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テクトニック |
鉱床タイプ1 |
代表的鉱床区(鉱床例) |
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火山弧 |
斑岩銅・モリブデン・金鉱床2 スカルン鉱床 浅熱水性鉱床 (塊状磁鉄鉱鉱床) (マント型鉱床 |
ペルー南部〜チリ北部(Chuquicamata, Los Bronces-Rio Blanco), 米国南西部(Bingham) ペルー北部(Turmalina)米国・シエラネバダ(Pine Creek)インドネシア(Iran Jaya) チリ・エルインディオ帯(El Indio)フィリピン・ルソン島(Baguio)北海道(千歳,光竜) チリ北部(Buena Esperanza) |
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背弧 |
スカルン鉱床 多金属鉱床 浅熱水性鉱床 銀・錫・タングステン鉱床3 |
メキシコ・シエラマドレ(Providencia) メキシコ(Fresnillo),ペルー中部(Casapalca) ペルー中部(Julcani),九州(菱刈) ボリビア(Potosi, Llallagua) |
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火山弧関連 リフト |
浅熱水性金鉱床 火山性塊状硫化物・黒鉱鉱床 クライマックス型モリブデン鉱床 |
ニュージーランド・コロマンデル(Golden Cross)北海道(鴻ノ舞)
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このような斑岩銅鉱床と黒鉱鉱床の不均一な分布は,陸上成層(複成)火山活動と海底カルデラ火山活動という関連火成活動の様式の違いに起因する(Sillitoe, 1980).Uyeda and Nishiwaki
(1980)は,プレートの沈み込み様式を傾角の小さなチリ型と大きなマリアナ型に大別し,斑岩銅鉱床はチリ型沈み込みによる圧縮応力場で,黒鉱鉱床はマリアナ型沈み込みによる引張応力場で生成されるとしている(図1). 図1 スラブの傾角と火成弧での応力場・火成活動・鉱化作用の関係(Uyeda and Nishiwaki,
1980).a: マリアナ型(高角)沈み込み,b: チリ型(低角)沈み込み. このように沈み込み帯に伴う火成弧で生成する熱水性鉱床のタイプは,沈み込み様式,広域応力場,火成活動様式に大きく左右される.火成弧では,プレート間の収束速度・その他の要因に対応して火成活動域の位置や幅が変化し,背弧側でリフティングを伴うこともある.この結果,様々なタイプの鉱床が同じ地域に重複して分布することが普通である.表1に示される鉱床タイプや鉱床には火山弧,背弧および火山弧関連リフトとの区別が困難であるものも含まれている.ここでは比較的テクトニックセッティングが明瞭な東北日本弧,千島弧,チリ・アンデス弧の鉱床の例をもとに,プレートの沈み込み様式と鉱床タイプの関係について説明する. 2. プレートの沈み込み様式を規制する要因と上盤プレートの応力場 沈み込み帯での上盤プレートは,大局的には,沈み込む海洋プレートと大陸(または島弧)プレート間の収束速度が正になれば短縮変形し,負になれば引張変形する.しかしながら,実際には,プレート間の収束速度が一定である場合でも上盤プレートが部分的に短縮変形を起こしたり,引張変形を起こしたりする.このような変形様式の違いは,沈み込む海洋プレートの形態の違いによる上盤プレート内での不均一な応力場に起因する. 沈み込む海洋プレートの形態を決める主な要因は,@沈み込む海洋プレートと上盤プレート間の相対的な収束速度,A沈み込むプレートの年代,B堆積物の海溝での付加の有無,C非地震性海嶺や海底海山列,海膨の沈み込みの有無である(Cross and Pilger,
1982).火成弧直交方向のプレート間の収束速度が大きいほど,また沈み込むプレートの年代が新しいほど沈み込むプレートの傾角は小さくなる.密度の小さな堆積物や玄武岩からなる海嶺,海山,海膨が沈み込む場合にも傾角は小さくなる(図2). 図2 和達−ベニオフ帯の傾角(Uyeda and Kanamori,
1979を改変).破線部は地震がほとんど観測されていない部分.ペルー・チリ(30ºS)での低角沈み込みはNazca海嶺・Juan Fernandez海嶺の沈み込み,マリアナ・ソロモン・ケルマディック・ジャワでの高角沈み込みは古い年代(>100Ma)のスラブの沈み込みと小さなプレート間の収束速度による. 沈み込み帯では,一般に海溝から背弧側にかけて海洋プレートは上に向かって凸状の形態をしており,海洋プレートの傾角は背弧側に向かうほど大きくなる.この傾角の変化に伴い火成弧に直交する方向での圧縮応力は背弧側ほど小さくなり,結果として,広域応力場も海溝付近の圧縮応力場から背弧側での引張応力場へと変化する(Nakamura and
