富士火山の研究


富士山登山観察ガイド

日本の第4紀火山データベース(富士山)

[05.6.16] 新情報:文章改訂,文献追加

富士火山の特徴:日本の最高峰3776mである.富士山周辺には47万人が住んでいる.年間のべ約30万人の登山者が,3000万人の観光客が訪れる火山である.その特徴は?(1)玄武岩質で大きい.山体体積は約500-400 km(2)爆発的噴火をする時期がある.山頂での爆発的噴火の結果,急な斜面をもつ高い山ができ,プリニー式噴火や火砕流などによる噴火災害や、山体崩壊や泥流などの多様な災害が起こる危険性がある.爆発的噴火があると,火山灰が遠方にまで降下し災害の及ぶ範囲も拡大する.(3)噴火規模・間隔・場所が様々である.噴出量が1km3をこえる大きい噴火が時々起こる.一方,現在の状態のように静穏な時期が続くこともある.このように噴火規模・噴火間隔が様々であると噴火予知が難しくなる.宝永1707年の爆発的噴火以後,火山活動が静かになっている.

噴火史歴概略:噴火史に関しては,例えば,津屋(1968), 町田(1977),上杉(1998;2003),宮地(1988)などの研究がある.富士火山は,小御岳火山をおおって,およそ10万年前から成長したと考えられている.富士火山は複数の山体崩壊をへて現在の形を作っている.紀元前18000年頃には田貫湖岩屑なだれが発生した;これによる地形が,津屋の古富士火山と新富士火山を分ける不整合に相当する(山元ほか,2005)(津屋の新富士旧期)紀元前15000年頃から紀元前6000年頃:山頂噴火と山腹噴火から,多量の玄武岩質溶岩流を噴出した(宮地,1988;山元,2005).紀元前6000年頃から4000年頃:比較的火山活動が鈍化.(新富士中期)紀元前4000年頃から紀元前1600年頃:現在の富士山の山頂部はこのころに形成.山頂噴火と山腹噴火.火砕流も発生.(新富士新期前半)紀元前1500年頃から紀元前200年頃:山頂での爆発的噴火が卓越.プリニー式噴火,火砕流.紀元前800年ー1000年頃に,御殿場岩屑なだれが発生.(新富士新期後半)紀元前200年頃以降:山腹噴火のみ.西暦800年-1000年頃は,割れ目噴火が頻発.最後の噴火は,1707年宝永噴火.1707年以降,約300年間静穏.

産総研の地質総合研究富士火山に関する中長期将来予測の基礎データを得るために,時間変化する様々な指標で富士火山の活動を定量的にとらえるとこが重要である.産総研・地質調査総合センターでは,様々な角度から,富士火山を見直している.富士山に関する地質のプロジェクトは,5万分の1地質図幅「富士宮」(平11-15),富士山図幅(平13-17),科学振興調整費「富士火山の総合的研究と情報の高度化」の中のテーマ「噴火様式の進化」(平13-15).地表踏査だけでなく,掘削,トレンチ,山頂の崖調査を併用し,年代測定,テフラ分析,化学分析の技術を使い,定量的な噴火史を明かにしている.レビューは,産総研シリーズ「火山ー噴火に挑む」(丸善)や地質ニュースの富士山特集(2003)参照.津屋(1968)の地質図をふくむ既存文献は,CD-ROMに編集されている(地質調査総合センター,2002)(中野・石塚編集).産総研では,得られた富士火山に関する基礎データを,内閣府のハザードマップ検討委員会にも提供した.地質標本館での一般普及活動(石塚ほか,2003)にも参加している.

定量的な噴火履歴:産総研では,地質


調査とトレンチ調査により得られた,炭化物の放射性炭素同位体による年代測定により,定量的な噴火史を明らかにしました.年代値のDBも発表(山元ほか,2005).上記の方法には分析誤差と暦年代補正誤差があるため,この欠点を補充する意味で,年代が既存の広域的な火山灰との層位関係も注目している.伊豆諸島,神津島838年天上山噴火起源の火山ガラスの同定と富士山での層位についての研究が行われている(小林ほか,2005学会発表).

