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日本砕石新聞社・小林秀雄記者のインタビューに答えたものです。同内容の記事が砕石新聞第822号(平成18年5月15日付)に掲載されています(日本砕石新聞社了承済)。
インタビュー『石綿問題の影響について』
●昨年、石綿による健康被害が大問題になりました。国内1500余りの砕石場では、石綿による健康被害は出ないのでしょうか?現場で働く皆さんにも、不安をお持ちの方もおられるようなので、お話を聞かせてください。
●経済産業省の調査では問題を抱えた採石場はないと聞いています。差し迫った危険はないと思いますが、石綿についての基礎的な知識を持って、石綿が出現したときに適切に対処していけるようにしておくことは大切でしょう。
石綿とはどんな鉱物?
●まず石綿とはどんな鉱物なのでしょうか?
●石綿は読んで字のごとく、綿状の鉱物です。耐火性に優れること、綿のように紡いで糸に加工でき、その糸を織って布状にすることもできるという特徴から、さまざまな用途に使われてきました。石綿には大きく分けて「白石綿」・「青石綿」・「茶石綿」があります。その名前はそれぞれの色に由来しています。
●それぞれについてお話ください。
●写真を見ながらお話しましょう。まず「 白石綿(写真はここをクリック)」ですが、蛇紋石の一種で、鉱物名は「クリソタイル」。「温石綿」と呼ばれることもあります。繊維が長く、軟らかいのが特徴で、糸に紡がれ、耐火布に織られ、例えば消防士の防火服などに使われました。
次ぎに「 青石綿(写真はここをクリック)」と「 茶石綿(写真はここをクリック)」ですが、角閃石の仲間で、鉱物名はそれぞれ「リーベッカイト」、「アンソフィライト」の一種です。それぞれ商品名としては「クロシドライト」、「アモサイト」などと呼ばれます。「白石綿」に比べて、繊維が短く、硬いのが特徴で、耐火吹付材として使用されました。
石綿はどうして有害?
●今挙げていただいた石綿は、みんな有害なんですか?
●はい、この三種は有害です。しかし毒性の強弱には差があるようです。肺気腫100例の内、99例までが「青石綿」と「茶石綿」で、残り1例が「白石綿」、そんな比率だと聞いています。吹付材として多量に使われた角閃石系の「青石綿」と「茶石綿」とが特に毒性が強いようですね。
●何故有害なんですか?
●人が石綿の綿ぼこり、長さが数ミクロン、長さと径の比が5程度の粒子を吸い込むと肺の中に付着してしまうようです。これよりも大きくても小さくても、「痰(たん)」として吐き出されるのだそうですが。付着した石綿のまわりの組織が徐々に「癌(がん)」となっていくようです。
●石綿の綿ぼこりを吸い込むことが危険なんですね?
●そうです。今全国で、吹き付けられた危険な石綿、「青石綿」や「茶石綿」の除去が行われているようですが、その際にほこりを絶対吸い込まないようにしないといけませんね。採石場でも、事務所や工場に石綿が使われてないかをチェックすることがまず重要でしょう。
日本でも石綿は出るのか?
●かつて日本でも石綿を採掘していたと聞いていますが?
●戦前から、戦中、戦後と1980年頃までは採掘されていました。国内生産と輸入量の推移を図に示しました。国産は国内で使われた石綿の3〜4%程度であったと推定されます。
●国産はそんなに少ないんですか、日本ではまず出ないと考えて良いのですか?
●日本は石綿の多産国ではありませんが、決して産出が希と言うわけではありません。戦後のコンクリート社会建設の中で、スレートや建築物の吹き付け材として、石綿が非常に多量に輸入され、そして使われたと言うことでしょう。
石綿はどんな所にでるのか?
●石綿はどんなところに出るのですか?
●石綿はマグネシウムをたくさん含む鉱物です。ですから、Mgを多く含む岩石やその周囲に出ることが多いと言うことになります。鉄やマグネシウムの多い岩石、非常に多い岩石は「塩基性岩」、「超塩基性岩」とか「苦鉄質岩」、「超苦鉄質岩」とか呼ばれますよね。このような岩石やその変質岩,それらが変わった変成岩などに出現します。蛇紋岩系と角閃石系では産出場所が異なります。
●蛇紋石系の石綿から詳しく説明してください。
●「超苦鉄質岩」の代表は、「かんらん岩」や「蛇紋岩」ですよね。かんらん岩を構成する「かんらん石」という鉱物が加水分解すると「蛇紋石」という鉱物になりますが、その一部は蛇紋石系の石綿である「クリソタイル」・白石綿です。かんらん岩や蛇紋岩中に割れ目ができ、天水が入ったり、温泉水が上昇して来たりすると割れ目に石綿ができることになると考えてください。
●角閃石系の石綿はどんなところに出ますか?
●角閃石系石綿としてはリーベッカイト(青石綿)、アンソフィライト(茶石綿)、アクチノライト(陽起石)、トレモライト(透角閃石)などがあります。リーベッカイトとアンソフィライトの産出は日本では希です。
トレモライトは蛇紋岩に隣接した結晶片岩中に多く見られます。日本では、結晶片岩中に蛇紋岩の小岩体が分布することは珍しくなく、採石場でも産出する可能性があるでしょう。アクチノライトは緑色片岩の構成鉱物として普遍的に存在していますので、産出は珍しくありません。
蛇紋岩や石綿鉱床の国内での分布は?