Uyeda, 1980).このような応力場の変化はベニオフ帯で発生する地震の発震機構にも表れており,現在のチリ北部(南緯22-25°)では海溝から120kmまでの部分で逆断層,120-180kmの範囲で横ずれ断層,それよりも東側では正断層系の地震が観測されている(Delouis et
al., 1996).しかしながら海洋プレートの傾角が小さく,海溝から背弧側にかけて海洋プレートが上に向かって凹状の形態をしているペルー南部やチリ中部地域では,火成弧の背弧側でも短縮変形が起こっており,逆断層系の地震が観測されている.これらのことは海洋プレートの傾角が小さいと海洋プレートと上盤プレートとの結合力が大きくなり,上盤プレートに圧縮応力場をもたらし,傾角が大きくなると結合力が小さくなり,上盤プレートに引張応力場をもたらすことを示す.ここでは海洋プレートの傾角をもとに,沈み込み様式を高角(マリアナ)型,中間型,低角(チリ)型に区分し(図2),それぞれの型の沈み込み帯に伴う火成弧での火成活動と鉱化作用の様式を以下に記述する. 3. 沈み込み様式と弧火成活動・鉱床タイプ 3.1高角型沈み込みと鉱化作用 高角型沈み込みの場では,火山フロントは海溝側に移動し,上盤プレートは引張応力場になる.中新世以降の北部メキシコ,中新世中−後期の千島弧南西部,中新世中期の東北日本弧,鮮新世以降のニュージーランド北部,現在の伊豆−ボニン弧,マリアナ弧や琉球弧(台湾近辺を除く)などが代表例である.これらの火成弧では火山フロントに沿ってカルクアルカリ質安山岩の火山活動が認められるが,その火山噴出物の量は背弧側での火山噴出物の量と比較するとわずかである.背弧側では,玄武岩と流紋岩〜デイサイトとのバイモーダル火山活動が卓越し,リフトやカルデラ・単成火山群が形成される.このうち珪長質火山活動には黒鉱鉱床や低硫化系浅熱水性金鉱床が伴われる.引張応力が大きくなると,珪長質火山活動は停止し,玄武岩のみの火山活動となり,これらの鉱化作用も認められなくなる.高角沈み込みの原因はプレート間の収束速度の低下が主要な要因であり,沈み込むプレートの年代が古いことも副次的な要因と考えられる. 3.1.1 中新世中期東北日本弧の黒鉱鉱床 ハワイ海山列のゆらぎの方向(Jackson et
al., 1975)を太平洋プレートの沈み込みの方向と仮定すると,東北日本弧と千島弧南西部での島弧に直交する方向での太平洋プレートとそれぞれの島弧との間の収束速度は図3に示すように変化する. 図3 東北日本弧(a)と千島弧(b)での中新世の島弧直交方向のプレートの収束速度の変化と火山活動・鉱化作用との関係.A: 安山岩火山活動,B: 玄武岩火山活動,D/B: デイサイトと玄武岩とのバイモーダル火山活動.R/B: 流紋岩と玄武岩とのバイモーダル火山活動. 東北日本弧では,収束速度が80mm/年以下になる16-13Maには,火山フロントが現在よりも海溝側に位置し(図4),沈み込みの傾角は現在より高角であったと推定される.この時期の安山岩火山活動は火山フロント付近に限定され,背弧側では広い範囲でデイサイトとソレアイト質玄武岩とのバイモーダル海底火山活動が活発化する(Ohki et al.,
1993).特に収束速度の小さくなる15-13.5Maには,玄武岩の噴出が活発となり,秋田や新潟堆積盆では1km以上の厚さの玄武岩溶岩が堆積する(Sato, 1994; 図3a, 4).これらの玄武岩の主成分化学組成は背弧海盆玄武岩と島弧ソレアイト玄武岩との中間的な特徴を持つ(Tsuchiya,
1990).この時期は東北日本弧の広い範囲が,北西−南東方向に伸張応力軸を持つ引張応力場であったと推定される(Sato, 1994).13Ma以降,プレート収束速度の増加と期を同じくして,火山フロントは背弧側に後退する.バイモーダル火山活動は約10Maまで継続するが(図3a),背弧側でのリフティングは停止し,火山活動は不活発になる.13Maから3.5Maまでは地層に変形がほとんど認められないことから,東北日本弧では,この期間,中間的な応力場であったと推定される(Sato, 1994). 図4 東北日本弧−千島弧会合部付近の中新世の火山フロントの位置,背弧でのバイモーダル火山活動域および主要な黒鉱鉱床と低硫化系浅熱水性金鉱床の分布.網掛部は1km以上の厚さの玄武岩分布域(Sato, 1994).濃灰色部はデイサイト〜流紋岩と玄武岩とのバイモーダル火山活動の領域,淡灰色部は安山岩・デイサイト〜流紋岩・玄武岩が共存する領域を示す.東北日本弧の火山フロントの位置はOhki et al.
