2012/05/07  (ナノバブルとは。。)

 
久しくぶりにエッセイを書いています。何かが一巡りしたような心持ちの表れでしょうか。題材として選んでみたのはやはりナノバブルです。当方にとってマイクロとナノとどちらが大事かと問われれば、今まではマイクロでしたがこれからはナノが徐々に主体になっていくのかな、という予感があります。大変に魅力的で、でも気をつけないと「何やら怪しい」世界です。
 さて、怪しさと科学技術とは別世界のものであるべきでしょう。当方がその混同の親玉みたいな誤解を抱いている方々がいるように見受けられますが、その点についてはやはり不服ですね。仕方が無いと受け流す時代におさらばするべき活動も必要になってくると感じています。
 ところで、当方はナノをマイクロの延長線上の対象として取り組んできました。これは研究アプローチにおける一つの戦略であり、その視点から明らかになる部分をまずはつまびらかにしてみたいとの思いがありました。でも結論として言えることは、両者は同じものではないということ。そこには一方からの解釈が届き得ない厚い壁があります。当方にとっても、どこかの時点でマイクロを頭の中から取り除いてアプローチする必要性があると感じています(マイクロの研究を止めるという意味ではありません)。

 さて、本題に移りますが、ナノバブルとは「個数」で評価できる対象でしょうか? よく「世界最高レベルの・・・」という類の表現とともに個数を提示されている企業を見受けますが、「鯛と鯉」以上に誤解を招いてしまいます。出来れば止めた方が良いでしょう。個数を議論するのは、他の全ての条件が同一の場合のみであり、また残念ながら正確に個数を計る技術は確立できていません(今後もあり得ないとお考えください)。
 ナノバブルの定量的な評価技術の確立は当方の重要な研究テーマの一つです。現時点での結論として辿り着いたことは、研究の目標設定として「出口における定量値」と「敏速に得られる計測データ」との関係を個別に明確化することです。すなわち、目の前にあるナノバブル水を使った場合に、「ある目的」においてその効果がどの程度現れるかをユーザーに事前に伝えてあげることまでです。その場合に「個数」を口にすることは無いと思います。せいぜいラジカル量くらいでしょう。それも相対値としてのデータです。
 個数にはどうして意味が無いか? 例えて言うなら「ガス濃度」に意味が無いのと同じでしょう。酸素濃度や二酸化炭素濃度という表現はあったとしても、「ガス濃度」という単独の表現はありません。また困ったことにガス以外のものすら区別できないのが現在の「ナノバブル」に関する計測技術です。さらに、ナノバブルの作用や存在メカニズムを念頭に置いて考えるならば、水質が極めて重要な意味を持っており、個数はその尺度とはなり得ません。
 ナノバブルの場合、その出口としては「生命体」に関与する部分が大きいという印象を持っています。生命体としては植物も含みます。それ以外の対象としては、食品製造や洗浄が含まれる場合もあります。その一つ一つに対して異なった種類のナノバブルがあると考えください。この分野における今後の研究はとてつもなく深くまた広いものとなります。もし取り組みを希望されるのであるならば、何かの機会に当方にご相談ください。


2010/04/01 (ある特別養護老人ホームの試み)

 マイクロバブルやナノバブルは、それだけではものの役に立たない単なる「素材」であると考えています。その素材をどの様に使いこなしていくかが、この微小気泡を応用するに当たっての技術的な核心部分です。また、その展開においは、何をなし得るのか、手間はどうか、コストはどうなのか、などの技術的な評価項目があり、「使える」となったときに初めて実用化の扉が開かれていくと思います。

 三重県にあります「わたらい緑清苑」はナノバブルの利用において非常に優れた使い方を実践されている施設です。それは多くの試行錯誤に基づいて確立されたものであり、他のナノバブル利用者にとっても大変に参考になるものです。当方はその一部を見せていただいた段階ですが、衛生管理、食品、介護などで素晴らしい実績を上げています。
 緑清苑では不快な臭いをほとんど感じません。これは間欠的に少量のオゾンナノバブル水を噴霧しているためです。この冬は風邪やインフルエンザの発生が極めて少なかったと言われていました。もちろんこれは外来者に対する配慮を含めた総合的な成果なのでしょうが、従来の基本対策と比較して、ナノバブル導入後は劇的な改善を認めているようです。
 特に素晴らしいのが「食」に対する取り組みです。痴呆の方が多く、介護に対する感謝が行動として示されることは少ないのかも知れませんが、体は素直に反応していくようです。寝たきりの老人は排便が滞ってしまうのに、緑清苑では下剤をほとんど使用することなく快便が可能なようです。排便の時間的コントロールにはならないわけですから、介護者にとっては負担の増加につながりかねない事象ですが、家族のような介護を志しているこの苑では、介護者はこのことを誇らしく語られていました。この食の現場においてもナノバブルは様々に活躍しているようです。

 民間と違って公的な機関においては、一般的マニュアルや確立された介護方法からの逸脱は、それが被介護者のためであっても、多くの場合に困難を伴うようです。ところがその荒波を乗り越えて、これを実現させた人物が井上さんです。かっては非常に辛辣なハラスメントを受けたようですが、状況も変わり、苑内外のサポートを徐々に得られ始めたようです。特に大きな力となったのが、苑で勤務される方々の理解です。井上さんの取り組みやナノバブルの魅力にとりつかれ、それをさらに深めようとされています。また、この取り組みは外部でも紹介され、一つの雛形として、これに学ぼうとする他の施設も増えているようです。

 井上さんは昨日(3月31日)をもって緑清苑を離れられました。それに当たりここまで築き上げた「介護」が外部からの圧力により風化させられることを懸念されていました。それは公的な施設の置かれた現状の厳しさを知るからこその懸念であるようでしたが、同時に経営面を含めて非常に健全な状況になっているため、良識(常識)の元で判断されるのであるならば「技術」は繋がっていくと確信されているようでした。その井上さんですが、新しい使命の元にこの技術を広められていかれるようです。

何事でもそうかもしれませんが、新しい時代は極めて少数の人の取り組みからスタートするように思われます。今後、この理解の輪がますます広がっていくことを願っています。


2010/02/16 (パイオニアからの贈り物)

マイクロバブルの研究を一人で進めたところでカバーできる範囲は知れたものでしょう。でも色んな方と共同の取り組みを進め、また色んな人からその取り組みを拝聴する機会があることは、研究を進める上での大きな財産にもなり、また自分の行っている事への自信にもつながります。

マイクロバブルを世に出していくに当たり、パイオニアの方々がなされた苦労にはいろいろな側面があると思います。 サポート体制は充実させていかなくてはいけませんが、それがまだ実現できていない状況の中では、発生装置の開発者が現場に出向き、ユーザーの問題解決に尽力することはごく普通の光景でした。 そんな中で洞察力の優れた人物は応用に当たってのポイントを徐々につかんでいくようです。

当方はマイクロバブルの基礎特性を調べる過程で実に多くの発見を行ってきました。ただし、それが摩訶不思議であればあるほど、また応用展開との間に隔たりが大きいほど、結果に対しての疑いの念も強まります。 自分で発見しながら、その発見そのものに対しての疑念が晴れない、これは大きなジレンマです。 発見したことは公表しないことには社会的な価値を生むませんが、発表できる自信(確信)がないことには前には進めません。 
そんな時に大きな救いとなるのが現実の場における事実です。 「理由は分からないけれど、こうやればこんな結果になった」と言うパイオニアの方々の経験こそ、当方にとっての拠り所です。 そして、そんな事実が多く出てくること、それは当方が考えるメカニズムに対する思いを徐々に確認へと変えていきます。

確信が得られると次にどうするか。。。それは当方の新たなステップにつながります。 すなわち科学的な検証であり、またその結果の公表です。

この数日の間に多くの確信を得ることが出来ました。
あまり暢気にしている時間はないのかも知れません。



2010/1/25 (マイクロバブルとナノバブル)

 言葉の定義にどこまで踏み込むか、というのは一介の研究者には荷が重い課題です。また研究者(技術者)の世界にも守るべき仁義があり、何より誰も万能ではあり得ない状況において、守備範囲を超えた事象を定義することはuntouchableだと思います。しかし、マイクロバブルやナノバブルが多くの注目を集める中で、それを利用しようとする人が様々な種類のマイクロバブルやナノバブルを一緒くたに考えてしまい、結果的に不利益を被ってしまうのは、広い意味での技術の展開にとっては好ましくないでしょう。そこで当方自身が「守備範囲」としている微小気泡について、雑駁ながらも振り返ってみることにします。

 当方の考えるマイクロバブルは水中で消滅する気泡のことです。この場合、気泡に求める機能が重要であり、例えば医療用で利用されるマイクロバブルは範疇には含めません。これは超音波の造影剤として使われるものであり、発生方法や利用される環境、そして目的が全く異なります。また、界面活性剤などを併用して発生させるものもあります。これも当方の守備範囲ではありません。広い意味では医療用のマイクロバブルもこの中に含まれますが、当方にとって極微小な泡沫のようなイメージがあります。50μm以下のサイズであっても寿命が極めて長くなり、水中での消滅の可能性は低く、また一連の過程における物理化学的現象も大きく異なります。これは当方の知り得る対象ではないものの、独自の機能も付加し得るものと思います。事実、ドラッグデリバリーなどの先端的な機能開発が同じ産総研の竹村氏などを中心になされており大きな注目を集めているようです。