●蛇紋岩や石綿鉱床の国内での分布を説明してください。
●日本地図の上に塩基性〜超塩基性岩の分布を示してみました。
北海道から北上山地・阿武隈山地・関東山地・糸魚川地区・舞鶴周辺・山陰・九州まで、点々と分布しているのがおわかりでしょう。見やすくするために、岩体の大きさは実際より大きく表現されていますよ。
さて、この上に石綿鉱床を乗せてみましょう。
北海道日高山地南部・北上山地・阿武隈山地・関東山地北部・山陰・九州中部・野母崎半島などに分布していますよね。蛇紋岩の分布とよく重なることがわかるでしょ。角閃石系の石綿鉱物は変成岩中に出るのですが、多くは変成岩中に点在する蛇紋岩の周辺に分布しています。
●超塩基性岩は骨材に使われているんですか?
●はい、量的にはさほど多くはありません。しかしこれらの岩石は比重が大きく、例えばテトラポッドのような重量が必要なコンクリートなどには使われていると思います。かつては、放射能の遮蔽効果が高いとして原子炉用骨材として使われたこともありましたが、今は逆に残留放射能が強いとして使用しないようです。塩基性岩は使いやすい砕砂・砕石としてかなりの量使われている地区もあります。
石綿は実際はどんな形で出現?
●そうすると、採石場などで出現することがあるんですね。実際、採石場で出現するとしたらどんな風に見えるのですか?
●「百聞は一見に如かず」ですから、実物を見るのが早道ですね。手元に結晶片岩中に形成された白石綿の細脈の試料がありますので見てください。
試料の端に幅5mmから1cmほどの白い脈があり、脈に直交するように繊維状の鉱物が見えますよね。これが白石綿の脈です。つぶそうとすると綿のような細かい繊維になります。
角閃石系の石綿の試料は手元になく、見てもらえません。結晶片岩のはがれる方向に沿って、繊維状というよりも、爪楊枝あるいは数センチに折った「そーめん・乾麺」といったような形で出現します。色は緑灰色ですが。かなり硬く、ハンマーでつぶすと、たいてい繊維状というより砂状になりますので、害はないと思いますが。
●石綿の出現を確実にとらえるコツは?
●「白石綿」の場合、「かんらん岩」・「蛇紋岩」・「はんれい岩」・「結晶片岩」など暗色の岩石中に白い脈としてでますので、採掘切羽の点検さえしていれば、比較的簡単に発見できると思います。日々の点検をすること、そして点検の際には石綿出現の可能性を頭に置いておきましょう。白石綿のでる部分は、岩石が脆くなっていることが多いはずですよ。
角閃石系の場合でも、結晶片岩を採掘している採石場では採掘切羽の点検をこまめにすることが、石綿の出現を早く、的確に察知する最良の方法でしょう。
石綿が出現したらどう対処するか?
●採掘現場で実際に石綿が出現したらどう対処したらいいでしょうか?
●最初に申し上げたとおり、石綿の微粉が有害なのですから、石綿が見つかっても落ち着いて行動してください。石綿のほこりが発生しないようにすることがまず重要です。石綿を含んだ岩石を小割したり、製砂機に入れたりすると、埃が発生して危険だと思いますよ。ですから、まず作業をやめましょう。
そして県等の監督官庁に報告し、その指示を受けながら対処してください。基本的には、まず試料を採取して検査機関に送り、石綿の有無を確認する。必要があれば現場を詳しく調べ、多くの試料の検査が必要となるかも知れません。検査で石綿が確認され危険と判断されれば、詳しく調査し、その部分の被覆、緑化へ進むことになるでしょう。
●石綿がでると砕石場は閉鎖しなくてはなりませんか?
●たいていの場合、石綿は特定の場所や方向性をもってでますから、そこを避けて開発を進めることは可能でしょう。
●角閃石の石綿ではどうでしょうか?
●こちらの場合でも、結晶片岩を採掘している採石場では採掘切羽の点検をこまめにし、疑いのある岩石がでてきた場合は白石綿の場合と同じように対処してください。こちらも石綿の分布には特定の場所や層がありますから、そこをうまく避けて開発を進めることは可能でしょう。
●分かりました。その他注意することはありませんか?
●最初に申し上げたとおり、石綿の微粉が有害なのですから、石綿がでた時には落ち着いて行動してください。石綿を砕くようなことはしてはいけません。石綿を含む岩石を小割したり、製砂機に入れたりすると、埃が発生して危険ですよ。
●工場内の埃には石綿は含まれていませんか?
●採取される岩石に石綿がなければ、埃にも含まれていないはずです。不安であれば、検査機関の検査態勢も整備されてきましたので、適宜検査してもらうのが良いでしょう。
産総研にも地質相談所があり、石綿に関する簡単な相談には応じていますので、ご利用下さい。現場の皆さん・行政・検査機関・研究機関、みんなで協力して、健康被害が起こることの無いよう、努力していきましょう。
●わかりました。長い時間いろいろとお教えいただきありがとうございました。
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