(1993)による. 東北日本弧では中新世中期の背弧側でのデイサイト火山活動に伴って,南北約700kmにわたって約70余りの黒鉱鉱床が分布する(Sato, 1974).主要な黒鉱鉱床が集中する北鹿地域では,海底に形成されたカルデラ内での酸性火成活動に黒鉱鉱床が伴う(Urabe, 1987;
図5a).これらのカルデラ内にはデイサイト〜流紋岩質単成火山群が分布し,黒鉱・黄鉱・石膏−硬石膏鉱からなる鉱体は,これらの単成火山活動に伴って形成している(図5b). 図5 北鹿地域の地質と黒鉱鉱床の分布.a. 北鹿地域の地質図(中島, 1988).破線は推定されたカルデラ構造(Ohmoto et
al., 1983).b. 花岡−釈迦内地域の流紋岩ドームの分布と黒鉱・黄鉱・石膏鉱体の分布(Ohmoto et
al., 1983). 黒鉱鉱床の形成時期は,鉱床を胚胎する地層年代に基づき中新世中期であることが知られている(Sato, 1974).北鹿地域の主要な黒鉱鉱床は,玄武岩層を下盤に伴うもの(花岡,松峰,釈迦内,餌釣)と上盤に伴うもの(小坂,古遠部,相内,深沢,温川)に区分される.これらの黒鉱鉱床に伴う熱水性セリサイトは,13.6〜10.7MaのK-Ar年代を示す(Ohmoto et al., 1983; 山田ほか, 1988).北鹿地域で最も詳しく年代について研究されている釈迦内鉱床群(花岡・松峰・釈迦内)は,ナンノプランクトンによると約14Maから12Maの間に(佐々木・平山, 1983),浮遊性有孔虫によると約15Maに形成したと考えられている(堀越, 1987).松峰鉱床の熱水性セリサイトのK-Ar年代(13.6-13.1 Ma)はナンノプランクトンによる年代と調和的であるが,浮遊性有孔虫による見積もりより新しい.深沢,小坂,温川鉱床の熱水性セリサイトのK-Ar年代(12.5-10.7Ma)は,層序より推定される年代よりも新しく,黒鉱形成後の深成岩の貫入年代に類似することから,深成岩の貫入により若返っていると解釈される.鉱化作用後の火成活動の影響を受けていない西南北海道の黒鉱鉱床は15.4〜12.4Maの年代を示す(沢井・板谷, 1993).以上のことから東北日本弧の黒鉱鉱床は15-13.5Maの多量の玄武岩の噴出期を挟んで,ほぼ15.4Maから12.4Maの300万年の期間に珪長質火山活動に伴って形成されたと考えられる(図3b). 3.1.2 中新世中−後期千島弧の低硫化系浅熱水性金鉱床 東北日本弧とは逆に千島弧南西端では,約13Maから6Maにかけて太平洋プレートの収束速度が80mm/年以下に低下する(図3).この期間には千島弧の火山フロントは海溝側に移動し,千島弧背弧に位置する紋別−北見地域では,14-12Maにかけて浅海性の安山岩火山活動から陸上での単成火山群やカルデラを形成する流紋岩と玄武岩とのバイモーダル火山活動へと移行する(Watanabe,
1995; 図3b, 4).特に収束速度の小さくなる11Maから8Maにかけては,背弧側での流紋岩火山活動は停止し,玄武岩の単成火山活動のみが認められる(図3b, 6).8Maから6Maにかけて再び流紋岩の火山活動が活発になるが,6Ma以降,背弧での流紋岩の火山活動は急激に弱まり,現在の千島弧に沿った安山岩〜デイサイト火山活動が活発化する(Watanabe,
