ヘリコプターからみた2001年1月29日の三宅島
by Isoji MIYAGI @ Geological Survey of Japan, AIST
- 三宅島ヘリ観測報告
- 観察&撮影:宮城磯治@地調
- by 宮城@地調; 平成13年1月30日(火)
- 警視庁ヘリ(同乗者:大島@東大)
画像のスライドショーはこちら→ Slide Show
・噴煙を順光(反射)と逆光(透過)の両方で見比べました.
・陥没カルデラ周囲をぐるっと撮影しました(東側は除く).
・カルデラ縁西側の特徴的な地点に記号をつけました .
・噴煙(白煙)が青い霧に変化する様子を撮影しました.
・三本岳(大野原島)に接近しました.
・大島に雪が積っていました.
・地面に映ったヘリ機影を「スケール」として用いる方法を考案しました.
目次 |
お世話になったヘリ
東京ヘリポートより,警視庁航空隊の「おおとり1号(ベル412ヘリ)」に搭乗.ヘリ観測を支えて下さった皆様に感謝します.[1]
三宅島まで
全行程を通じて視界は非常に良好.
左:富士山がよく見えました. [2]
中:山頂部に雪をかぶった伊豆大島 [3]
右:利島,新島 [4]
三宅島
上空に到達
5000フィート付近にすきまの多い雲があることを除けば視界は良好.しかし風が強いので,観測条件は良くない.ヘリコプターの計器によれば,上空4000フィートは西〜北西の風が毎秒15メートルの風だった.
白色の噴煙が,強い西風にのって東がわに流されていた.陥没カルデラ内の空気は,この風によってよく攪拌されているようだ.
カルデラ内は白煙で満されており,肉眼では中が見えない.そこで,今回は,噴煙とカルデラリムを観察の対象とすることに決めた.
三宅島の噴煙
相変わらず多量の噴煙が出ているが,たとえば2000年12月27日と比較すると,噴煙に活気がない.
※参考:[7]12月27日の火口内の様子 (ヘリ観測 by 宮城@地調)
噴煙の色,高度,流れる向き
左:三宅島空港のすぐ北がわに流れる噴煙.
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右:三池浜の真上より撮影. [9]
三池方面に流れる噴煙.
噴煙は白色で,その下には青白いミストがみえました. 噴煙の上端高度は4000フィート(ヘリの高度計による)で, 西よりの風によって三池方向に流れていました. 降灰は認められませんでした.
左:三宅島の北東上空から山頂部を見る. 噴煙中の二酸化硫黄によって青っぽい光が散乱されたため, 海面に反射した日光は赤っぽく見える. [10]
右:三宅島の南東上空から山頂部を見る. 噴煙が充満しているため, 陥没カルデラの内部は肉眼ではまったく見えない. [11]
噴煙の脈動
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撮影:9時54分50秒[12] | 撮影:9時55分18秒[13] | 撮影:9時56分14秒[14] |
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撮影:9時57分14秒[15] | 撮影:9時59分8秒[16] |
噴煙は定常的に出ているのではない.数分おきに大きな塊が上空に放出されているようだ.上の連続写真はをみると,9時54分ごろに放出された噴煙の塊が9時57分ごろに島外に流された一方で,9時58分ごろには次の塊が山頂から放出されている様子がよく分かる.
なぜこんなにガスが出るのか!?
※参考:[17]三宅島2000年活動に関する見解 (地下のマグマから盛んに脱ガスが起きるモデル;地質調査所)
※参考:[18]9月以降の三宅島脱ガス活動の推移について (地質調査所)
※参考:[19]COSPECを用いた三宅島の二酸化硫黄放出量の測定 (地調,気象庁,東工大)
※参考:[20]ヘリ塔載のガス濃度計を用いた三宅島噴煙の二酸化炭素・二酸化硫黄・硫化水素測定 (地調)
※参考:三宅島2000年噴出物の構成粒子について(宮城@地調)
「噴煙」と「青い霧」の関係
以下のパノラマ(三枚×二組み; 上段は順光, 下段は逆光)写真を見ると,火口から放出された噴煙のうち「白煙」(主に水滴の反射と思われる)部分は,速やかに消滅することがわかる.一方,白煙が消滅したあとには「青い霧」(二酸化硫黄ガスや硫酸の霧と思われる)が残る.
島の南がわから撮影した,三宅島の噴煙.風は画面左から右に流れる.太陽を背にしているので,順光.