 一方、ナノバブルについては事情が少しばかり複雑です。まず、ナノバブルという言葉そのものを使うときに当方は大きな躊躇いを感じました。理由の一つは、これも同じ産総研の矢部氏(現、理事)が超音波起源の微小気泡を開発され、これをナノバブルと命名されていたためです。これは超音波を利用して直接にナノサイズの気泡を発生させるものであり、我々が取り扱うマイクロバブル起源のものとは機能や特性において大きく異なる存在です。矢部理事の開発されたナノバブルはナノレベルの洗浄効果を大きな機能の一つとされていたと記憶しています。発明当時の用語の選定において、当方自身も随分と悩んだのですが、共同開発者である
REO研究所の千葉氏などとも協議した結果、nanobubbleという表現は他の論文などでも使われており、1μm以下の気泡として既に総称されていたため、実体を明確に記述する都合上、この言葉を利用しました。とは言え、混同を出来るだけ招かないように、酸素ナノバブルやオゾンナノバブルという表現を心がけました。
 この「ナノバブル」については、その後において予想もしなかった遍歴を辿っています。言葉自身がある意味での一人歩きをしてしまい、多くの業者がナノバブル発生装置を「開発」するに至りました。社会的なインパクトも大きく、その結果として矢部理事などには随分とご迷惑をかけたことと思います。2年ほど前ですが、数少ない理解者であった産学官の方が亡くなられたときの葬儀で初めてお会いし、いろいろとご迷惑をお掛けしましたと頭を下げさせていただいたことを記憶しています。
 さて、当方自身が守備範囲としている「ナノバブル」については、その後の研究で随分と実体が明らかになってきました。酸素やオゾンのナノバブルはその特質が明瞭に現れる存在ですが、必ずしも内部のガスが機能を左右しているわけではなく、むしろ気液界面が重要な役割を果たしています。特に界面に濃縮して存在するイオン類が重要な機能を握っています。また、微生物を含めた植物や動物に与える影響が強いこともこのナノバブルの特徴です。

 ときどき次の様なことを耳にします。以前はナノバブルは雨後の筍のようにネットなどを賑わせていたが、今は随分と落ち着いてきましたよ、と。。これは当方にとってはひと安心な傾向です。産総研という公的な機関に属する人間として、他の方が開発されたナノバブルを攻撃することは出来ません。その中にはまがい物と思わざるを得ないものもあり、世の中の人が惑わされてしまうのでは、と心配もしました。そんな中で、自分自身が出来たことは、自身の守備範囲の研究をひたすらに進め、その情報提供をすることでした。その態度は今も変わりませんが、時にはそれを逆手にとって商売される方々もいたようです。もちろん、これらナノバブルの全てが偽物というわけでは決してありません。作り方が異なれば機能も異なります。我々のナノバブルが持ち得ない機能も当然のことながら発現するでしょう。

 ナノバブルを利用する立場に立った場合、言葉としての仕分けがなかなか難しい以上、その製造元を判断の拠り所として利用されるのも一案です。少なくとも現段階で当方が守備範囲としている「酸素ナノバブル」や「オゾンナノバブル」は共同研究相手である株式会社REO研究所にその製造を一任しています。我々のナノバブルに対して期待されるものがあるならば、他のものではなくこのナノバブルを利用されることをお勧めいたします。


2009/10/16 (マイクロバブル発生装置)

 マイクロバブル発生装置は、微小気泡に関わる全ての技術の基本です。今では多くの発生装置が市販されており、「さて、どれを選択しようか」というのはこの技術の応用に取りかかるものにとって最重要課題の一つです。
 マイクロバブルというのは水溶液中に浮遊する微小気泡です。気泡というのは「周りが水で、内部が気体」というだけの存在です。それ以上でもなければ、それ以下でもありません。当然ことながら「その気泡をどうやって作ったか」という過去の記憶が刷り込まれているわけでもありません。装置メーカー(民間企業)の方が「この装置で出来たマイクロバブルは他とは違う」などとナチュラルスーパーパワーを謳うのは自由かも知れません。しかし、言葉が過ぎると、それは宗教であり、科学とも技術とも異質な世界となります。
 
装置の選択は確かに重要課題ではありますが、もっとも大切なことは使い方です。例えば、空気のマイクロバブルを発生させた場合、一個の気泡に注目してみるとどの装置で作成しても同じです。ただし、その気泡が置かれた環境によって気泡の振る舞いは大きく違ってきます。フリーラジカルを発生して消滅させることも可能です。そのラジカルの種類を変えることも不可能ではありません。また、ナノバブルとして残存させることも、そのナノバブルが人体や植物などに有効な効果を与えることも可能です。
 ワイン作りのある専門家のコメントを紹介しましょう。「マイクロバブルは酒造りに革命を起こすと思います。熟成であれ劣化であれ、ともに酸化です。どの様に処理するかが技術開発の分かれ道です。」 科学的な分析もかなり行われているようですが、彼が非常に興味深いことを述べていました。マイクロバブルをお酒に掛けるとある時点で急激に何か(ここは秘密にさせてください)が変わると。。 経時的に変化したものがある時点でリバンウンドし、その後に変化が一気に進むと。。そのポイントをしっかり捉えて技術として確立するのはやはり一流のワイナリーにしか出来ないことだと思います。

 発生装置によるマイクロバブルの相違はありません。しかし、出てくるマイクロバブルの濃度や効率の違い、内部に含まれる気体の違いなどは装置の特性が大きく関与する項目です。当方は発生装置の開発にタッチするものではありません(発生のメカニズムは理解しています)。いろいろとあるものを純粋な目で眺めさせていただき、その最適な応用法を見つけてあげること。ユーザーから問い合わせを頂いたときに最適な装置を紹介すること、技術開発の先導や仲立ちをすること。当方のような人間ももっと必要であり、何より全体的な体制作りが必要になっていると思います。


2009/9/10 (信号機)
 

 今まで多くの共同研究を実施させていただきました。その中には失敗に終わったものもあると思いますが、多くは相応の成果を上げてきたように自負しています。基本的には当方自身も分からないことが多かったため、自分自身の手で様々な実験も実施してきました。コツコツとしたそれらの成果が徐々に花開いたのか、以前にも増して多くの企業から問い合わせを頂いています。
 以前との大きな違いは、各企業が具体的な目的を持ってこちらに問い合わせを頂くことが増えていることです。また、実験手法などについても相応の検討がなされた上でアプローチがなされてきます。その多くは当方にとっても大変に興味深いものであり、共同の取り組みを進めたいと思えるものです。


 今後の共同研究をどの様に実践していくべきか。。。 個々の状況に応じて対処すべきことではありますが、相手方が興味の対象をかなり具体化しており、またその分野における知識や経験に富んでいるときには従来の進め方とはかなり異なったものとなります。
 その中での当方の役割は「信号機」だと思います。昔の信号機は3原色の○でしたが、今のものは矢印も示してくれます。幸いにも様々な分野に足をつっこんできましたので、専門の分野でなくてもある程度の土地勘はもてるようになりました。ここは進め、これは止まれ、またこの方向が良いのでは、程度のアドバイスはできます。

 当方は産総研において一人で進めています。もちろん事務関係などで多くの協力を頂いていますが、研究そのものはひとりです。当然マンパワーはありません。そのため共同研究の進め方のひとつとして、相手にこちらにお出で頂き、当方の装置を利用して様々な実験を実施していただき、ある程度にはマイクロバブルやナノバブルの使い方に馴染んでいただきたいと思います。その後に自社内でさらに専門性を高めた取り組みに発展していただければ幸いです。当方としては場面、場面で相応の協力をさせていただきたいと思います。
 この様な取り組みもマイクロバブルやナノバブルの技術開発のひとつの進め方であると考えています。

 
2009/7/29 (産総研の研究者として)


 マイクロバブルという技術、表面上においては根付くのはまだまだ先のように思えるかも知れませんが、現実には様々な場所で非常に面白い成果を上げています。それが顔を覗かせて世の中に大きなインパクトを与えるのはさほど遠くないように思います。

 技術を完成させるためには、またそれを世の中に展開させるには、実体の把握とメカニズムの解明が不可欠です。後者については、実用展開とともに(むしろやや後追いとして)進展していく場合もあるかもしれませんが、これらの部分を当方に求めていただけることが非常に多くなっています。すなわち現象の把握と解明であり、技術として完成させるためのアドバイスです。これは研究者冥利に尽きる依頼です。
 外部からの問い合わせは以前から大変に多いのですが、かっては情報だけ取りに来る方が大部分でした。立場上、それも仕方ないことなのですが、最近はマイクロバブルを利用してある程度の成果を出され、それをより発展させるために産総研に技術相談に見えられる方の割合が非常に増えています。この点が、マイクロバブルが真に根付き始めていると当方が実感している理由です。

 面白いことに成果を出されている多くの方は自分らでマイクロバブル発生装置を作られています。結果的にそれが不可欠である場合もありますが、基本的には回り道をされていることを意味しています。

 マイクロバブルは「どう使うか」が重要です。装置の開発から着手するのは大変な手間とリスクを抱えることになります。幸いなことに今では大変に良い装置が入手できます。様々なタイプの装置の紹介が可能であり、目的に応じて最適なものをお勧めいたします。

 ある程度の成果を出されて当方に相談に見えることも大変に有り難いことですが、着手する前に相談に見えられることも開発においては重要だと思います。基本的には共同研究契約というスタイルがベストですが、状況に応じて様々な制度が産総研において用意されています。産総研は公的な機関であり、技術が根付くことを支援するのが主な役割です。当方自身は大変に多くの課題を抱えており非常に多忙な状況ですが、重要なポイントをアドバイスすることはいつでも可能です。日本発の技術というのは「マイクロバブルの発生法」もさることながら、この上に築かれるものこそが主体となります。ご活用いただければ幸いです。



2009/7/27(微小気泡が目指すもの

マイクロバブルやナノバブルといった極微小気泡が注目を集めていますが、世間の方々はこの小さな泡にどの様な期待を抱いているのでしょうか?

