溶融アルカリ-アルカリ土類金属炭酸塩の物性
2002.05.02更新
溶融炭酸塩形燃料電池の電解質にはアルカリ金属炭酸塩の混合物が用いられている。この電解質に溶融炭酸塩形燃料電池の長時間の運転によりカソード材料の酸化ニッケルが溶け出し、アノードの近くまで拡散して金属ニッケルに還元され、出来たニッケル粒子がつながりあって電池を短絡させてしまうという問題がある。近年、アルカリ土類金属炭酸塩の添加が酸化ニッケル溶出抑制に効果があることがわかってきており、これを種々の量添加した溶融アルカリ-アルカリ土類金属炭酸塩が電解質として用いられようとしている。しかしながら、これらの溶融炭酸塩の融点、導電率、密度、表面張力などは知られておらず、よりよい電解質組成を選択するためにこれらのデータが必要とされている。本稿ではアルカリ土類金属炭酸塩を含んだ溶融炭酸塩電解質の物性研究の成果を一部紹介する。
融点
溶融炭酸塩形燃料電池の電解質としては600℃以下の融点を持つことが望ましい。
アルカリ土類金属炭酸塩をアルカリ金属炭酸塩に混合した場合の相図を下図に示す。添加により融点のより低い組成があることがわかってきた。


電解質の電気抵抗は溶融炭酸塩形燃料電池の約半数を占め、出力電圧を低下さる要因として性能に直接関係する。より導電性の良い電解質が望まれている。しかしながらアルカリ土類金属の添加により導電性が低下することがわかってきた。
下図は炭酸リチウムに対し、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウムをそれぞれ添加した溶融炭酸塩の導電率と添加量の関係を示している。アルカリ土類金属炭酸塩は炭酸ナトリウムよりも添加により導電率を低下させる効果が強いが、炭酸カリウムよりは小さいことがわかる。

また、次の図はアルカリ2成分系にアルカリ土類金属炭酸塩を添加した3成分系の導電率について調べた結果を等導電率曲線で示したもので、ここでも添加により導電率が低下することがわかった。

1073Kにおける炭酸リチウム-ナトリウム-ストロンチウム系の組成と導電率の関係
温度と組成に伴う密度の関係がわかれば溶融炭酸塩の体積を知ることが出来る。溶融炭酸塩の体積は溶融炭酸塩形燃料電池に組み込む電解質の適正な量を見積もるために必要である。
密度の測定は、最大泡圧法により行った。
アルカリ金属(Li,Na,K)炭酸塩へのアルカリ土類金属炭酸塩(Ca,Sr,Ba)の添加ではいずれの場合でも密度が上昇することがわかった。3成分系の結果をLiKBa系を例として下図に示す。

1123K(850℃)における炭酸リチウム-ナトリウム-ストロンチウム系の組成と導電率の関係
得られた密度のデータから、次式に従いモル体積を計算できる。モル体積は、構成成分のモル体積との間に加成性がなりたっていると考えられ、検討を行った温度・圧力では溶融炭酸塩として存在できない単体のアルカリ土類金属炭酸塩のモル体積をデータから見積もることができた。この値を使えば3成分系の任意の組成のモル体積および密度を予想することが可能であることがわかった。
筒状の孔がある場合、液体は毛管力によって孔に引き込まれる。毛管力には、液体の表面張力が寄与している。溶融炭酸塩形燃料電池の構成材料は電極および電解質保持剤が多孔質であり、それらの毛管力が引き合うことで電解質の分配が行われている。
アルカリ金属(Li,Na,K)炭酸塩へのアルカリ土類金属炭酸塩(Ca,Sr,Ba)の添加ではいずれの場合でも混合溶融炭酸塩の表面張力が上昇することがわかった。3成分系の結果をLiKSr系を例として下図に示す。