1995). この地域の玄武岩はソレアイト質で中間カリウム型の組成を持ち,12-10Maのものと6Ma以降のものは島弧ソレアイトの組成を持つが,9-7Maのものは背弧海盆玄武岩の化学組成を有する(Ikeda, 1998).流紋岩も玄武岩同様,中間カリウム型で未分化なNd-Sr同位体組成を示す(Takagi et al., 1999). 図6 紋別−北見地域の中新世中−後期の流紋岩・玄武岩および浅熱水性鉱床の分布と金鉱化作用の年代.鉱化年代はWatanabe
(1995)による. 紋別−北見地域には小規模な銅・鉛・亜鉛鉱床と共に低硫化系の浅熱水性金・水銀鉱脈鉱床が数多く分布する(Watanabe,
1995; 図6).浅熱水性金鉱床の分布は流紋岩の分布域とほぼ一致し,金鉱化作用の年代は流紋岩の火山活動場の移動と共に北から南へと新しくなる傾向が認められる.ただし,この地域での約11Maから8Maの流紋岩の活動停止に伴い,金鉱化作用もこの期間は認められず,鉱化作用は2時期に明瞭に区分される(図3b,図6). 3.2中間型沈み込みと鉱化作用:鮮新−更新世東北日本弧北端の浅熱水性鉱床の例 中間型沈み込みの場では火山フロントの大きな移動は起こらず,上盤プレートでの応力場も中間的となる.代表的な例としては,中新世後期〜鮮新世の東北日本弧,40-20Maのメキシコ,現在のチリ北部が挙げられる.これらの火山弧では,火山フロントに沿ってカルクアルカリ質安山岩の複成火山活動が顕著となる.背弧側でのリフティングやバイモーダル火成活動は起こらない.このような場では,複成火山の底部へのマグマの貫入に伴って,しばしばベースメタルに富む浅熱水性多金属鉱床(中間硫化系; Hedenquist et al.,
2000)や高硫化系・低硫化系金鉱床が形成される. 鮮新世の東北日本弧では島弧直交方向のプレート間の収束速度は80-100mm/年であり,鮮新世の火山フロントは現在とほぼ同じ場所に位置する.東北日本弧北端の西南北海道では,鮮新世から更新世にかけて,陸上の環境でカルクアルカリ安山岩からなる複成火山群が形成される.これらの火山は東西幅約80kmの火山帯の中で,北西―南東方向の火山列を形成する(Watanabe,
1990; 図7).個々の火山体は10〜数kmの直径を持ち,一般に火山フロント近傍では火山体の直径は小さく,デイサイト質の単成火山が伴われる.これらの安山岩の化学組成は中間カリウム型で,背弧に向かうに従い,Kに富み,Sr同位体比が小さくなる傾向が認められる. 図7 札幌−岩内地域の鮮新−更新世火山岩および主要な鉱脈鉱床の分布(渡辺, 2000を単純化). 複成火山体の中心付近にはしばしば明礬石・ディッカイト・パイロフィライト・ダイアスポア等の出現で特徴づけられる酸性変質帯,縁辺部には粘土・プロピライト・セリサイト変質帯が認められる(図8).酸性変質帯には,硫砒銅鉱やルソン銅鉱の出現で特徴づけられる高硫化系浅熱水性金鉱床(重田美国)が伴われることもある.火山体よりやや離れた位置にはセリサイト変質を伴い銀・銅・鉛・亜鉛・マンガンに富む多金属鉱床(稲倉石・大江・豊羽)や氷長石や方解石で特徴づけられる低硫化系浅熱水性金鉱床(轟)が伴われる(図7, 8a).手稲火山に伴われる手稲金・銅鉱床では,硫砒銅鉱と重晶石の卓越する高硫化系とセリサイトを伴う中間硫化系の鉱化作用が認められる.これらはいずれも鉱脈型鉱床であり,稲倉石・大江・豊羽・轟鉱床は横ずれ剪断断層に胚胎し,手稲鉱床では,火山中心から放射状に伸びる割れ目に鉱脈が胚胎する. 図8 札幌−岩内地域の鮮新世安山岩火山に伴われる熱水変質帯と鉱床.a. 火山体と熱水変質帯・鉱床との位置関係図.b. それぞれの火山の溶岩および変質帯のセリサイトのK-Ar年代. それぞれの火山における溶岩の噴出年代と鉱化作用との関係を見ると,噴出年代は随伴する鉱床の鉱化作用の年代とほぼ一致するが,豊羽・轟,稲倉石鉱床では,火山岩噴出後にも引き続き鉱化作用が継続している.