微小気泡の出口は実に様々です。超高圧反応場としての役割やラジカル発生に関与した効果などを工学的な特性として期待することが可能です。そうした中にあって、ひとつの基本的な役割というものを当方は意識しています。それは「新たな技術体系の支柱」としての役割です。
  新たな技術体系。。。随分と大上段に振りかぶったような表現ですが、マイクロバブルやナノバブルが本当の意味で社会に根付くには、この様な考え方のベースも不可欠だと思います。

現代社会は「化学物質」の上に構築されているといっても過言ではないと思います。農産物を含めた各種製品の生産性向上や品質管理への適応、食料の流通や消費における病原菌対策、医療や健康における薬剤の利用など。。。また、水処理など環境改善の現場においても様々な化学物質が利用されています。この様に化学物質は我々の安心で安全な社会を支えるものであり、この恩恵を否定できません。
 しかし、一方において化学物質の使用だけに頼るという方法論には限界も見えてきました。耐性菌との尽きることのない戦い、農薬などによる環境破壊、生態系の汚染、薬の副作用や化学物質に対する過敏症など、個々に数え上げればきりがないと思います。

マイクロバブルは単なる泡にしか過ぎません。それ以上のものではありません。宣伝上手な業者は「俺の作った泡は特別だ」というかも知れません。でもご心配なく。。。水の中に放出された空気の泡に違いはありません。
 「泡」は水中に漂う「気体の粒」ですが、ここには気体と液体との「境界面」が存在しています。そして、動的な作用の結果として、もしくは本質的な作用として、水の持つ興味深い物性が具現化されます。さらには、これに呼応する形で微生物などが何らかの反応を示します。そこに微小気泡の工学的な意味が隠されています。

  最近こんな話がありました。作業現場で切削用のクーラントを使っているが、これが腐敗して困る。臭い対策として強い抗菌剤を使えばよいのだが、そうすると作業者の健康影響が問題となる。菌には効くが人体には無害な薬剤、そんな好都合な化学物質はないものか。。。技術的には不可能ではないのかも知れませんが、目指すところは生物に対する有害と無害の狭間であり、非常に難しいジレンマが生じてしまいます。
  この様な現場でマイクロバブルの効果が発揮できます。系内に十分な酸素を送り届けてやることで、嫌気性菌の発生を予防する。さらにうまく行けば、余分な油分を分解するような物理化学的および生物学的な効果を期待できる。当然のことながら、本来の目的(切削性能など)のために化学物質は利用せざるを得ない。ここにおいてマイクロバブルの利用を前提とした技術開発の方向性が見えてきます。すなわち、微小気泡による系の効果的な腐敗防止技術の開発、そして本来の目的に対してマイクロバブルの効果を活用するための化学物質の開発です。

マイクロバブルやナノバブルは化学物質と置き換えられるものではありません。もちろん場合によってはそれも可能ですが、それにしても作用機序としては生態系の関与などワンクッションを経たものとなります。むしろマイクロバブルやナノバブル利用の主体は、化学物質との併用です。重要なことは、ある目的を達するのに、かっては化学物質の作用だけに頼らざるを得なかったものが、微小な気泡の効果を利用することで化学物質の使用量を減らすことが出来る。もしくはより安全なものに変えることが出来る。その点にあります。

マイクロバブルやナノバブルにも出来ないことがあります。また、化学物質だけでは解決するのに難しい課題もあると思います。この両者を組み合わせることで、使用する人や対照にとって無理のない応用方法を確立すること。すなわち微小気泡が基盤となった新しい技術体系を実現すること、これこそがマイクロバブルやナノバブルの研究開発の方向性のひとつだと思います。



2009/7/22 (疑うということ。。。)
 

 巷では様々な「ナノバブル発生装置」が宣伝されています。それを利用して大学の先生などが研究をされているようであり、またその装置の喧伝を信じて様々な商品が開発されているようです。後者に関しては、その結果として益あるものが生まれたのであれば、まずはお咎めには至らないでしょう。
  でも、少し疑ってみることも必要なように思います。
 ナノバブルの生みの親のひとりと自負している当方ですが、いまだにナノバブルそのものに対してはある程度の疑念を抱き続けています。ここに至ってやっと真実の端くれが見えてきた段階です。

  学生時代に地質学を志していたとき井尻正二先生のエッセイをよく読んでいました。その中に「科学者は解釈学に陥るべきではない」という記述があったのを印象的に覚えています。地質学には記載学とでもいうべき側面がありますから、忠実に「事実」を解明していくべきであり、何かの発想を前提とした、またそれを証明するための研究は慎むべき、との意味もこの言葉に込められているのかもしれません。井尻先生は当時の地質学の重鎮であったようで、その影響力が強く、お陰で我が国のプレートテクトニクス関係の研究がずいぶんと阻害されてしまったというような批判記事も目にしています。また、地質学のアプローチとしてはある程度は是であっても、一般科学では「仮定」がまず立てられることが通常であり、解釈学にならざるを得ない側面もあると思います
 とは言え。。。マイクロバブルやナノバブルの発生装置や開発者の発言を100%信じてしまうのは如何なものかと思います(この場合には「仮定」では困りますが。。)。当然のことですが、彼らにも意図があります。その点は大目に見ないといけないことですが、高価な装置を購入するのであれば、相応の事前調査をお勧めいたします。

  REO研究所と共同で確立したナノバブル技術。これについては様々な角度から検討を加えてきました。バブル(気泡)としての実体についてはまだまだ疑いを持っていますが、マイクロバブルをベースとして始めて完成したものであること、様々な現象を起こす「何か」が存在していることなど。これらは間違いないことであり、今後の大きな技術展開を信じて、我々はこれを「ナノバブル」と命名しました。マイクロバブルとは異なる存在としての技術基盤を築く必要性も認めていました。
  その後、極微小気泡自体を対象とした研究が進展し、マイクロバブルを自然放置した状態でも「ナノバブル」が残存することが分かってきました。ただし、これら両者のナノバブルがイコールであるとは言い切れないようです。後者のナノバブルで淡水魚と海水魚を長期に共存させることは難しいでしょう。また、医療やバイオでの利用も制限が加わると思います。

  微小気泡の研究に関して、当方は他の人よりも一日の長を感じています。その優位性はいつまでも続くものではないかも知れませんが、この技術の可能性を信じていることと、これを真っ当に世の中に出したいと強く願っていることは事実です。もちろん、自分の開発した装置や技術、理念を何が何でも押しつけたいというものではありません。また、他の人や技術を攻撃するものでもありません。それでも、ひとりの研究者として眺めた時に、多少は目に余るものがあります。
  当方からのアドバイスは「まずは疑ってみてください」ということです。もちろん、その疑いの対象として当方の理論や我々の開発したナノバブルも含まれるべきだと思います。今後においても当方として事実は素直に出していきますが、その解釈においては疑われるべき余地が常に付きまとうと思います。当方としても対象に対する疑念を常に抱きつつ、技術的なベースを少しずつでも確立して行きたいと思います。
  願うべきは、技術の前進のために共に歩まんことを。。。


2009/7/1 (社会システムの構築)

 マイクロバブルという技術を本当の意味で社会に根付かせるためには、発生装置のメーカーもさることながら、それを販売していく方々が非常に重要な役割を担っています。装置メーカーの多くは中小企業であるため、製造と販売の両方を受け持つことにはかなり無理があるように感じます。特にマイクロバブルの場合、装置を売りっぱなしにしたのでは倉庫の荷物になりかねません。これでは折角の技術が出て行きません。ユーザーが抱える現場に出向いて、実際の利用法を指導できる「技術営業」が不可欠です。
 当方は流通社会に疎いため、装置類を「安く」出すことが技術を広める「手段」の一つと単純に考えていました。でも意外と感じたことは「高くしないと技術は広まらない」という事実もあることです。
  まじめにマイクロバブル発生装置を開発し、また販売している企業があります。ある程度の数の器具が売れているようであり、経営は安定し、技術の進展に着実に貢献されていると内心喜んでいました。。。。ところが、第3者から「かなり厳しいみたいですよ」とのコメントを聞き大変に驚かされました。

 安い → 利用しやすい → 数が売れる → 技術は広がる (→ 企業は儲かる)


という図式は、利用者側に立っている思考のように思えますが、どうもそうではないようです。やはり、提供する側が正当な利潤を上げられる体制を取っていないと、提供そのものが不可能となります。利用者側にすれば、装置導入によりコスト削減や生産性向上につながると判断できれば、相応の出資はするはずです。逆に安すぎると技術
(装置)そのものを疑いかねません。

 マイクロバブルやナノバブルという技術を考えた場合、これらを如何に利用するかが重要です。そのためのノウハウの確立が不可欠です。

  利用現場の違いにより、汎用的な対処法では通じない場合も皆無とはいえません。販売者側は、応用に関する技術ポテンシャルを高める必要があります。また場合によってはある程度のリスクを抱え込むことにもなります。当然のことながら、相応の見返りが期待できないと、販売部門を担当する業者は参入してきません。
 今のマイクロバブルの「製造者」は、そのまま販売者であることが多いのが実状です。中小の場合、現場に深く入り込むゆとりは無いと思います。また、現場は千差万別ですので、仮に大企業であっても、販売を全て自社で担当するのは不可能と思います。
  この様な状況の中で、「製造者」が製造原価のみをベースとした価格設定を行ってしまうと、販売(+技術営業)に関わる企業が入り込むスペースが生まれません。
 ご自身が苦労して開発されたものです。安売りする必要はありません。最終的に皆がハッピーとなる状況を思い描かれて、適切な装置価格を設定して頂けましたら幸いです。そしてその上で、マイクロバブルを世の中に広めていくための社会システムを構築していく必要があります。



2009/6/29 (出藍の誉れ


 「青は藍より出でて藍より青し」と言いますが、「ナノバブル」はマイクロバブルより出でて。。。でもマイクロバブルよりも「青く」はありません。青いどころか、その色は「真っ赤」です。

  技術を世の中に出していくためには「戯言」は禁句だと思います。ナノバブルの実体を知らない者が「勝手な解釈」のもとに商売をしていく。多少なりとも本質を理解した人間には見るに堪えません。
 水中でマイクロバブルを発生させるとその後にナノバブルが残る。これ自体は「事実」です。でもこれが商売と結びついたとき、顧客に対しての責任が生じることと思います。それを眼にした人が何を望んでいるのか、そしてその要求に対して正確に答えようとしているのか、そのことが重要です。
 ナノバブルを世に紹介すること、これは当方にとって容易いことではありませんでした。その実体を知れば知るほど「学術的」には無口になってしまいます。でもひとたび社会に石を投げた以上、無口になることは許されないと思います。人を高みに登らせておいて梯子を取り外す行為は許容されないでしょう。人々が「ナノバブル」に対して何を望んでいるのか、その点を良く理解して回答をしていく必要があります。一方、企業においても「ナノバブル」を生業とするのならば、それに対してユーザーが何を求めているかをよく理解して、それに真摯に答える必要があると思います。

