3.6.オゾンナノバブル
オゾンナノバブルは多少の電解質の存在下でオゾンを含むマイクロバブルを圧壊させて制作したものです。その大きな特徴は長期の持続性と非常に優れた殺菌能力にあります。オゾンがガス分子として実際に存在しているか否かについての確認は難しい課題ですが、オゾンナノバブル水自体のその特性は通常のオゾン水と同様であり、効果はむしろ強力です。
通常のオゾン水は水中にオゾンガスをバブリングすることにより作成することが可能です。バブリング方法としてマイクロバブルを利用した場合には、その優れた溶解効率やマイクロナノバブル効果(多少の残存性)により、質的に優れたオゾン水を敏速に作ることができます。しかし、基本的にはオゾン水の特性が変わるものではありません。これに対してオゾンナノバブルの場合は、持続時間が極めて長いことが一因となって、全く異なった利用の方法が可能になります。それは「薬液」としての利用です。通常のオゾン水は発生させたその場で利用することが基本になるため、現場において、バブリング用の装置やオゾン発生装置などの設備が必要となります。また、排オゾンの対策も必要です。これに対してオゾンナノバブル水は容器に入れた状態で持ち運びや保存が可能であり、余計な付帯設備を必要としません。
通常のオゾン水は数時間程度しか効果を維持しないのに対して、オゾンナノバブル水の場合は、紫外線カットの条件で保存することにより、数ヶ月後でも同じ効果を保っています。また、殺菌能力にも優れています。カキの殺菌を例に取ると、通常のオゾン水やマイクロバブルによるオゾンのみでは表面は殺菌できても、体内を殺菌する効果は期待できません。ところがナノバブルの場合には体内まで効果を及ぼすことが可能です。オゾン濃度が約1.5mg/L相当のオゾンナノバブル水に殻付きのカキを入れて8時間の蓄養を行ったところ、カキは問題なく濾水を行っており、試験終了時においても元気でした(下図(上)を参照)。処理前にネコカリシウイルスを捕食されたところ、99%以上が不活化されていました。ネコカリシウイルスはノロウイルスの代用として利用されるものであり、カキから離脱しやすい特徴はありますが、不活化を調べる上では問題ないと考えられます。なお、この技術は既に数カ所の水産業者に導入されており、商品に対してのクレーム数が激減するという成果として現れています。

オゾンナノバブル処理前(左)と処理後(右)のカキ
下図は実用的にコンパクトなシステムとして開発されたものです。このシステムは、オゾンのマイクロバブルによりオゾン水を作り、これに少量のオゾンナノバブルを添加することで両者の長所を組み合わせたものです。このシステムは水産分野のみではなく、カット野菜の洗浄や配管の殺菌など、様々な分野での殺菌洗浄に利用が可能です。

マイクロバブルとナノバブルを組み合わせた殺菌浄化システム
また別の例としては、オゾンナノバブルの効果はコイヘルペスに対しても認められています。発病した鯉を0.1%程度のオゾンナノバブル水を加えた水槽において飼育することで健康状態を回復させることができました。体内のウイルスが不活化されたか否かの確認はしていませんが、利用可能な技術の一つとして考えられます。さらに、東京都健康安全研究センターでは感染症の予防対策の研究を実施しています。森氏によると、50mlの試験水で手洗いを行った実験では、手に残留したネコカリシウイルスの生存率が、強酸性電解水に比較してオゾンナノバブルの場合には1/10以下であり、より高い不活化率を示しています。通常の手洗いと併用することで食品や医療機関などでの衛生管理に貢献できます。また、オゾンナノバブルは噴霧状態にしても効果が維持されることも大きな特徴です。通常のオゾン水では噴霧にするとオゾンは分離してしまうが、オゾンナノバブルの場合には酸化能力換算で8割程度が持続しており、落下菌対策などとして利用することが可能です。特に、鳥インフルエンザや各種感染症の問題があり、鶏舎や豚舎などの畜産設備における殺菌対策が重要になっていますが、ガス状オゾンのように動物に過剰な刺激を及ぼさないため、効果的な環境殺菌技術として利用できる可能性が高いことが重要な特徴です。

オゾンナノバブル水を超微細噴霧にしても殺菌力を維持
オゾンナノバブルの安定化メカニズムとしては、微小気泡自体の安定化の他に、オゾンの効果を安定化させる機序が必要です。製造過程において、電解質イオンを含む水中でオゾンマイクロバブルを強制的に圧壊させると高濃度のイオンを身にまとった状態で数十nmサイズの気泡として安定化しますが、同時に電解質イオンの一部は過酸化状態になります。気泡内に気体状オゾンが残留しているか否かは確認できていませんが、気液界面における過酸化状態のイオンがオゾンナノバブル水の強力な殺菌能力に重要な役割を果たしていると考えられます。なお、オゾンナノバブル水を蒸留させたときに、水分が残っている限りは酸化能力を維持しますが、一旦でも乾燥してしまうと水を再度添加してもただの塩水になってしまいます。気泡としての気液界面の存在が酸化能力の維持に貢献している可能性が考えられますが、これらの点も今後の検討課題です。