島の北がわから撮影した,三宅島の噴煙.風は画面右から左に流れる.太陽に向っているので,逆光.
噴煙の生産現場
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風下がわ[27] | その4秒後[28] | 風上がわ[29] |
今回のように風の強い時は,噴煙は噴気孔から直接上空に上昇していないようだ.噴煙は陥没カルデラ内を回る風の流れによって,冷たい空気とよく混合したのちに,上空にでているようだ.
左と中:風下がわの写真(風は画面左から右に吹く)
右:風上の写真(風は画面左から右に吹く)
私が風上がわの写真(右)を見て想像するものは,ヘビースモーカーが大勢乗ったオープンカーが高速道路を疾走している場面.
陥没カルデラ内に充満する火山ガス.
陥没カルデラ外周の様子
よく「観る」ために,ヘリコプターのドアを開く.
以下は,陥没カルデラ外周部の連続写真.テーブル中の写真の位置は撮影部位にほぼ対応します(あくまで目安です).
サムネイルをクリックすると高解像度の画像が得られます.隣り合う写真の位置関係がよく判るように,赤で「a」〜「t」の文字が入れてあります.
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中野氏が[56]12月25日 の観測の際に報告した,カルデラリム南部のひび割れを確認できました.
なお,リム南〜南西部の写真には,搭乗していたヘリの機影が映っています.宮城&東宮@地調は,この機影をもとに,地上の物体の大きさを見積る手法を開発しました.
参考:[57]ヘリコプターの機影に関する考察 (宮城&東宮@地調)
以後のヘリ観測では上の写真を参照基準にして,リムの崩落状況などを検討する予定です.
地上の様子
右:伊ヶ谷地区
左:村営牧場付近
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右:はちまき林道(大路池の北北西付近).泥流の被害. [61]
左:七島展望台と雄山山頂
[62]
右:村営牧場と雄山山頂 [63]
※仮想現実ファイルで2000年8月14日の七島展望台に行くには [64] こちら をクリック.
大野原島(三本岳)
三本岳から見た三宅島
噴煙高度が島の標高の約2倍であることが分かる.
三本岳
地震によって亀裂の広がった岩があるそうなので,接近して観察した.
帰路
神津島空港に寄る
神津島空港にて乗客が入れかわりました.おおとり1号を後方から見る(ローターが回転しているときには絶対に背後から接近してはいけない).
都内上空と東京ヘリポート
当日地上ではあまり実感がありませんでしたが,上空から見ると都内は雪景色でした.
左:田園調布上空を通過.
右:東京ヘリポートに到着.
気象庁での観察結果報告
ヘリ観察後は大手町の気象庁にゆきます.
ヘリ観測の報告風景:
画面左が東大の大島先生,画面中央でヘリ観測記録フォームに記入しているが気象庁の潟山さんです.卓上にはデジタルビデオカメラが数台あり,いま撮影してきたばかりの映像を見ながら結果を報告したり,デジタルビデオテープをダビングします.
三宅島ヘリ観測行程の記録
5:53 起床
6:21 つくばを出発し東京ヘリポートに向かう.
6:54 首都高に入る(自然渋滞)
7:57 東京ヘリポートに到着
8:00 ドアオープンする件を確認.
9:01 ヘリコプターが離陸(bell 412)
9:14 川崎上空を通過
9:21 三浦半島の海岸を通過
9:21 伊豆大島が視程に入る.山頂部に雪を確認.
9:31-9:35 大島を通過.
9:36 3000ft位の雲.
9:39 利島を通過.
9:45 新島を通過.
9:47 三宅島が視程に入る.噴煙高度,島の高さの約2倍と確認.4000ftの風はNW, 15m/sec(by ヘリ計器).雲の高さは約5000ft(by ヘリ計器).
9:50-三宅島上空に達っする.観察開始.
9:58 やや遠方からたなびく噴煙を横から観察.2600ft & 3100ftにてカルデラリムを近距離から観察.
10:28 三宅島離脱.
10:33 三本岳に接近&観察.
10:50?神津島に着陸.
11:29 神津島を離陸.
11:37 新島通過.
11:45 大島通過.
12:07 三浦半島の海岸を通過.
12:34 東京ヘリポートに着陸.ライフジャケットを警視庁航空隊に返却.
13:18 気象庁に到着.
14:02 気象庁での観察報告終了.
14:10 気象庁の食堂で昼食.
14:26 気象庁を出発.
15:45 地質調査所(つくば市)に到着.官用車にガソリンを入れる.
15:53 官用車の返却.