一方,手稲鉱床では手稲火山の溶岩の年代よりも鉱化作用の年代の方がやや古い(図8b).このような火山と鉱床との位置および形成時期の関係から,豊羽鉱床では,無意根火山形成後に引き続き火山底に貫入したマグマから放出された熱水が,活動的な断層に流入し天水と混合することにより鉱脈が形成されたと推定されている(Ohta, 1995; 図9). 図9 無意根−豊羽マグマ熱水系の模式的断面図(Ohta, 1995を改変). この地域では,以上に述べた複成火山に伴われる鉱床とは別に,火山フロント付近の小規模な安山岩質複成火山やデイサイト質単成火山が卓越する地域に低硫化系浅熱水性金鉱床(千歳・光竜)が分布する(図7).これらの鉱床の関係火成活動は明らかにされていないが,鉱床の分布から見て規模の小さなデイサイト質貫入岩が関与している可能性が高い. 3.3低角型沈み込みと鉱化作用 低角型沈み込みは,沈み込む海洋プレートと上盤プレート間との相対的な収束速度の増加する地域(60-40Maのカナダ西岸−米国北西部−米国南西部−メキシコ,75-60Maのアラスカ−ユーコン地域),若い年代のプレートの沈み込んでいる地域(30-0Maの米国北西部−カナダ南西部),堆積物の海溝での付加が起こった地域(90-80Maの中央アラスカ帯,40Ma以降のアラスカ半島〜アリューシャン列島),非地震性海嶺や海底海山列の沈み込んだ地域(中新世後期以降のメキシコ南部,中新世後期以降のチリ中部,鮮新世以降のコスタリカ−パナマ境界部,鮮新世以降のフィリピンルソン島)に認められる.これらの地域には,@火山帯の背弧側への移動や火山活動空白域の形成,A噴出岩を主体とする火成活動から貫入岩を主体とする火成活動への変化,B火成岩の化学組成の変化,C逆断層や褶曲帯の形成,D地殻の厚化,という特徴が認められる.これらの現象はいずれも低角沈み込みによる圧縮応力場に起因する.これらの地域は,斑岩銅・モリブデン・金鉱床と高硫化系浅熱水性金鉱床の出現で特徴づけられる.以下に記述する新生代のチリ弧の斑岩銅鉱化作用は始新世後期と中新世−鮮新世の2時期に区分されるが,いずれも圧縮応力場への転換期に起こっている. 3.3.1 始生代後期北部チリ弧の斑岩銅鉱床 チリ弧では,始新世後期に生じたインカ造山運動に関連してペルー南部〜チリ北部にかけて数多くの斑岩銅鉱床が形成している(図10).インカ造山運動は,約49-35Maのプレート収束速度の増加(Pardo-Casas
and Molnar, 1987)と若い年代の海洋プレートの沈み込みが副次的な要因と考えられるが,ペルー南部〜チリ北部にのみこのような造山運動が起こった原因は解明されていない.チリ弧では,白亜紀から新生代にかけて火成弧の位置が徐々に背弧側に移動していることから,海洋プレートの沈み込み傾角が序々に小さくなったと推定されている. 図10 新生代チリ弧における斑岩銅鉱床区と斑岩銅鉱床の分布(Camus and Dilles,
2001を改変).( )は年代(Ma)を示す. チリ北部では後期始新世−前期漸新世の時期の火山岩はほとんど分布せず,貫入岩が卓越する.Potrerillos地域では少なくとも11の独立した貫入岩のうち,わずか1つにしか噴出岩が伴われていない(Marsh et
