| 産業技術総合研究所における地熱調査 |
| 2-1-4-3.地熱活動の監視・観測 |
| a)薬師岳山頂部における地熱観測 1998年の地殻変動・地震活動では地下浅所にマグマが貫入したと考えられていたことから、これに関連して地表部に熱的な 影響が現れることが予想されたため、1998年8月より薬師岳山頂部において地熱活動の監視を行った。観測は(1)地中に埋積した温度計による地中温度観 測と、(2)赤外熱映像カメラによる地表温度分布の定点繰り返し観測である。 地中温度観測は、薬師岳山頂部(薬師岳火口東縁と妙高岳中央火口丘山腹の噴気地域)に3側線(1側線につき8観測点、総延長約300mで24観測点。観 測点は地表から約1mに埋設)を設け実施した(図6)。観測データは地下に埋設したデータロガーに保存される方式をとり、年間数回の頻度でデータの回収・ 解析を行った。この長期観測は、データロガーが落雷により破壊される2002年まで実施した。観測結果は、薬師岳山頂部の地熱地域で観測された最高温度は 沸点温度と常に同期して変動し、この地域の地熱系は安定状態を保持しており、新たな高温の火山ガスが上昇してきたような活動の変化は確認できなかった。 赤外熱映像カメラによる観測は、1999年9月18日および2000年9月15日に成功した。観測はAvio社製TVS-620で、測定視野角 25.8°×19.5°の35mm標準レンズを用いた。岩手山山頂域における全体的な熱異常の経時変化を捉えるため、薬師岳火口縁の3箇所に観測定点を設 け、できる限り同一条件で繰り返し観測を行った。1999年9月18日(測定時の気温14℃)には良好な赤外熱映像画像の撮影に成功し、これを用い、 Sekioka & Yuhara (1974)の手法で、薬師岳山頂部の地熱異常地点からの総放熱量を見積もると0。15kWとの結果が得られた。2000年9月15日(測定時の気温 12℃)にも良好な赤外熱映像画像が得られた。これによる総放熱量は1999年の観測と変化が認められず、岩手山山頂部における熱活動は低いレベルのまま 保持されたと考えられる。尚、1999年に黒倉山-姥倉山稜線部全域からの放熱量は2。6MWと見積もられた。 これらの観測結果については、データの回収・解析の結果を待って、1999年2月以降随時火山噴火予知連絡会等に報告を行った(松島ほか、1999, 2000、2002)。 |
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図6 岩手山山頂部の地熱観測地点。 地中地熱観測側線と熱赤外映像カメラ撮影定点の位置を示す。) |
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| b)土壌ガスを用いた熱異常調査 |
| 地殻変動の中心であった岩手山の西部地域における地熱異常の範囲や
活動度を確認するために、金線法による土壌空気中水銀モニタリングを1999年7月〜11月、2000年7月〜9月に実施した。調査範囲は姥倉山から犬倉
山を経て三ツ石山にいたる稜線から南方の東西約4。5km×南北約3km地域で、登山道および林道沿いに11の観測点を設けた。この地域では1989年に
地熱探査として同等の観測が実施されていたことから、そのデータと比較することで1999年以降の火山活動に伴う地熱異常が捉えられた。1999年の観測
の結果、姥倉山および三ツ石山登山道沿いで10年前に比べ水銀濃度が増加する傾向が確認された。2000年に実施された観測結果でも姥倉山〜三ツ石山稜線
部で濃度異常は認められたが、水銀濃度はそれほど極端に増大していなかった。岩手山西部地域への地震活動や地殻変動が1998年に比べ1999年以降低調
に推移したことと併せて考察すると、姥倉山より西方部への地熱異常が1999年以降低下した傾向を示していたものと考えられる。これらの観測結果について
は、観測結果の解析を待って、2000年2月以降随時火山噴火予知連絡会に報告を行ってきた(野田・須藤、2001、 2002)。 |
| c)人工
衛星画を用いた地熱異常観測 |
| 広域的な地熱異常を監視する為、経済産業省が開発した将来型資源探査
センサ(ASTER)を用いて、熱赤外および可視赤外観測を実施した。 熱赤外観測は2000年10月30日の夜間に成功した(図7)。これにより、岩手山大地獄谷、黒倉山山頂部、姥倉山登山道分岐点および網張温泉元湯にお いて、地熱異常地点の存在を確認することができた。また、可視近赤外観測は2000年9月21日早朝に成功した。この観測によりも黒倉山から姥倉山にいた る登山道に沿って、ほぼ東西方向に配列する2-3列の植生破壊域を確認することができた。これらの観測結果は,2001年2月5日の第88回火山噴火予知 連絡会において報告を行った(伊藤・浦井、2002)。 |
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図7 人工衛星(将来型資源探査センサASTER)による地熱異常観測。 上)2000年10月30日に撮影に成功した岩手山の熱赤外画像。1ピクセ
ル約90m。
下)画像処理により地表温度急変域を強調した画像。a; 御苗代湖、b; 大地獄谷噴気地点、c; 黒倉山山頂部の高温部、d; 姥倉山登山道分岐地点の高温部、e; 網張元湯 |
| (謝辞) 岩手山山頂部における地熱観測においては、気象庁盛岡測候所、岩手県総務課総合防災室、岩手山神社、土壌ガス観測においては(株)地熱エンジニアリン グ、ASTER画像解析においては通商産業省(当時)のご協力を得た。記して感謝する。 |
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(引
用文献)
Sekioka, M. and Yuhara, K. (1974) Heat flux estimation in geothermal areas based on the heat balance of the ground sirface. J. Geophys.Res., 79. 2053-2058. 松島喜雄・篠原宏志・風早康平(1999)岩手山妙高岳周辺の地温観測(1998年8月〜1998年10月).火山噴火予知連絡会会報,73,27-29 松島 喜雄・篠原 宏志・風早 康平(2000)岩手山妙高岳周辺の地温観測(1998年8月〜1999年9月).火山噴火予知連絡会会報,75,47-51. 松島 喜雄・篠原 宏志・風早 康平(2002)岩手山妙高岳周辺の地表面温度.火山噴火予知連絡会会報,79,52-54. 野田 徹郎・須藤 茂(2001)金線法による岩手山西部の土壌空気中水銀モニタリング(1999年7月〜1999年11月).火山噴火予知連絡会会報, 76,39-43. 野田 徹郎・須藤 茂(2002)金線法による岩手山西部の土壌空気中水銀モニタリング(2000年7月〜2000年9月).火山噴火予知連絡会会報,79,63-64. 伊藤 順一・浦井 稔(2002)将来型資源探査センサー(ASTER)を用いた岩手火山観測--熱赤外画像による地熱異常地域の把握--.火山噴火予知連絡会会報,79, 55-56. |