 REO研究所とともに最初にナノバブルを紹介した時、そのナノバブルは非常にレベルの高いものでした。「レベル」と言う表現が語弊を招くならば、「次元」の異なる「ナノバブル」でした。淡水魚と海水魚を共存させるようなナノバブル、医療分野での限りない未来を約束されるべき(?)ナノバブル。。。このナノバブルは「赤色」であり、牛乳状のマイクロバブルが透明になった後、「さあここにナノバブルがある」というものとは「別次元」の存在です。マイクロバブルすら知らない人間が「俺が計って認定を与える」ことは「不可能」な対象です。

 社会に広くナノバブルを紹介するためには相応の戦略が必要でした。多くの事実を一度に開示するのではなく、順序を追って紹介していくこと。ただ残念なことは、その過程において「曖昧さ」が生じ、また「訳の分からぬ人」が商売をする「空隙」を生み出してしまいました。これは多分、新しい技術においては普通の現象なのかもしれません。
 「ナノバブル」はまだ全てが開示されているわけではありません。(現段階においては)当方はもっとも深く理解している人間の一人と思いますが、当方ですら「巨像」の尻尾を撫でているだけの盲人なのかも知れません。
 限りない可能性を秘めたナノバブルを世に紹介していくこと、そして多くの人に対して実用化への取り組みを促していくこと。これは当方の責務であると認識しています。また一方で、ビジネスチャンスと考えて「ナノバブル」を取り扱う人々、彼らにも相応の「責務」が課せられると思います。
 「ほらこれがナノバブル」と透明になった水を指さす人を当方が非難できる権利はないかもしれません。とは言え、指さす人の後ろにいる人々(社会)に対して、現段階でのナノバブルの曖昧さを隠れ蓑に「あらぬ誤解」を故意に生み出すことは許される行為ではないでしょう。また、無知であるが故に生み出した誤解があるならば、早急に改めるべきでしょう。


 今、「ナノバブル」は第二ステージを迎えたと考えています。マイクロバブルを放置して透明になった水。。。ここにも「ナノバブル」は存在しています。でもその色は赤くはありません。虹の色に例えるならば、せいぜい緑か黄色です。もちろんこの色にも限りない可能性が眠っています。その可能性を当方は探り出し、また紹介していきたいと思います。どうかこれを「赤」とは考えないでください。


2009/3/31 (企業との取り組み)

 マイクロバブルやナノバブルはまだまだ黎明期の段階にあり、これを如何にして社会に貢献できるような技術体系として育て上げていくか、「産総研」という公的な機関に属している当方の基本指針です。もし当方が民間企業に身を置くならば、その企業の業績のみを考え、他の企業を攻撃し、勝ち抜いていくことに全力を尽くすでしょう。でも産総研に身を置く以上は「社会のために」働くことが是とされます。
 マイクロバブルやナノバブル技術を真の技術として確立していくためには、産総研単独で完結できる部分はほとんどありません。外部の大学や他の公的機関、そして何より民間企業の協力なくしては何一つ役立つものとして確立できないと思っています。そのため産総研内での体制よりも、外部との協力体制を如何に確立していくかに尽力しています。
 企業との取り組みの難しいところは、企業戦士には「自社のみ良ければよい」との基本姿勢がある点です。これは当然のことではありますが、そこに産総研が関与した場合、少し方針を変えていただく必要があります。当方にアプローチする企業の多くは「美味しいところ取り」をしていこうとします。マイクロバブルやナノバブルの話を聞き、適当な装置を紹介してもらったら「後は俺らでやれる」との態度です。もちろん単に話をして装置を紹介した程度ならば、問題視する必要はなく、当然のこととして受け止めます。しかし、ある程度は踏み込んできた後に、当初の相互認識から急に話を変えられてしまうと、当方としては大変に困ってしまいます。

 共同の取り組みをどの様に進めるか、その入り口においては非常に微妙なところがあります。最初から共同研究契約を結んでスタートすることが手続き上はベストなのですが、何分にも相手企業にとっては馴染みのない技術であるため、当たりをつける試験を実施したいとの申し出を受けることがあります。ところが、共同の取り組み後、何らかの可能性が見えたときに困ったことが起こることがあります。当方から見たときに「それはないでしょう」という思いを抱くこと、それは楽しいことではありません。(一方、こちらが恐縮するくらいに協力していただける企業も少なからずあります。)
 我々から見てネガティブな態度に急変したときに、どの様な対処をするのか、頭の痛い問題です。基本的には組織としての対応方針に従うしかありません。一方で、個人的には真摯な協力を続けることが不可能になります。

 マイクロバブルやナノバブルは決して根の浅い技術ではありません。少し位かじった程度で、その後にどんどんと結果が出るものでもないと思います。また、実験室と現場では全く条件も変わってきます。少しは我慢して(こちらを信頼して)共同で進められた方が、お互いにとって後々良い結果になると思うのですが。。。


2009/3/17 (成功への道程)

 様々な企業を始めとして外部の方々と接する機会が大変に多くあります。人との出会い、そして共同の取組は、確かに多くの時間を取られますが、それを補って余りある情報(発想の種)を入手できます。そして技術以外の部分においても多くの経験を積むことができます。もちろん皮相的なものにしか過ぎませんが、世の真実の一部も覗き見する機会も少なからずありました。自分自身の狭い世界観ながらも、これも一つの人生経験であり、自分自身の財産になっていると考えています。
 マイクロバブルやナノバブルが世の中に浸透していく過程で、技術に携わる人間にとっての「成功への王道」があるように思います。それは、単に装置の開発者に留まるのではなく、技術営業として外の世界を闊歩すること。その過程で得たものを自分の技術として再度に磨き上げること。そして自分の装置が利用される現場を自分の手で作り出していくこと。それでいながら、己の装置の限界をしっかりと認識すること。可能であるならばそれを公言すること。
 当方自身ももがきながら一歩一歩を刻んでいる人間に過ぎませんが、役柄上、多くの人たちの道程を眺める機会があります。また応援すべき立場にもあります。八方美人としての役柄を持ちながらも、必要に応じて「事実」を述べます。その事実が「苦い」と陰で当方を攻撃する人もいます。でも、間違った事実は、短期的には目の前の道を照らすことがあっても、いずれは迷い道にしか行き着かないと思います。新たらしい参入者に対して、もしそれが可能性に満ちたものであったときに当方が口にすることがあります。それは、この技術にオールマイティはあり得ないと言うこと。利点(守備範囲)を伝えていくから、浮気をしないで欲しいと言うこと。そして何より、この全体技術が真の姿を現したとき、その一部を担当するだけで食べきれないほどのご馳走を手にできるであろうとの(時期を述べ得ない)予言。

 この文章を書きながらも思うことは、主に中小企業においてマイクロバブルやナノバブルに携わる彼らの前にはゴールテープはないかも知れないということ。それがまだ黎明期であるこの技術が置かれた状況ではないのかということ。当然のことながらまだ成功者はおらず、もし成功者と本人が思ったときには直ぐに他に取って代わられるような混沌の世界がその外側に広がっているということ。ただし、そう悲観したものでもなく「僕の後ろに道はできる」というような世界観が許されるパイオニアを排出し続けるような「時代」が幕開けしたと思われること。そして、再度に繰り返すなら、成功への鍵とは、自分の道を守りながら(限界を感じ取りながら)、未知の分野に開拓の鍬を入れ続けるということ。

 以上はもちろん、象牙の塔に住む一研究者の戯れ言にしか過ぎません。しかし、ニーズ側に立つ人たちにマイクロバブルやナノバブルに対しての十分な認識がない状況の中で、シーズ技術の開発者が成功を勝ち取るためには、応用の部分にかなり踏み込んだ取組が不可欠であると思います。技術者が自分の殻に閉じこもることを許されるほど全体の技術体系は成熟していません。訳の分からない装置(や思想)なども出回っています。多分、その状況は益々酷くなっていくでしょう。そんな中で良い技術の種を持っているパイオニア的技術者にはニーズを求める人たちに対する幅広い対応力が必要なように思います。
 加えて我々のような「象牙の塔の住人」に望まれることは、ひたすらに深みを目指す傾向のあるシーズ技術の開発者が彼ら本来の仕事のみに専念できるような社会的体制作りを進めることだと思います。つまりシーズとニーズの融合であり、ニーズ技術の発展です。マイクロバブルやナノバブルの可能性を考えたときにニーズには事欠かないと思います。公的な機関の研究者は、ニーズの面からアプローチしてくる人たちがまがい物に惑わされることなく適切に装置(技術)の選択を行なえるように正確な情報を発信すること。さらに、ニーズ系の開発者が目的の成果を効率的に得られるようにサポートすることが必要になってくるでしょう。この技術は「Yes. I can」ではなく「We can.」であり、それを先導するのは大学などの公的な機関に属する人間の役割だと思います。その様な経緯により全体の技術が成熟していくならば、マイクロバブルやナノバブルが日本発の技術として世界をリードしていけるのではないでしょうか。



2009/2/24 (ナノバブルが意味するもの)

 今回、ある成り行きから農水省関係の提案を研究代表者として行う機会がありました。全部で9機関をとりまとめたものであり、初めての経験でもあったことからかなり大変な作業でした。もちろん提案が採択されるかどうかは分かりませんが、今回の提案書を書くことによりナノバブルの位置づけを自分なりにハッキリさせることができました。
 ナノバブルは今までも食品分野で実用的な成果を上げ始めています。また、基礎研究の段階ですが、医療分野では非常に大きな可能性が見え始めています。その様な経験に加えて、昨年度の窒素ナノバブルを利用した稲作実験の取り組みがありました。
 今回の提案書を書きながら思ったこと。それは社会におけるナノバブルの位置づけです。既存の多くの技術は化学物質の作用に大きく依存しています。身の回りを見たときに、化学物質の恩恵無くして我々は現在の生活を維持することは出来ません。手に取った食物に関しては、相応の農薬や化学肥料抜きでは、我々を支える量や品質の確保は不可能です。病気の時にお世話になる薬もしかり、安全や衛生を支える薬品類もしかり。これは大きな技術体系として捉えられるものと思います。もちろんナノバブルはそれに代わるものではありませんが、作用メカニズムにおいては一線を画したものです。いわばまったく新しい技術体系の確立につながるものと思います。
 その根底にあるものは、微小気泡が存在することにより、水中に普通にある電解質イオン類の存在形態が変わり、これが生態系に対して今まで知られていなかったような作用を及ぼすということ。ナノバブルの機能を議論するとき、そこが根底の一つであるように思います。農業を例に取ると、植物に対しての直接的および間接的な作用に関与しています。間接的な作用とは微生物を含めた生態系への作用であり、土壌や水の環境条件を変えることで植物の生育に変化が及ぶ、という考え方です。