al., 1997).斑岩銅鉱床を伴う深成−貫入岩は,花崗閃緑岩からトーナル岩,モンゾナイト,石英モンゾナイトの組成を持ち,岩石化学的には,これらの岩石はカルクアルカリ質,メタアルミナ岩,高〜中K2O量で,すべてがIタイプで磁鉄鉱系列である.これらのマグマの希土類元素組成は高いLa/Yb値を持ち,分化の程度が大きく,厚い大陸地殻(>45km)の存在を示唆する(Camus and Dilles,
2001). 始新世後期(〜漸新世初期)の鉱床は42Maから31Maの約1,100万年の間に形成されており,その分布は横ずれ断層であるDomeyko断層系に平行に南北約1,200kmにも及ぶ(図10).それに対して東西幅は約30kmと極めて狭い範囲に収まる.斑岩銅鉱床の鉱化年代を詳しく見ると,40Maよりも古い鉱床はこの断層系よりも西側に分布し,40Maよりも新しいものは断層上,または断層よりも東側に位置する.鉱化作用の場の背弧側への移動速度は3 km/100万年と極めて小さい.南北方向では顕著な鉱化年代の違いは認められない.El SalvadorやLa Escondida鉱床では,鉱化作用の前後で貫入岩の平面的な伸張方向が東北東から西南西に変化している(図11).このことは,鉱化作用時に火成弧に直交する方向の応力が,最小圧縮主応力から中間または最大圧縮主応力に転換したことを示唆する.Potrerillos地域では,斑岩銅鉱化作用を受けた貫入岩が,鉱化作用最末期に始まった逆断層運動により変位している(図12).これらのことは,広域応力場が,より圧縮的な状態へと変化する過程で斑岩銅鉱化作用が起こったことを意味する. 図11 チリEl Salvador地域の暁新世−始新世貫入岩の形態.a. El
Salvador地域地質図(Gustafson et
al., 2001を簡略化).b. El Salvador地域の斑岩の形態と応力場の時代変遷. 図12 チリPotrerillos鉱床での地質断面図(Tomlinson, 1994原図).鉱化作用を受けた貫入岩はPotrerillos鉱山断層により約1km変位. 3.3.2 中新世−鮮新世北部−中部チリ弧の斑岩銅・金鉱床 現在チリ中部にはJuan Fernandez海嶺が沈み込んでおり,この海嶺の沈み込み領域から北側に沈み込みスラブの傾角が極めて浅くなる「フラットスラブ」地域が形成されている(Pilger, 1981;
図13).既に沈み込んだ海嶺の先端部分は北東−南西に折れ曲がっており,中新世前期〜中期にチリ北部で沈み込みを開始したと推定されている(Pilger,
1981).Juan
Fernandez海嶺の沈み込んでいるフラットスラブ地域は,第四紀の火山活動の見られない火山活動空白域(Pilger,
1981)や新生代後期の褶曲や逆断層による短縮テクトニクス,地殻の厚化(Kay et al.,
1999)で特徴づけられる. 図13 チリにおける中新世以降のJuan
Fernandez海嶺の位置と斑岩銅鉱床の分布. 北部−中部チリ弧の中新世−鮮新世の斑岩銅・金鉱床は,フラットスラブ地域縁辺部での火成活動に伴って形成されている.中新世前期〜中期の鉱床はチリ北部のMaricunga帯に,中新世後期〜鮮新世のものはチリ中部に分布し(図10),鉱化年代は北から南へと新しくなる傾向がある.いずれの地域においても,鉱化作用期には火成岩のSr同位体組成およびLa/Yb値が大きくなる傾向が認められる.アルゼンチンの斑岩銅鉱床も加味すると,この時期の斑岩銅・金鉱床は南北約900km,東西400kmの地域に分布する.鉱床の年代は南東部のものほど新しくなることから,Juan
Fernandez海嶺の沈み込みの場の移動と共に,鉱化作用の場も南東方向に移動したと推定される(図13). 4.
