡大機構と噴火時系列の関係は,高田(2001)で議論されている.

図右 岩脈による地殻拡大

文献(高田発表)