 実はナノバブルの作用を考えたときに常に安全性のことが当方の懸念の一つにありました。時として魔法のような作用すら目にするわけですから、何か副作用的な影響があるのではないかと。もちろんこれは否定できないものですが、今のところ不思議なくらい悪い作用がありません。ある製薬関係の研究者にその話をしたところ「それは泡だからだ」と言われました。とは言え長い目で見たときに、化学物質にあまりにも頼りすぎる技術が問題であるように、ナノバブルの効果に頼りすぎる方法も最善とは言えないでしょう。しかし、その効果やメカニズム、そして安全性について正しい認識を獲得しながら、化学物質のみに依存しているものの一部をナノバブルの作用に移し替えていくことは我々の将来にとって大きな意味があると思います。


2009/1/31 (夢の扉が開くとき)

 おもえばあの日からもうじき6年の歳月が過ぎ去ろうとしています。REO研究所の千葉金夫氏との出会い。
 当時の私は、それ以前に共同で歩んでいた大成先生の行為に心を砕かれたものの、独歩を決断し、2つのマイクロバブル発生メーカーとの出会いを経て、開かれた未来に軽やかな心持ちでした。一方の彼は自分の技術を閉ざされ、夢破れ、でも必死に出口を求めて足掻いていた時期だったように思います。
 「絶対にあなたを世の中に出してあげるから」当時はまだしがない(今でもそうかも知れませんが。。。)いち研究者が発した大言壮語です。言葉の持つあまりにも重い責任を理解することもなく、またその後の荒波の数々など予想だにしていませんでした。
 その千葉さんが表に立ちます。「これが俺の集大成」と呼ぶ番組の主人公ですから、当方も肩の荷を下ろせます。「今までは博士(彼は私をそう呼びます)が矢面に立っていたが、これからは俺が背負う。それを思って発言した」 有り難いのですが、それは不可能でしょう。立場は理解してもらえても内実が分かるものではありません。人には見せぬしこりも消えません。 
 恩人であった2つの発生メーカーは当方の元を去りました。泡立つ波はあらゆる方向から押し寄せ、奪い苦しめながらも、多くを残してもくれました。
 波とは木霊、時として思いもよらない形で返ってきます。何を発し、どう対応するのか。技術とは異なった部分も試されます。
 明日2月1日午後6時30分TBS「夢の扉」。自分だけの感慨を持って彼の後ろ姿を眺めてみます。


2008/12/12 (半導体洗浄とマイクロバブル技術


 半導体は、パソコンや電化製品、車などありとあらゆるところで使われており、産業の米とも称されます。これは、ウエハーと呼ばれるシリカの基盤に電子回路のパターンを書き込むことで作成します。その時に利用されるのがフォトレジストです。感光性のある薬品であり、これを基盤上に塗布した後に光照射などにより回路を作り上げるようです。レジストの塗布とパターンの書き込みは何度も繰り返される作業ですが、前の処理が終わって次の処理を行う前に、基盤上に残ったレジストを除去する必要があります。これは大変に重要な作業であり、洗浄が不十分では正確なパターンが書き込めず、欠陥商品となります。
 レジストの除去方法はいくつかあるようですが、メインの一つは硫酸に過酸化水素を加えた液体で処理するやり方です。ただし、この方法は廃液処理が非常に難しいという欠点があります。
 我々はオゾンのマイクロバブルを利用することにより、蒸留水をベースとした処理方法を確立することを検討しています。「ナノバブル利活用協議会」はこれを実用化技術として育てることを念頭に置いた集まりです。 
 通常のオゾン水に比べて、マイクロバブルを併用した場合、その除去効率は大幅に増加します。そのメカニズムとしては、内部ガスの加圧効果や気泡崩壊時の水酸基ラジカルの発生などが関与していると考えています。実はこれに加えて効果を劇的に高める手法があることがわかりました。共同で取り組んでいる茨城県工業技術センターの成果でもあります。実用化に向けて一つの有効な道具を手にすることができた気がします。

 数年前にマイクロバブルが騒がれた時期がありました。ところが成果が出ないとのことで下火な時期もありました。 ただ、幸いなことに、マイクロバブルは消え去るのではなく、細々と残ってくれました。 今、徐々にではありますが、風向きの変化を実感しています。 「巧言令色・・・」という言葉があります。 耳に(目に)やさしい言葉の羅列は必要ありません。 応用を志す研究者や技術者には、真実を見抜く眼力と、偽りに対する厳しさが必要です。 

 半導体の件に関しても真の技術として確立できる保証はどこにもありません。しかし、このような一つひとつの取組こそがマイクロバブルを世の中に出す道筋だと思います。 幸いなことですが、半導体洗浄に関しても、お陰様で多くの方々の協力が得られています。何とか歩みを続けることで、真の技術として成功させたいものです。またその成功がマイクロバブルに対して冷淡になった方々の考えを改める機会になりましたら研究者として大きな喜びです。


2008/11/19 (マイクロバブルとお風呂の関係)

マイクロバブルにしてもナノバブルにしても、それを工学的に応用するためにはプラスアルファの様々な工夫が不可欠です。ただし、単純にこれらを使うだけである程度の結果が出る場合もあります。お風呂への応用も基本的にはその類になると思います。
 当方が最初にマイクロバブルと出会ってからもうじき10年が経とうとしています。基本的には研究用として利用してきましたが、個人的な面で活用したこともあります。それがお風呂へのマイクロバブルの放出でした。ただ、当方自身はその「効果」を全く自覚できないほど鈍い人間ですので、これまでコメントを避けてきましたが、身内の様々な経験を伝えることも、この分野への応用の糸口になるかと思います。
 当方の妻はひどい肩こり持ちです。就寝前のマッサージは当方の日課ですが、以前に共同研究を行っていたO先生の装置でこれが改善したことがありました。最初に装置を入れた時の妻の評価は最悪であり、変なホースをお風呂に入れるのは止めて欲しい、と怒られてしまったのですが、お風呂上がりに鏡の前に座った妻が「あらっ」と声を漏らして「肩が落ちている」と当方に告げたことを覚えています。そして「肩こりを感じない」と。。 その後はなかなか安定した効果を発揮しなかったのですが、何らかの条件が揃ったときには肩こりが大幅に改善したようです。装置の使い勝手が悪かったため、今では使用していませんが研究要素としては興味深いものを感じていました。
 その後に非常に高濃度の発生装置に出会い、我が家でも使ってみる機会がありました。肩こりについてはまずまずの効果があったようですが、汚れがマイクロバブルだけで取れてしまうため、石けんとの併用が相性に合わず、妻は今ひとつ気に召さなかったようです。かわいそうなことに、転居を機会に装置はお蔵入りしてしまいました。ところが「捨てる神あれば拾う神あり」の例え通りに、当方の父が訪ねてきた折りに「使わないならワシにくれ」と実家に持って帰りました。その父曰く「もう絶対に手放せない」。 
 実は装置を渡すに当たり父に注意したことがあります。皮膚の脂分が落ちすぎてしまうので石けんで体を洗うのは制限すること、また乾燥肌が強くなりかけたと思ったら直ぐに中止すること。
 皮膚に深い年輪が刻まれた父は冬になると大変に痒がっていました。それは堪らなく辛いものであり、病院の薬が上手く合ったときに多少改善する程度だったようです。その話を聞いていたので父が装置を使うことは反対でした。ところが実際は全く逆の効果を得ています。すなわち嘘のように痒みから解放されて、冬場でも孫の手がまったく不要になったとのことでした。24時間風呂と併用しているため、一日に何度もバブル湯を堪能しています。皮膚の脂分/乾燥肌/痒みの関係にマイクロバブルがどの様に作用しているのか、当方には分かりません。
 さて、その父から面白い話をいくつか聞いていますので、ご参考までに紹介しておきます。その一つは、鼻くそのような汚れが浮いてくる、ということ。最初は「強烈な内容」を想像したのですが、その後しばらくすると出なくなったようであり、どうも24時間風呂の循環回路内に付着していた汚れ(バイオフィルム)がマイクロバブルの作用で徐々に引き剥がされたもののようです。そしてもう一つは「白髪染めが直ぐに取れてしまって困る」ということでした。そう言えば、帰省した折りにお風呂にはいると、浴槽の壁面が新品のように綺麗になっていました。やはり洗浄効果は期待できそうです。

 お風呂用のマイクロバブルに関連して話題をもう一つ。 マイクロバブルと炭酸ガス風呂を組み合わせた装置開発をあるメーカーが進めていたのですが、途中で頓挫したとのこと。ある人から理由を聞く機会があり、「そのお湯に手を入れても赤くならない」ため失敗と判断したようです。
 評価の難しさの裏返しとして、折角の技術が出ていかない事例を多く目にしてきました。血流が増した、手が赤らんだ、というのはかなり個人差を含んだ要因と考えるべきかも知れません。
 先日、四国にある非常に高濃度の炭酸風呂に入る機会がありました。浴槽内でも1000ppmを超えているとのことで、手を動かすと二酸化炭素が再気泡化して周りにフワーッと泡の群集が広がっていきます。しばらく浴槽内で遊んでいたのですが、特段に肌が赤らむことはありませんでした。

 どんな技術にも評価は不可欠です。ただし意外なことは、技術を評価する「評価技術」が軽視される向きにあることです。軽視されると言うよりも、簡単に考えてしまう傾向にあると言った方が正確かも知れません。技術の評価には非常に深い要素が隠されている場合が多く、あまりに安易に対象を評価してしまうことは危険でもあると考えています。何より、その様な評価技術の確立も重要な研究課題の一つだと思います。