まとめ 第3章に述べた沈み込み様式と広域応力場,火成活動の様式,鉱化作用の様式の関係を図14に示す.ここでは便宜的に広域応力場を5段階に分け,それぞれの段階での火成活動および鉱化作用の様式について述べる. 図14 沈み込み様式・広域応力場・火成活動様式および鉱床タイプとの模式的関係図. 高角型沈み込みの場(図14a)では,火山弧に直交する方向の引張応力により,引張応力場が背弧側で形成される.水平面内での差応力が大きいため単成火山活動が卓越し,海底での流紋岩質〜デイサイト質単成火山活動には黒鉱鉱床が,陸上での活動には低硫化系浅熱水性金鉱床が伴われる.黒鉱鉱床は海底面に塊状鉱体として,低硫化系浅熱水性金鉱床は主として正断層や横ずれ断層中の鉱脈として出現する.このような場では,正断層等の割れ目を通して,海水や天水の循環が活発に行われ,鉱化溶液も,海水や天水が卓越し,母岩との反応も活発に行われる.引張応力が余りに大きくなると背弧海盆型玄武岩火山活動の場となり,これらの鉱化作用は伴われない. 中間型沈み込みの場では,火山弧に直交する方向の応力が高角型沈み込みの場よりも大きくなることにより,背弧側でのリフティングおよびバイモーダル単成火山活動が停止し,火山弧での安山岩火山活動が卓越する.水平面内での差応力が小さくなることから複成火山が形成される.安山岩質複成火山の中心部には酸性変質帯が発達する.広域応力場の強弱により,マグマの噴出活動の卓越する段階(図14b)と噴出を伴わない花崗斑岩〜閃緑斑岩の貫入活動が卓越する段階(図14c)に細分される.いずれの段階でも,マグマの貫入・噴出中心近辺に熱水変質帯が形成されるが,マグマ噴出活動の活発な段階での熱水変質帯が規模の大きな金属鉱床を伴うことは稀である.貫入活動が卓越する段階では,火山体中心付近の酸性変質帯に高硫化系浅熱水性金鉱床が,中心からやや離れたセリサイト変質帯には中間硫化系浅熱水性ベースメタル鉱床が伴われる.また低硫化系浅熱水性金鉱床が形成される場合もある.これらの鉱床は鉱脈型が卓越するが,高硫化系鉱床は塊状や鉱染状の鉱体を形成することもある.これらの鉱床でも天水の循環は活発で,酸性変質帯を構成する明礬石は火山ガスと天水との混合水により形成された組成を示し,ベースメタル鉱床や金鉱床を形成する鉱化熱水は天水成分が卓越する. 低角型沈み込みの場(図14d)ではより圧縮的な広域応力場のために,マグマはほとんど地表に噴出せず,地殻浅部に斑岩を形成する.斑岩の内部および周辺部には黒雲母やアルカリ長石からなるカリウム変質帯が形成され,その上部にセリサイト変質帯が広がる.最上部には明礬石に卓越する酸性変質帯が形成される.しばしば斑岩の上部に熱水角礫岩が形成される.この段階では斑岩型鉱床が斑岩および斑岩の周辺部にストックワーク状の細脈群として形成される.鉱化作用を伴うカリウム変質やセリサイト変質帯はマグマ水成分に卓越する熱水により形成されており,天水の寄与は小さい. さらに強い圧縮応力場では,マグマの地殻浅部への貫入活動は停止し,火成活動域は背弧側に移動する.このような場では逆断層や褶曲が形成されるのみで,鉱化作用は認められない(第14図e). このような5段階の広域応力場は,テクトニックセッティングの変化に応じて一つの火成弧に連続的に表れる.例えば東北日本弧北端の西南北海道では,プレート収束速度の増加に伴い応力場がより圧縮的になり,中新世中期にaのセッティングであったのが,中新世後期にはb,鮮新世にはb-cに変化している.始新世後期のチリ北部ではcからd, eへの変化が連続的に見られ,中新世から鮮新世にかけてのチリ中部ではbからeまでの段階が認められる. 参考文献
斑岩銅鉱床は,環太平洋の火成弧に広く分布するが,特にアメリカ南西部やペルー南部〜チリ北部地域では,白亜紀後期から古第三紀のカルクアルカリ系列の閃緑岩,花崗閃緑岩,石英モンゾナイトなどの貫入岩に伴って形成している.Sillitoe
(1972)は,斑岩銅鉱床の分布・年代および関連火成岩の化学組成から,銅に富む海洋地殻の沈み込みが銅の供給源として重要であり,斑岩銅鉱床は成層火山底部の貫入岩に伴って形成されると考えた.そして斑岩銅鉱床区の形成には,鉱床上部に存在したと推定される火山体の削剥が重要であると指摘している.しかしながら,アメリカ南西部やチリ北部では,斑岩銅鉱床地域に火山岩が分布した証拠がほとんど見つかっていない.また,カルクアルカリ質の組成を持つ成層火山や貫入岩が多数分布する東北日本弧では斑岩銅鉱床は発見されていない.そのかわり,東北日本弧では,中新世中期に背弧側で生じたリフト帯に沿って,ソレアイト質玄武岩と珪長質岩からなるバイモーダル海底火山活動が起こり,黒鉱鉱床が形成している.














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