納子&米子
納子
こんにちは、納子です。今日は理論の研究を紹介しま〜す。

米子
米子は、セロリが嫌いだからセオリー通り送りバントで一回パスにしよかな。

納子
セロリもセオリーもどっちも大切よ。食わず嫌いはオフサイドをとるわ。

米子
納子ちゃん、サッカーのルール、知ってはるの?

理論の研究、ちゅうたらシミュレーションや。わざと転んで審判をだます反則技でっせ〜

納子
あら、そうだったの。シミュレーションって、何かの真似をすることでしょ。理論の研究では、現実の世界をコンピュータで計算して再現することをシミュレーションと呼ぶのよ。原子や電子がたくさんあると、量子力学の原理に従って計算するのはとてもたいへんなことなの。でもコンピュータの性能が上がってきて、ナノメートル程度のモノならかなり正確にシミュレーションできるようになってきているわ。実験の方も、ナノメートルの現象が測定できるようになってきたから、シミュレーションの結果と比べることができるようになっています。

米子
ナノスケールで本当に理論どおりになっているのか、実験で確かめたり、ナノの実験で何が起きているのか、理論で調べることができるんやな。そりゃ便利そうや。

納子
理論の方もちゃんと計算できているか、実験で確かめながらすすめていくわけ。間違った計算にだまされないようにね。例えば、60個の炭素原子でできているサッカーボールみたいな分子があるんだけど、この性質も計算されています。

C60を蹴る米子

米子
空気が抜けるんとちゃうか。ちゃんと弾むかな。

納子
空気は入らないけれど、いろいろな原子がこの中にはいることが分かっているわ。

米子
そりゃすごい。原子のかごみたい。

納子
炭素原子って、ダイヤモンドになったり、炭になったり、チューブになったりと変身できるので、いろいろな可能性をもっているの。平面に並んだグラファイト構造のナノスケールのシートが磁性を示すという実験結果があって、 計算でどうして炭素のナノシートが磁性を持つのか、検討しているわ

米子
ダイヤモンドが磁石になる可能性もあるの?

納子
それは炭素原子の結合の仕方が違うから難しいでしょうね。ナノメートルの世界では、電流も普通と違った流れ方をするのよ。普通の電線の中では、電子はパチンコの玉のようにあちこちぶつかりながら流れているの。これが抵抗になるわけ。でも電線がどんどん短くなってナノメートルになったら、釘と釘の間よりも短いから、電子はぶつからないでまっすぐ進めるでしょ。だからこれまでの電気抵抗なんて考え方ができないわけ。

米子
そりゃ釘の間が何十センチも離れていたら、秘技《玉挟み》は使えへんな。電子がぶつかる釘ってのが電線の原子にあたるんでっか?

pachinko.JPG

納子
それが不思議なことに、電子はきちんとならんだ原子とは衝突しないの。不純物とか配列が乱れているところだけが釘みたいに電子を散乱するから、釘の間隔は原子間隔よりもずっと広くなるでしょ。だからナノスケールの電線では、電子が全然散乱されないこともあるの。なのに抵抗はゼロにはならないのね。この現象は実験でも知られています。そのモデルとして、 原子がいくつか並んだところを電子が流れる現象を計算する方法も研究しています

nanowire.JPG

米子
ふ〜ん、電気回路をどんどん小さくしていったら、電線もえろう難しげなもんになるんやね。

納子
小さくするといいこともあるっていう予想もあるのよ。DVDなんかに使われている光記録材料だけど、 二種類のナノ構造材料を交互に組み合わせると、今よりもずっと動作が速くなるっていうシミュレーションをしているわ

実際に相転移する様子を記録した動画もあります。

米子
すっご〜い。これ、オモロイなあ。αとβが助け合うのね。このモンテカルロ・シミュレーションって、なんやろ。よーわからんけど、ギャンブラーの血が騒ぐねん。

納子
相変化の研究では、次の状態をコンピュータがサイコロを振って決めていくの。

コンピュータがサイコロを振る

米子
そうやったんか。計算、ゆうたらもっとこう、きっちりと決まるもんかと思うてたわ。こりゃ、いろいろ使えそうな技やな。 ピコピコパンチ

納子
たくさんの原子や分子が熱で振動しながらいろいろな動きをしているのを再現するための工夫なのよ。 というわけで、ナノメートルになると現れる変わった現象を説明したり、予言するために、理論の研究は大切なのです。

米子
その通りや。食わず嫌いはいかんな。そーや、今度、どの台が出そうか、理論の人に相談してみよ。

納子
理論の人にパチンコのシミュレーションなんか頼むんじゃない。

納子&米子
しっつれいしましたー
ちゃんちゃん

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産業技術総合研究所
ナノテクノロジー研究部門
W.Mizutani, 2002.7.15.
Illustration by Yurika, 2002