2008/11/4 (微小気泡とマスコミ)


 技術の深みや広がりの可能性については、当事者といえども必ずしも完璧に理解しているわけではありません。また自分の技術を過大に評価することもあれば、その逆もあると思います。少し離れた立場から技術を見てもらうための情報媒体としてマスコミの役割は重要です。もちろんマスコミは基本的に一過性のものですので、技術を真に発展させるためにはその後の取組が大切だと思います。
 ナノバブルの基礎技術が確立したときに我々はプレス発表を行いました。主に医療面における大きな可能性をつかんでいた我々は、真の応用技術として利用してもらうためにマスコミの力を信じました。展示内容としては「淡水魚と海水魚」を表に出しました。その後の愛知万博での展示という幸運もありましたが、希望したとおり医療分野の研究者から多くの問い合わせを頂きました。その後、研究の多くは失敗に終わりましたが、その内の数件においては良い結果が見え始めています。
 マイクロバブルにしても、またナノバブルにしても決して魔法ではありません。簡単に使ってみて、いきなり結果が出ることはまずありません。むしろ、うまくいかないことの積み重ねから徐々に本当の可能性が見えてきます。とは言え、あまりに失敗ばかりだと担当者が見限ります。どの段階まで続けられるかは研究者の「思いこみ」の深さに係わっているようです。「ナノバブルにとって幸いだった」ことは、その可能性を深く信じてくれた研究者が一握りでもいたことだと思います。これが遠い将来、「多くの人にとって幸いであったことに・・・」と表現が変わったときに、この技術が世の中に出て行ったといえるのだと思います。その命運は彼らの地道な努力に関わっています。
 ところで、マスコミにとって、ナノバブルは非常に衝撃的な内容ですが、マイクロバブルはインパクトそのものは弱いながらある程度の歴史があります。先日もある人に言われました。「マイクロバブルが世の中に出て10年近くも経っているのに、何故まだ実用の場で使われていないの?」 彼の言いたいことは分かりますし、また当方の答えも沢山あるのですが、一つだけ誤解を解いておく必要があります。
 それは「マスコミに取り上げられた」ことと「技術が確立した」ことが同義語ではないことだと思います。むしろマスコミは確立した技術よりも、可能性のある技術を取り上げてくれる傾向にあるようです。その意味では、本当に大切なのは「その後」なのかも知れません。
公的な立場にいる当方の役割としては、技術の確立に主体として取り組むとともに、他の研究者や技術者がこれを応用するために有用な基礎情報を提供していくことが重要と考えています。もっともまだまだ修行が足りませんが。。。



2008/10/16 (「一次産業の活性化」と「技術以外の壁」)


 共同研究相手である
REO研究所の千葉さんがときどき口にする言葉の一つに「一次産業の活性化のために。。。」があります。マイクロバブルやナノバブルの応用の一つとして、その位置づけは重要性を増しています。人類の将来のためには一次産業、特に食料増産の必要性は誰もが認めるところであり、昨今の情勢における食の安全性の確保は現場における極めて強いニーズとなって現れています。
 新しい技術を世に出すときには実に様々な障害に出会います。一つは技術自体に内在した壁です。これは開発を進める上で必然的に出会うものであり、基本的には開発者が試行錯誤しながら乗り越えるべきものだと思います。一方で厄介なものは「技術以外の壁」です。REO研の千葉さんとの二人三脚の部分において、当方が嫌というほど実感してきたことがあります。新しい技術や小さな企業に対する社会的な偏見、大きな企業や半公的組織の罠、既存技術集団からの反発、行政の壁など。。 正直なところ「この技術は世に出ない」と何度も暗澹たる想いに捕らわれてきました。
 ここ一年ほどでしょうか。幾筋かの光が差し始めたように感じることがあります。その源はどこにあるのか。真摯な取組が認められたのではなく、「現場のニーズ」の高まりに他なりません。 
 ところで、マイクロバブルの応用の基本は「水処理」だと考えています。その中において、「安全な水の確保」や「綺麗な水環境の実現」は、誰も異論のない現場のニーズと捉えられるかも知れません。でも、この5年あまりに当方が実感したことは「現場の不明確さ」です。日本語を正しく使うならば「ニーズの元」と「現場」の不一致です。これはマイクロバブルをベースとした我々の技術開発にとって大変に不幸なことでした。ただし昨今の光明の一つは、この2つのものが徐々に近づきつつある証ではないかと考えています。
 さて、今回の我々の取組について、これは明確なるストラテジーから出たものではありませんでした。ナノバブル(マイクロバブル)を利用して田んぼを作ってみようという行動は、確たる見通しもないままに関係者の思いが結実したのかも知れません。とは言え、稲作りという行動そのものは、多くの偏見により千葉さんの苦労として跳ね返ったようです。この点については「現場」にいない当方には直接的な手助けができないことでした。
 ものごとには現場でしか見えないことが多くあります。また、実際に取り組んだ結果としてしか判断できないことがあります。千葉さんによる「初めての田んぼ作り」は大変に多くの成果を実らせました。それは当初には予想もつかなかった結果の数々です。
 マイクロバブルやナノバブルには常識で判断できない現象が起こることが希ではありません。このことが「技術以外の壁」を作りだし我々を苦しめてもきました。しかし、結果は結果です。それが事実であるならば、いつかは認められるべきであり、また当事者はその労を厭うべきではないと思います。
 今回のナノバブル田んぼについて、様々な現象のメカニズムを解釈するためにはある中間体の関与が重要だと考えています。この点についての詳細は述べませんが、今回得られたいくつかの明瞭な結果を記述してみます。
・「土が変わった」 瀕死のものが生まれ変わったのでしょうか。。
・「雑草が生えなかった」 これは農家の方を随分と驚かせたようです。 
・「病害虫の影響がほとんど無かった」 幸運ということでは片付けられない事実があります。
・「収穫が増えた」 自然乾燥中であり、まだ最終結果には至っていませんが、「無農薬、無肥料を考えると二重丸」という農家の方の言葉は事実です。

 今年の取組はまだまだ小さなものです。結果を云々するにはデータが不足しています。研究としての今後の取組は確たる体制のバックアップの元に進められるべきだと思います。一方で、この技術を世に出すことに関して、「技術以外の壁」をすり抜けるための現場のニーズがあります。この現場は「大変に広範な現場」です。すなわち消費者である我々自身もそこにいることを認識している「現場」です。「水問題」においては意外と薄いこの認識が、「食問題」では大変に強い状況であることを昨今のニュースは示唆しています。
 これにどう答えていくのか。。。技術だけではなく我々の姿勢も問われるときだと思います。メカニズムの解明に向けて労を厭うことなく、同時に何らかの形で現場のニーズに応えながら、この技術を確立し、広めていきたいと考えています。



2008/09/18 (水環境の浄化メカニズム)

 汚染された水域の浄化は、安全な飲料水を確保する上での必要条件ですが、マイクロバブル技術はその目的に貢献できるものでしょうか。実用化技術の確立において作用メカニズムの明確化は重要な課題であり、メカニズムが分かって始めて技術の効率化や汎用性の獲得が可能になります。
 さて、天然の水環境にマイクロバブルを供給することで水域が浄化されるという実績が報告され始めています。しかし、思ったほど技術が展開できていない要因の一つはそのメカニズムに不明な部分がまだ存在していることにあります。もちろん完全に解明するには長い年月が必要でしょうが、技術展開においてある程度の見通しが立てられる程度の情報は獲得しておく必要があります。
 湖沼など閉鎖性水域の環境改善において、低層域におけるDO値(溶存酸素濃度)の向上が技術の一つの目的として議論されることがあります。基本的には理にかなった考えだと思います。当方自身もまだ勉強中の身でありますが、低層域の酸欠状況が改善できれば、底泥からの栄養塩類の溶出も防止することができ、その効果は疑うべきことではありません。これに加えて我々が注目しているのは生態系への影響です。好気的な微生物が活性化されることで、植物や魚介類を含めた生態系が活性化されて、閉鎖性水域を浄化する、そのメカニズムを詳細に捕らえることが重要だと思います。
 我々は微生物の世界は分かりませんが、幸いにも多くの仲間を得ることが出来ました。閉鎖性水域を、生態系と物理化学的現象の相互作用を含めた一つのシステムとして捉えて、マイクロバブルの効果を明確化しくべきだと考えています。可能なことと不可能なことを十分に認知した上で、一つの技術体系を作り上げる段階になったと思います。



2008/09/09 (ホームページ開設1年目を迎えて)

 大量によせられる質問や相談事に答えながら、論文や提案書、特許類の作成、自分の手を動かしての実験、企業や大学などの方々との共同研究の推進など、お陰様で充実した日々を送らせていただいています。
 さて、そのような状況の中でも、このホームページを開設して早いもので1年が経過しました。ここに記載したことは基本的には当方が行ったことであり、自分で確認した上で間違いないと確信したことを記載しています。それでも生身の人間ですから思わぬ落とし穴に気付くこともあります。
 先日来、ナノバブルを利用した種子の初期成長実験を行っているのですが、以前から気になっていたことを丹念に確認したところ、正確さに疑問がある点が見つかりましたので、報告かたがた修正します。
 共同研究相手のREO研究所では、今では塩分をほとんど含まないナノバブル水の製造にも成功していますが、以前のものは海岸近くの地下水を利用していました。この地下水から作った酸素ナノバブルにも、淡水魚や海水魚を共存させたり、植物の初期成長を促す効果を認めています。ただ、以前から疑問点にも関係していますが、この水を逆浸透膜に通して塩分の大部分を除去した水について、効果のいくつかは大きく減少するものの、例えば通常海水をこれで希釈した場合でも淡水魚と海水魚の共存が可能(むしろ、より有効)であるなどの効果が認められます。ところが、植物に対しては全く効果が無く、以前から大きな謎の一つとして捉えていました。
 まだ追加実験中ですが、今回の取組における以前の酸素ナノバブル水を使った実験において、地下水に混在する成分が植物の初期成長に有効に作用していた傾向が認められました。マイクロバブルについては、水耕栽培などで非常に大きな成果が得られており、またナノバブル水田については同じ成分でありながら全く異なる傾向が認められていますので、微小気泡が植物に与える効果を疑うものではありません。しかし、かって自分自身が実施した実験に関して、本文中の記事において不正確さが認められましたので、これを改めておきます。具体的には、酸素ナノバブルにおける種子の初期成長の部分を削除します。なお、追加実験の結果等については改めて記載いたします。
 1年が経ち、ホームページの内容も更新したい部分がかなりあります。特に閉鎖性水域の環境浄化や排水処理などが目に付いています。知財関係も考慮しながら、時間に追われた中での作業になりますが、ボチボチ進めていきますので、今後ともご愛顧いただけますと幸いです。



2008/09/08 (自然界におけるマイクロバブル)


 マイクロバブルやナノバブルは自然界に存在するものでしょうか? 以前は否定的でした。かっての私はマイクロバブルの発生には究極な動作が必要と考えており、優しい(?)作用しか期待できない自然界では不可能と考えていました。 しかし「水中で消滅する泡=マイクロバブル」という観点から考えると、仮に発生時点においては50μm以上の気泡であっても、波などに伴う乱流状態の中でたまたま下降流を受け続けた場合、溶解により気泡は微細化していき、ついにはマイクロバブルレベルの気泡に至ると考えられます。つまり、頻度的には人工的な方法に遙かに及ばないものの、マイクロバブルは存在します。 
 では、自然界におけるマイクロバブルの役割は何でしょうか?


