どんなものが燃えている? of 金属スクラップの安全管理情報提供システム


001.png

005.png


006.png

HOME > どんなものが燃えている?

どんなものが燃えている?

火災現地調査

2008年-2010年に発生した4件の火災について現地調査を実施ししました。

2008.3.発生事例(門司沖)

 カンボジア船籍の貨物船(1,195t)が,尼崎港にて金属スクラップ753tを積載し,出港後約30時間経過した時点(門司沖航行中)で,船倉内前方から白煙を発生して出火しました。船倉への海水注入および船体冷却により消火した事例です。

 消火後,船倉内前方に積載された金属スクラップをクレーン車などにより除去したところ,船倉前面に変色が認められ,比較的深い位置からの出火と推測されましたが,発火源と思われる物件は確認できませんでした。
 積荷の金属スクラップ中には,バッテリー,パソコン類,家電類,電線類,灯油タンク,プラスチック類が含まれていました。

2008.10.発生事例(大阪港内)

 カンボジア船籍の貨物船(1,215t)が,大阪港内の岸壁に着岸し,金属スクラップ約100tを積み込んだ時点で出火しました。クレーンによりスクラップを岸壁上に陸揚げして消火した事例です。

 消火後にヤードに保管されていた金属スクラップを調査しましたが,発火源と思われる物件は確認できませんでした。
 積荷の金属スクラップには,バッテリー,コード類,樹脂類が含まれていました。

2009.6発生事例(阪南港内)

 カンボジア船籍の貨物船(1,483t)が,阪南港内の岸壁に着岸中に出火した事例です。貨物船は,火災発生の前日に金属スクラップ約800tを積み込み,翌日積込みを再開する予定として一旦荷役を中断し,ハッチを開放したままにしていたところ,深夜になって船倉内から出火したもので,クレーンにより一部スクラップを岸壁上に陸揚げしながら消防,海保により消火しました。

 消火後に,焼損した船倉内の金属スクラップを調査しましたが,発火源と思われる物件は確認できませんでした。
 積荷の金属スクラップには,プラスチック類,エアコン室外機(アルミラジエータ),灯油タンク,電池が含まれていました。

2010.2.発生事例(千葉港内)

 カンボジア船籍の貨物船(1,496t)が,千葉港内の岸壁に着岸中に出火した事例です。貨物船は,金属スクラップ約700tを積み込んだ時点で,船倉中央部に山積みにしたスクラップを重機で均した部分から発煙を認めたことから,発煙部を岸壁上に陸揚げして消火しました。

 この火災は,乗組員の消火作業により短時間で鎮火されました(消防,海保職員の現場到着時にはすでに鎮火ずみでした)ことから,ほとんど延焼がなく,発煙は廃ゴルフカート(屋根,シート,エンジン,燃料タンクを取り外した車体下部)からであったことがほぼ特定されました。

 消火後,荷主のヤードに保管されていたゴルフカートを調査しましたところ,バッテリー架台付近のケーブル類の焼損が最も強く,それ以外の場所はほとんど燃えていませんでした。このため,火災の原因はバッテリー架台付近のケーブルに何らかの要因で瞬間的に着火したことによると考えられます。また,バッテリー架台の近くにはオイルタンクがあり,蓋が開いて油が漏出していましたことから,ケーブルには漏出した油が付着していた可能性があります。なお,この油を採取して分析したところ潤滑油でした。

 この事例について,火源としては次の可能性が考えられました。

1.金属どうしの接触による火花
 発煙の直前に廃ゴルフカートを重機で移動する作業をしており,この衝撃で火花が発生した可能性が考えられます。潤滑油の引火点は一般的に高く,ケーブルは難燃性であることから,火花では容易に着火しませんが,可能性は否定できません。

2.バッテリーの短絡
 現場調査時には,廃ゴルフカートのバッテリー架台にバッテリーはありませんでしたが,架台の状態や各端子の残存状況から出火時にはバッテリーがあったことが推測され,消火作業などに伴って重機で移動した際に脱落した可能性が考えられました。廃ゴルフカートにバッテリーが設置された状態だったと仮定しますと,発煙直前の重機作業でバッテリー電極端子付近に金属が接触して短絡がおこり,スパークが連続的に発生し,ケーブルに着火するだけのエネルギーを発生した可能性が考えられます。

2010.4.発生事例(新潟港内)

 中国船籍の貨物船(1,590t)が,新潟港内の岸壁に着岸中に出火した事例です。火災発生の前日に船倉に積み込んだ金属スクラップ約600tの上に重機を乗せ,スクラップをならす作業をしていたところ,重機が通ったところから発煙したもので,重機などにより一部スクラップを岸壁上に陸揚げしながら放水消火しました。

 消火後に焼損したスクラップを調査しましたところ,配電盤や電線類が多く含まれ,家電製品,樹脂類,灯油タンクも混在していました。関係者から聞き取りの結果,出火元は重機の下にあった無停電電源装置(UPS)であるとして,焼損の激しいUPSと思われるものが示されました。このUPS付近には鉛バッテリを確認できませんでしたが,スクラップの中には他にもUPSの混在が確認され,鉛バッテリが付属していました。また,消火の際に燃えているスクラップを重機で移動していることから,示されたUPSは消火中に鉛バッテリーが外れたものである可能性が高く,この火災の原因は重機によりスクラップをおしたために,混在していたUPSの鉛バッテリが短絡して火花を発生し,周囲の可燃物に引火したものと考えられます。

2010.4.発生事例(東京港内)

 カンボジア船籍の貨物船(1,494t)が,東京港内の岸壁に着岸中に出火した事例です。トラックから重機で直接船倉に積み込む方法で金属スクラップ約700tを積み込んだ時点で船倉内のスクラップから発煙を認めたものです。重機により一部スクラップを岸壁に陸揚げしながら消防,海上保安庁により消火しました。この火災では,放水消火のほか,高発泡タイプの泡消火を行いました。

 消火後に陸揚げされた焼損の激しい部分を調査しましたところ,スクラップ中には,モータ,ラジエータなどが多く含まれ,トナーを含むプリンタやUPSと思われるもの(バッテリ付属)が混在していましたが,出火元は特定できませんでした。

2010.6.発生事例(横浜港内)

 カンボジア船籍の貨物船(1,193t)が,横浜港内の岸壁に着岸中に出火した事例です。船倉に金属スクラップ約700tを積み込んだ時点で夕刻となり,明朝再開する予定で一旦作業を中断し,ハッチを開放したままにしていたところ、深夜になって異臭がし,スクラップからの発煙を認めたものです。重機により一部スクラップを陸揚げしながら消防,海上保安庁により消火しました。

 消火後に陸揚げされた焼損の激しい部分を調査しましたところ,スクラップ中には,モータ,ラジエータなどが多く含まれ,焼け焦げた電池類が混在していましたが,出火元は特定できませんでした。

 本事例の調査時には,船倉の金属スクラップがすべて岸壁上に陸揚げされた状態であったことから,船倉内を調査しましたところ,出火場所と推測される位置の船倉底部に小さな穴がいくつかあいていました。関係者によると,これらの穴は出火前にはなかったもので,重機が傷つけたものでもないとのことでした。穴の辺縁は溶けてつららのように垂れ下がっており,また,周囲に溶けた金属片が落ちていました。

クリックすると拡大します。