歴史時代の噴火新情報BC200年以降で,これまで噴火年代が不明であった噴出物の噴火年代が明かとなりつつある.例えば,上記の定量的な噴火履歴調査より,西暦800年-1000年頃は,割れ目噴火が頻発した.割れ目火口列の方位も,西暦850年頃を境に,北西ー南東方向から,南北にシフトした(高田ほか,2005学会発表).北山腹の剣丸尾第1溶岩・剣丸尾第2溶岩と南山腹の不動沢溶岩・日沢溶岩は,AD1000年頃に南北の割れ目から噴火した.また,南東や東山腹では,新たな溶岩流が発見され,その年代も明かとなってきている.宝永噴火以前で一番新しい年代を示す溶岩は,須山胎内溶岩流で,平安後期の西暦1050-1200頃の測定結果がでている.右図参照(高田,2003).


山頂噴火;爆発的噴火を山頂で繰り返したBC200-1500年頃の噴火履歴を火口内と火口壁の調査で明らかにした(石塚ほか,2003; Ishizuka et al., 2004).爆発的的噴火以外に,非爆発的噴火や溶岩湖の存在も認められた.山頂部の噴出物と山麓の降下スコリアとの対比も進められている.また,不整合の調査が大沢源頭部で行われている.

山腹噴火:割れ目噴火が頻発する方向は北西ー南東である.しかし,時期によっては,これと斜行する方向や直交する方向でも割れ目噴火が起こっている.割れ目噴火は,新富士火山旧期,中期,新期ともにそれぞれ山頂から13.5km程度の距離までの範囲内で割れ噴火が発生している.産総研では,山頂噴火に比べて情報の少ない山腹噴火に注目し,トレンチ調査を行い,噴火年代,噴火場所,噴火様式などを明らかにした.月刊地球の号外48”富士火山の総合的研究”(2004)に中間報告が掲載されている(高田ほか,石塚ほか,鈴木ほか).


図左 新富士火山の噴火割れ目(高田,2003).

図右 調査結果の例.5000年間の噴出量,噴火位置,噴火の爆発性に関する時系列図(高田ほか,2004).様々な時間変動が認められる.1707年宝永噴火の前後は静穏期(青色の範囲)が続く.

噴火様式:富士火山は,山頂だけでなく山腹でも,大室山の噴火や宝永噴火のように爆発的な噴火(サブプリニー式,プリニー式)が起こることがある.西山腹では,火砕流堆積物や山体崩壊による岩屑なだれ堆積物の特定が行われ,成因モデルが提案されている(山元ほか,2002;Yamamot et al., in press).

マグマ供給系:ステージごとのマントルからマグマ供給系までの進化過程が研究されている(富樫ほか,1991).定量的な噴火史に基づいたマグマ供給系の復元の準備も行っている.


誌上発表(年代順)

富樫茂子,宮地直道,山崎晴雄(1991)新富士火山初期の大きなソレアイト質マグマだまりにおける結晶分化,火山,36,269-280.

富樫茂子,宮地直道,安井真也,角田明郷,朝倉伸行,遠藤邦彦,鵜川元雄(1997)古富士火山末期から新富士火山にわたるマグマの組成変化ー富士吉原火山活動観測施設のボーリングコアの岩石化学的性質,42,409-421.

安井真也,富樫茂子,下村泰裕,坂本晋介,宮地直道,遠藤邦彦(1998)富士火山・1707年降下火砕堆積物中の斑れい岩質岩片の岩石学的性質とその起源,43,43-59.

高田亮 (2000) 玄武岩質火山の比較研究からみた富士火山の進化段階,月刊地球,254,529-539.