 想像は限りなく広がります。原始海洋における生命の誕生への貢献、生まれたばかりの幼い生命をはぐくむ波やせせらぎ。。 驚くべき海の活性力。。 皆様も想像を膨らませてみては如何でしょうか。 なお、淡水よりも海水の方が遙かにマイクロバブルが生じやすいこと、およびマイクロナノバブルとして残存しやすいことを付け加えておきます。



2008/09/01 (超音波キャビテーションとマイクロバブル)

 微小気泡を研究対象とする人間にとって超音波は大変に魅力的な対象です。私自身はこの分野に造詣が深いわけではありませんが、マイクロバブルの研究を進めるに当たって多くの示唆を受けることができました。
 「マイクロバブルの圧壊」という言葉を私自身は使っています。ただ、現時点における認識として、この表現はあまり適切ではなかったのかな、という思いがあります。この「圧壊」という表現は、超音波工学から借用した言葉であり、超音波と同じような効果、すなわちフリーラジカルの発生を実現するために施した工夫に関連しています。
 超音波の魅力の一つは、フリーラジカルの発生です。水中における超音波は、その音圧変動の過程において微小な気泡を発生させます。気泡の大きさは数十ミクロン程度といわれていますので、ちょうどマイクロバブルと同じような大きさです。ただし、この気泡は強力な音圧変動という条件下で存在するものであり、急速な生成と消滅を繰り返すのが特徴です。そのため通常の気泡とは著しく異なる特性を示します。その一つが断熱圧縮による「超高温度場(ホットスポット)」の形成です。気泡は気泡径に反比例して内部気体が加圧されており、超音波では1/1000秒のオーダーで気泡が潰されるため、急激な圧力上昇に伴って温度が急上昇し、消滅の瞬間には数千度〜数万度といわれる超高温度場が形成されます。その結果として、気泡内部の気体などが分解され、水酸基ラジカルなどのフリーラジカルを発生させます。また、ソノルミネッセンスと呼ばれる発光を伴います。きわめて強烈な圧力とともに気泡が破壊される、という意味なのでしょうか、この現象は「圧壊」と呼ばれます。
 さて、当初は低濃度型のマイクロバブル発生装置を利用していたため、フリーラジカルの発生は確認できませんでした。また、これでは化学物質も分解できないと思いこんでいました。そこで、超音波と同じような現象を起こすために、様々な工夫を試みました。その一つが衝撃波による「マイクロバブルの圧壊」です。マイクロバブルは水中で消滅しますが、超音波に比べると著しく遅いため、断熱圧縮には至りません。すなわち、圧力上昇は期待できても、温度は高くはなりません。これでは何もおもしろい現象は起こらない。そうであるならば、気泡を強制的に叩き潰してやろう、と考えました。水中放電を利用することにより、大量のフリーラジカルを発生させることに成功しました。
 ところがその後、悩ましい現象が次々に起こってきました。その一つが自然放置したマイクロバブルからのフリーラジカルの生成です。特別な刺激を与えなくてもマイクロバブルが「圧壊」をしているわけです。
 いったい何故。。。。その答えは表面電荷の濃縮にあると考えています。マイクロバブルでは、ある程度の長い時間、気液界面が存在します。その時間の中で、界面に一定の秩序が形成されます。この秩序は電荷(イオン)の集中を生み、それが収縮過程の中で蓄積し、消滅の瞬間に解放される。詳細は他の箇所に記載していますが、これがマイクロバブルの圧壊現象であると理解しています。ただし、このメカニズムによれば、この現象は「圧壊」という表現には合致していないと今は考えています。

 超音波は気泡の「内側」の現象に関与しており、マイクロバブルはむしろ「外側」、正確には「(外側)界面」の現象というのが今の認識です。そしてマイクロバブルの応用の一部はここを基軸として展開させています。フリーラジカルの発生、ナノバブルの安定化、植物や生物に対する活性(抑制)効果などがこれに当たります。この論理展開は、今のところ上手く機能しているように感じています。

 余談ですが、マイクロバブルが光るか、と聞かれたとき、かっては否定的でした。というよりも、5年前は確認することができませんでした。ある人物の話を聞き、写真を見せられながらも自分の目では確認できない。ある種の罪悪感すら感じながら、超高感度カメラやルミノールの実験などを行いました。しかし、超音波が輝くほどの光を発するのに対して、マイクロバブルは暗闇の世界でした。ただ、今は認識が変わり、「それも有りかな」と考えています。これも使い方の範疇のものと思います。水質などの工夫により光らせることも不可能ではないかも知れません。だだし、今のところ工学的な意味は私には見えません。



2008/08/22 (小宇宙としてのマイクロバブル)


 まだ幼かった子供の頃、百科事典の一枚の挿絵に大変に心を動かされた思い出があります。それは白黒で書かれた絵画であり、「宇宙の果て」に興味を持った男がその「境界」から外に頭を出して宇宙の秘密をのぞき見しているものでした。髭の生えた太陽や月などがいくつも宙に浮かんでいたような記憶があり、子供ながらに痛く好奇心をそそられたものです。
 さて、いつの間にか大人になり、宇宙の果ては知りようもない謎と諦めてしまった今日この頃ですが、水中に漂う気泡には果て(境界)が存在しています。この境界、これは2つの異なった相、すなわち気相と液相を分けるものです。「気相」側に面白味があるのか否か、私には分かりません。一方、「液相」側には、境界が存在することで大変に興味深い物理現象が発生します。
 水の「クラスター構造」という表現を目にすることがあります。水には構造があってこれが細かくなると美味しくなるだの、健康に良いだの、という謳い文句が述べられています。私はこの点については信じておらず、単純に水がH2Oのみであるならば、構造は存在するものの、大小を議論できるものではないと考えています。ただし、ここに「別物」が関与してくると話は変わるはずです。その別物の一つが「境界」です。
 水分子は水素結合ネットワークという「構造」を形成しています。分子としての形状や水素原子の特質が原因となって、一つの水分子は周囲の水分子との間で相互作用を生じます。その結果、形成されたのが水素結合ネットワークです。同義語ではないかも知れませんが、「クラスター構造」に対応します(ガチガチの構造ではなく、瞬間−瞬間に形成されるものと思います)。
 さて、ある水分子が境界付近に位置していると、このネットワークはどうなるでしょうか? 境界近傍の水分子にとって一方には手を繋ぐ相手がいないわけですから、当然のことながらバルク中とは異なります。その結果、ネットワークの構造そのものがバルクと境界近傍では異なってしまいます。このことは界面における誘電率などの物性から確認されています。以上は「既知の事実」ですが、マイクロバブルの帯電の「研究」により新たな発見がありました。
 気泡が電気を帯びている。実に不思議な気がしますが、これは界面における水の構造に起因しています。水のネットワーク構造を作る「材料」としては、水分子の他に、水素イオンと水酸基イオンが関与していると考えられます。これらは水そのものが解離して生じたものです。どうやらバルクと界面とを比較した場合、ネットワークを作る積み木の材料の割合が異なるようです。すなわち、界面においては水素イオンや水酸基イオンが使われる割合が高く、特に水酸基イオンが界面の構造中に多く取り込まれます。その結果として、中性からアルカリ性のpH条件下では気泡はマイナスに帯電しています。一方、強い酸性条件では、全体的に水素イオン濃度が高い中での作用になりますので、界面においては水素イオンの割合が多くなり、気泡はプラスに帯電します。
 科学技術における解釈(仮説)は何らかの方法で確認する必要があります。そこでこんな実験をしてみました。アルコールをドボドボと入れた水の中でマイクロバブルを発生しました。アルコールにはたくさんの種類があります。このうちメタノールやエタノールは炭素が1つないし2つであり、特徴として水とよく混合します。ところが炭素量が増えると水との相性が悪くなってきます。ブタノールやプロパノールなどは疎水的な性格が強くなるため、水と混ぜると、気液界面にはじき出される傾向が出てきます。さて、界面には水が独自の構造を作っていますが、ここにアルコールが押し入ってくるとどうなるでしょうか? 結果として、構造が破壊されてしまいます。正確には、別の構造が形成されます。当然のことながら気泡の電位は大きく変化します。アルコール分子は、基本的にはイオンではないので、電位に影響しないはずですが、プロパノールよりも炭素量の多いものでは電位が劇的に変化します。これを一つの事実として気泡の帯電(気液界面の電荷)に関する理論を組み立てました。なお、この理論は、単に気泡のみに関与するものではなく、コロイドや水の界面現象を理解する上でも重要な基礎になると考えています。また、幸いなことに、このことについて記載した論文は、マイクロバブルとは関係のない分野の研究者にも徐々に取り上げられています。
 ところで、マイクロバブルを宇宙になぞらえた理由は、その収縮にあります。ビックバン後の宇宙は拡張し、いずれは収縮するという仮説がありますが、マイクロバブルは収縮します。ここで興味深い現象が、気泡を取り巻く水に認められます。すなわち水の状況が変化します。気泡自体にも強烈な加圧条件になるという変化が認められますが、気泡を取り巻く水においては「界面におけるイオン類」の濃縮が生じます。これはゼータ電位の急上昇として確認することが出来ます。
 時間にゆとりがあった頃、宇宙の本を読みあさったことがあり、その中で宇宙の中に宇宙があるという考えを目にしたことがあります。これを気泡に置き換えると、通常の気泡は水という「外宇宙」の中を上昇して、大気との境界で破裂して消滅します。これに対してマイクロバブルは、水という大きな宇宙の中で、縮小してついには消滅します。すなわち気泡という一つの「宇宙」が消え去るわけですが、この現象は外宇宙に多大な影響を及ぼします。この作用を工学的に利用するのがマイクロバブル研究の一つの方向であると考えています。すなわち電荷の濃縮という現象に付随して起こる「効果」を有効な技術として確立する取組です。
 その一つがフリーラジカルの発生です。濃縮した電荷は気泡が消滅した瞬間にフリーラジカルとして発散されます。この効果は、汚された水や環境を浄化するために利用できます。また、半導体などの工業分野などの洗浄作用にも利用できます。これとは別の興味深い現象は、イオンの濃縮が気泡を取り巻く「殻」として作用することです。これは消滅直前の気泡(小宇宙)が一時的に安定化するという効果を生じます。これがマイクロナノバブルであり、ナノバブルです。これは医療やバイオ、食品、農水産業などの分野において、非常に新しい切り口になる対象です。これらに関しては、メカニズムよりも現象の確認(応用)が著しく先行しています。そのため根幹となる基本をどの様に捕らえるかが最重要な課題です。

