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サリチェフ火山の概説 Saryhev Peak 

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サリチェフ火山の概説

サリチェフ火山(注1)は,中部千島マツア島に位置する標高1496m(注2)の活火山である.マツア島は径12×6kmの北西-南東方向に延びた楕円形をなし,島のほぼ中央にサリチェフ火山がある.噴出物の岩質は玄武岩~安山岩である.
 サリチェフ火山は千島列島の中でも活動的な火山であり,18世紀以降の歴史時代に幾たびも噴火している.Gorshkov(1970),Simkin and Siebert (1994)によれば,1760年代,1878-79年,1923年,1930年,1946年,1954年,1960年,1976年,1986年,1989年に噴火したとされる.特に1946年11月に起こった噴火は規模が大きく,降下した火山弾及びスコリアが山頂火口から東山麓一帯を被覆し,植生が完全に破壊された.また北西海岸まで火砕流が流下したと報告されている.噴出物(火山弾)の組成はSiO2=54 wt.%の玄武岩質安山岩である(Gorshkov, 1970).噴火規模はVEI (Volcanic Explosive Index)=4と見積もられ(Simkin and Siebert, 1994),千島列島の20世紀における噴火では最大規模の噴火である.千島列島における同程度の噴火(VEI=4;噴出量で0.1~1km3)は,1924年ライコケ島,1973年国後島爺爺火山,1981年アライド島,1986年パラムシル島チクラチキ火山の4つの噴火が他に知られている.

(注1)サリュチェフと表記する場合もある.旧日本名は芙蓉山.
(注2)標高はGlobal Volcanism Programに従った.なおサハリン州20万分の1地形図(1994年発行)では標高1446m,陸地測量部5万分の1地形図(大正9年発行)では標高1485mとなっている.

サリチェフ火山の写真(クリックで拡大) Volcanoes in the northern Kuril Islands


 2008年,2007年,2000年にマツア島へ上陸する機会を得た.2008年及び2007年は山頂付近から白色噴煙があがるのを確認している.特に2007年は天候が良く噴煙が良好に見えた.白色噴煙はやや青みがかり,火山ガスの濃度が高いと推測された.同行したロシア人火山学者は夜半に火映現象が見えると述べていた.2000年は濃霧のため上陸前日に撮影した遠方写真のみだが,同様に山頂付近から白色噴煙があがるのを確認できる.

 マツア島東海岸壁には厚いラハール堆積物が認められ,土壌の発達,Gorshkov(1970)の噴火記録から1946年噴火に由来するラハール堆積物を含むと考えられる.また東海岸に認められる最上位の降下スコリア層(再堆積している)は1946年の噴火堆積物と推定される.マツア島は,日本領時代に飛行場が建設され,その後ソ連軍/ロシア軍が90年代まで駐屯していたが,現在では無人の島である.

 写真はIKIP2000KBP2007KBP2008の航海調査において撮影した.U.S. National Science Fundation (ARC-0508109; Ben Fitzhugh, PI), Univ. Washington, Sakhalin Regional Museum, Far East Branch of the Russian Academy of Sciences, 北海道大学,北海道開拓記念館の関係者各位,関係機関に感謝する.


サリチェフ火山の位置と地形