高田亮,山元孝広 (2000)富士宮地質図幅による富士火山調査計画,地質調査所月報,51,451-457

富士火山地質図(CD-ROM)(津屋(1968)の数値地質図)(2002),地質調査総合センター

山元孝広,高田亮,下川浩一 (2002) 富士火山の岩屑なだれ,月刊地球,279,640-644

山元孝広 (2002)富士山の火砕流,2003, AIST Today, v#, n#, ##

高田亮(2003)富士山の地質総合的研究:進化する火山の中長期予測のために,2003, AIST Today, v3, n10, 14

高田亮,山元孝広 共著(2003) 第4章 進化する富士火山,産総研シリーズ「火山ー噴火に挑む」,丸善,205-256

石塚吉浩,高田亮,中野俊(2003)標本館特別展「富士山 現在,過去,未来」,地質調査総合センター研究資料,395; 396

高田亮 (2003) 富士山とは,富士山特集 地質ニュース,590,14-16.

石塚吉浩,高田亮,中野俊,河村幸男,谷田部信郎 (2003) 富士山はどんな活動をしてきたか?ー富士火山の活動史ー,富士山特集 地質ニュース,590,17-22.

石塚吉浩,中野俊,高田亮,須藤茂 (2003) 富士山の地質見学案内,富士山特集 地質ニュース,591,1-4.

石塚吉浩,中野俊,高田亮,須藤茂,吉本充宏,谷田部信郎 (2003) 富士山模擬登山ーパソコンでみる富士火山地質観察ポイントー,地質ニュース,591,16-18.

高田亮,石塚吉浩,中野俊,小林淳,鈴木雄介,荒井健一,千葉達朗(2004)富士火山の噴火様式の進化(予報),月刊地球,号外48,108-117.

鈴木雄介,高田亮,石塚吉浩,小山真人 (2004)トレンチ調査による新期富士火山北西山腹の噴火史,月刊地球,号外48,118-123.

高田亮 (2005) 富士山の地質総合的研究:進化する火山の中長期予測のために,産総研技術開発カタログ,丸善, 730-731.

山元孝広,高田亮,石塚吉浩,中野俊(2005)放射性炭素年代測定による富士火山噴出物の再編年.火山,50, 53-70.

Yamamoto, T., Takada, A., Ishizuka, Y., Miyaji, N., Tajima, Y. (2005) Basaltic pyroclastic flows of Fuji volcano, Japan: characteristics of the deposits and their origin,Bull. Volcanol. 67, 622-633.

山元孝広,石塚吉浩,高田 亮(2007)富士火山南西麓の地表および地下地質:噴出物の新層序と化学組成変化.荒牧重雄,藤井敏嗣,中田節也,宮地直道編集,山梨県環境科学研究所,97-118.

高田亮,石塚吉浩,中野俊,山元孝広,小林淳,鈴木雄介(2006)噴火割れ目が語る富士火山の特徴と進化.荒牧重雄,藤井敏嗣,中田節也,宮地直道編集,山梨県環境科学研究所,183-202.

山元孝広,石塚吉浩,高田 亮,宮地直道,田島靖久(2007)富士火山西斜面で発生した玄武岩質火砕流の特性とその起源.荒牧重雄,藤井敏嗣,中田節也,宮地直道編集,山梨県環境科学研究所,245-254.

高田亮,中野俊,小林淳(2007)巻頭言:特集「トレンチ調査による富士火山の噴火史の高精度化」,地質調査研究報告,57,11/12,327-328

高田亮,小林淳(2007)富士火山南山腹のスコリア丘トレンチ調査による山腹噴火履歴,地質調査研究報告,57,11/12,329-356.

石塚吉浩・高田 亮・鈴木雄介・小林 淳・中野 俊(2007)トレンチ調査から見た富士火山北~西山腹におけるスコリア丘の噴火年代と全岩化学組成.地質調査研究報告,57,11/12,357-376.

鈴木雄介・高田 亮・石塚吉浩・小林 淳 (2007)トレンチ調査による新期富士火山北西山腹の噴火史の再検討.地質調査研究報告,57,11/12,377-386.

中野俊,高田亮,石塚吉浩,鈴木雄介,千葉達郎,荒井健一,小林淳,田島靖久(2007) 富士火山,北東麓の新期溶岩流及び旧期火砕丘の噴火年代.地質調査研究報告,57,11/12,387-408.