 「宇宙」の消滅は「光」を発するものではありませんが、超音波における宇宙の崩壊は著しい発光を伴います。そのためマイクロバブルは超音波のキャビテーションとは異なった現象であると考えています。これらの認識が徐々に広がりを見せながら、小さな気泡の世界においても新たな宇宙が育ちつつあります。 これら宇宙とのつながりは重要な課題であり、このネットワークが光り輝くとき、新たな時代の幕開けになると思います。



2008/08/12 (気泡核とナノバブル、そしてマイクロバブル研究) 
    

 物理学的な観点からは、気泡核とは「あるはずがない存在」なのかもしれません。でも水の沸騰や生理学における減圧症などを対象としたときに、気泡核抜きでは様々な現象が説明できません。
 減圧症とはダイバーが空気ボンベを背負って水中で活動し、水面に上昇するときに起こる症状です。空気中には窒素が含まれており、水中下では水深に応じて圧力が加わるため、ダイビングンの過程で大量の窒素が体内に溶け込みます。この状態で急激に浮上すると、肺から排出される窒素が追いつかずに過剰となったガス分子が体内で微小な気泡を形成します。この気泡が血流の阻害や神経の圧迫などの原因となり、様々な障害を引き起こすのが減圧症です。ところが物理的な常識から考えると、たかだか水深30m程度の環境で生じた過飽和条件で気泡が生成するわけがありません。また、ビーカーをきれいに洗って、蒸留水を注ぎ込み、注意深く加熱すると105℃位まで水温が上昇します。工夫すれば大気圧環境下で水を250℃以上に加熱できます。ところが、水は100℃で沸騰するのが「常識」です。これらを解釈するために考え出されたのが気泡核です。すなわち、水中にはもともと「気泡の種」が存在しており、環境が過飽和条件(もしくは沸騰条件)になったときにこの気泡核が成長して気泡になる(沸騰する)というものです。
 この気泡核についての詳細な説明は今後に譲りますが、極めて微小な気泡が実体であり、物理的な常識に逆らって安定化している存在です。そして「ナノバブル」と似通った存在でもあります。
 ところで、「マイクロバブル」の一生は、水中に気体が吹き込まることで誕生し、水の中での縮小過程を経て、ついには水中で消滅することで終了します。実は、私自身のマイクロバブルの研究はこの気泡核から眺めることが出発点でした。これはマイクロバブルの一生という時間の流れから考えると「逆からのアプローチ」を意味するものでした。
 気泡核の安定化のメカニズムにはHarveyの理論などのいくつかの説があります。そのなかで極めてマイナーではありますが、微小な気泡の周りにイオンが集まることで安定化しているという説があります。これらの概念も頭の片隅に置きながらマイクロバブルの研究を進めているとき、気泡の電荷を調べている過程で、ある興味深い現象を目にしました。それはマイクロバブルが水中で縮小するときにゼータ電位が急上昇するというものです。これは気泡の周りに電荷(イオン類)が急激に濃縮していることを意味しています。その時に頭をよぎったのが「マイクロバブルは本当に消滅するのだろうか」という疑問でした。
 研究の進め方はいろいろあると思いますが、私自身はマイクロバブルの研究を帰納と演繹を繰り返しながら進めています。すなわち、いろんな現象を説明するための仮説を立て、次にその仮説をもとに未知の現象を予測する。そしてその現象を実証することで仮説の良否を判断する。失敗も多くて地道な作業ですが、営々とこれを続けていきます。
 「真実か」と問われると100%と言える自信はありませんが、ナノバブルは存在します。このナノバブル(およびマイクロナノバブル)とは、マイクロバブルが水中で縮小しながら消滅する過程で「中休み」した存在と考えています。中休みの原因は気泡の周囲に濃縮したイオン類です。この中休みを解除してやると、マイクロバブルの消滅時に認められる特有の現象を目にすることができます。その一つがフリーラジカルの発生であり、ナノバブルの存在を示す証拠の一つと考えています。
 もしも私が「マイクロバブルの発生」を研究の出発点としていたならば、このような非常識には考えが及ばなかったと思います。マイクロバブルにも不思議な効果がありますが、それを解釈するために「発生の秘密」の物語(!?)をひたすら述べていたかもしれません。私にとって幸いなことは、ナノバブルを肯定することでマイクロバブルに関する様々な現象の本質が多少なりとも理解できていることです。
 現在、マイクロバブルやナノバブルに関しては、当方だけでなく様々な方が応用を含めた検討を行っています。見ず知らずの技術者や研究者から質問を寄せられることも多く、その現象の解明にこれらの仮説が有効に機能しています。それにより相手方のみでなく、私自身の理解が深まることも稀ではありません。またこのようなやり取りは、私自身のモチベーションを維持するうえでも大変に有り難いものです。


2008/8/2 (連携の必要性と可能性)

技術面での基礎体力の低下が懸念され始めている我が国ですが、過酷な国際競争にさらされている分野では、国内のライバル企業同士であっても連帯を強めている例を目にすることがあります。幸いもマイクロバブルにおいては諸外国に比べて一日の長がありますが、技術の蓄積は乏しいため、程なくその優位も揺らぐことと思います。技術に国境はなく、当方も含めて研究者による情報公開は海外における強いライバルの出現につながります。 ライバルとの切磋琢磨は技術向上のドライビングフォースですが、国内での状況を鑑みると、海外に本腰を入れて取り組まれたときに苦戦を強いられるかも知れません。 それを打ち破るために相互の連携を進めることも重要と考えています。半導体洗浄が一つの事例になることを願っていますが、水処理の分野ではそれが必要なものかどうか。農業や水産、医療やバイオなどでは違った切り口もあり、おのおの見極めが必要かもしれません。産総研という立場での協力になりますが、当方なりに模索しています。


2008/7/28 (エンジニアリング会社)


 近頃は、以前にも増して、排水処理関係の技術相談が増えています。現在も数カ所からの排水を処理実験しており、依頼者に対して何らかの回答ができるように検討を進めています。
 その一つは産業廃棄物処理の業者からの相談です。現在は活性汚泥法により処理しているものの、COD成分が高いレベルで残存してしまうため、総量規制の点から大変に困っているとの相談です。いくつかの対処法が考えられますが、基本的には活性汚泥処理後の排水に対してマイクロバブル処理をすることを提案しています。この場合にはその方がリスクや初期投資も少なくてすみます。
 今回の業者も「ある著名な」マイクロバブル発生装置を購入されて自分らで試験を行ったようです。ところが何ら結果が出ないため、「マイクロバブル」は役に立たないと判断されたようです。しかし、他に対策がなかったこともあり、担当者がこちらに相談に見えられました。
 現場への導入が具体的に見えたときには、実用的な専門技術を持っているREO研究所(共同研究相手)にお願いしますが、我々も頂いた排水で様々な試験を実施させていただいています。実排水を入手できるというのは、相手方からの信頼の現れであり、また技術開発を進める上で大変に貴重な機会です。
 さて、その排水についてですが、特別な困難もなく処理可能でした。排水の汚染度はBODCODで評価されます。BODは微生物による処理に関係し、CODは化学的な処理に関係しています。この排水は活性汚泥処理されているため、BODは低い値でした。ところが、CODがかなり高いレベルで残存しているため、これを半分程度にしたいとのことでした。そこでオゾンマイクロバブルを利用して数時間の処理を行ったところ、COD1/10程度になりました。一方、BOD8倍程度と大きく増加しました。現象としては、難分解性のものが生物分解性に優れた物質に変換されたと解釈しています。なお、BODの増加は現実的な問題ではなく、再度の微生物処理で対応できました。ところで、今回の試験では高濃度タイプのマイクロバブルを利用しましたが、実際にはこれは現実的ではありません。ランニングコストを考えると、導入時にはシャフトタイプ(低濃度型)で処理することになると思います。参考のために追記しますが、通常のオゾンバブリングではTOC(全有機炭素量)比較に基づく処理効率は1/10以下のレベルでした。
 マイクロバブルは可能性に満ちていますが、本当に役立つ技術にするためには、使い方が重要です。我々においても失敗は多いのですが、それを含めて確立したノウハウは順次に情報公開していきます。同時に、エンジニアリング会社をいくつか選定した上で、具体的な技術提供を開始します。排水処理関連と電子部品の洗浄関連について実施します。技術は使っていただいて始めて意味を持つものですので、何卒よろしくお願い申し上げます。


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