Kobayashi, M. Takada, A, and Nakano, S. (2007) Eruptive history of Fuji Volcano from AD 700 to AD 1000 using stratigraphic correlation of Kozushima-Tenjosan Tephra, Bull. Geol. Surv. Japan, 57, 11/12, 409-4##.

学会発表

山元孝広,高田亮,宮地直道 (2001) 富士火山形成史の再検討:南西山腹でのボーリング掘削調査,地球惑星科学関連学会2001年合同大会.

山元孝広,高田亮,石塚吉浩,宮地直道 (2002) 富士火山西~南西斜面で発生した玄武岩質火砕流の特徴とその起源,地球惑星科学関連学会2002年合同大会.

高田亮,山元孝広,石塚吉浩 (2002) 富士火山の噴火割れ目の特徴,地球惑星科学関連学会2002年合同大会.

石塚吉浩,山元孝広,高田亮,中野俊 (2002) 新富士火山の山頂噴火堆積物の層序と特徴,地球惑星科学関連学会2002年合同大会. 

小林淳,高田亮 (2003) 富士火山南斜面に分布するスコリア丘及び溶岩流の噴出時期,地球惑星科学関連学会2003年合同大会. 

Takada, A., Yamamoto, T., Ishizuka, Y., Nakano, S. (2003) Eruptive fissures during the last 2000 years of Fuji volcano, Japan, Cities on Volcano, Hawaii.

石塚吉浩,山元孝広,高田亮,中野俊 (2003) 新富士火山の山頂噴火堆積物の層序と特徴,地質学会.

小林淳,高田亮,鈴木雄介,石塚吉浩,中野俊 (2004) 富士火山の噴火特性を解明する上での広域テフラの重要性,第四紀学会.

高田亮,石塚吉浩,中野俊,小林淳,鈴木雄介,荒井健一,千葉達朗 (2004)富士火山の過去5000年間の噴火様式の進化(予報),火山学会秋季大会.

石塚吉浩,高田亮,鈴木雄介,小林淳,千葉達郎 (2004) 富士火山北西北山腹に分布する火砕丘と溶岩流の噴出時期.火山学会秋季大会.

中野俊,高田亮,石塚吉浩,鈴木雄介,千葉達郎,荒井健一,小林淳,田島靖久 (2004) 富士山北東麓のトレンチ調査,火山学会秋季大会.

鈴木雄介,高田亮,石塚吉浩,小山真人(2004)トレンチ調査による新期富士火山北西山腹の噴火史,火山学会秋季大会

小林淳, 萬年一剛,奥野充,中村俊夫,高田亮 (2004) 箱根火山大湧谷テフラ群の噴出年代ー神津島天上山テフラの層位と14C年代ー,火山学会秋季大会.

Ishizuka, Y., Yamamoto, T., Takada, A., Nakano, S. (2004) Characteristics of basaltic ejecta about the summit area of Fuji Volcano, Japan, IAVCEI meeting.

小林 淳・高田 亮・鈴木雄介・中野 俊・石塚吉浩 (2005) 神津島天上山テフラの同定と富士火山起源噴出物との層位,地球惑星科学関連学会 2005年合同大会 V055活動的火山.

高田 亮・石塚吉浩・中野俊・山元孝広・鈴木雄介・小林 淳 (2005) 富士火山西暦800-1000年頃に頻発した割れ目噴火群ー14C年代と神津島天上山テフラの層位からー,地球惑星科学関連学会 2005年合同大会 V055活動的火山.

Takada, A., Mannen, K., Ukawa, M., and Chiba, T. (2007) A3: Fuji and Hakone volcanoes. Field Trip Guidebook, Cities on Volcanoes 5 Conference, Shimabara, Japan 2007, 41p.

Takada, A., (2008) Fuji Volcano. In 2008 APEC Training Course Field Seminar, Nov.20-22, 2008 (Maruyama,T., and Takada, A.) (CD version), 2008.


Takada, A., and Azuma , T., (2012) Guidebook for the G-EVER1 Field Trip: Fuji volcano and Active faults. 34 p. Geological Survey of Japan, AIST.