5万分の1地質図幅「岩ヶ崎」地域の火山層序: 第三紀火山岩類及び鬼首カルデラを起源とする火砕流の噴出年代

土谷信之(地質調査所・地質部)・伊藤順一(同・環境地質部)


宮城県北西部の 岩ヶ崎地域付近は、第三紀中新世中期から第四紀まで火山活動が断続的にあって、東北日本前弧側の火山活動の時代変遷を考えるうえで良いフィールドである.第三紀中新世中期から、火山フロント付近にあったこの地域では、安山岩主体の火山活動と、カルデラを伴う火砕流の噴出活動が断続的に行われてきた.第四紀に入ってからも、鬼首カルデラ・鳴子カルデラの活動が起こり数立方kmにも及ぶ火砕流堆積物が本地域を広く覆っている。

第三系

 中新世の火山活動は細倉層と葛峰層の安山岩が主に浅海で噴出していて、葛峰層安山岩の年代は11.6±0.6Maである.このあと花山沢層と小野松沢層のカルデラ形成と火砕流噴出があり、花山沢層火山岩礫の年代は9.2±0.7Maである.鮮新世には、陸上で大土ヶ森デイサイトの溶岩が噴出し、その年代は5.5±0.1Maであり、厳美渓火砕流の噴出とほぼ同時代である.鮮新世後期から更新世には、小野田層の火砕流が噴出し、その年代は3.3±0.5Maから0.62±0.10Maの年代である.また、中新世後期とみられていた薬莱山火山岩は1.04から1.68Maの年代を示し、更新世の火山であることが判明した.

第四系

 本地域には、従来“北川石英安山岩(北川溶結凝灰岩)”として一括されてきた凝灰岩が広く分布している。北川溶結凝灰岩はIshida(1981)、北村ほか(1981)などによって、4つの凝灰岩(下位より池月凝灰岩、下山里凝灰岩、荷坂凝灰岩、柳沢凝灰岩)に区分されることが明らかになってきた。また、この内、荷坂・柳沢凝灰岩は鳴子カルデラを噴出源とすることが早田(1984)により報告されている。本報告では、新しく年代値が得られた池月・下山里凝灰岩について簡単に記述する。

 池月凝灰岩  鬼首カルデラから噴出した普通角閃石含有普通輝石紫蘇輝石流紋岩質の火砕流堆積物(基底部に火山灰層を伴う)で、噴出体積は約18km3と推定されている(坂口・山田,1988)。これまで報告されてきた池月火砕流の噴出年代の多くは1.7-2.4 Maの範囲にあった(山田ほか, 1978:Yamada, 1981など)。しかし、今回ジルコン100粒子によるF.T.年代測定によって、0.25±0.08 Maとの結果が得られた。

 下山里凝灰岩  鬼首カルデラ北東部〜南東部に分布する普通輝石紫蘇輝石デイサイト質の火砕流堆積物で、総噴出量は約2km3と推測される。火砕流とその基底部の火山灰層の分布等から、噴出源は鬼首カルデラと推定される。下山里火砕流の噴火年代としては89〜171kaとの報告がなされてきた(主にTL法による:市川・平賀, 1988:橋本, 1993等)。今回、F.T.年代測定(Zr, 100粒子測定)により0.21±0.09 Ma との結果が得られた。  今回得られた年代値の意義  鬼首カルデラは北川溶結凝灰岩の噴出後に形成し、その年代は2.7-1.7 Ma程度と考えられてきた(例えばYamada, 1988)。しかし、今回得られた年代測定の結果は、鬼首カルデラの形成年代が20数万年前である可能性を示唆している。カルデラ形成からその後の造構運動を経て高日向溶岩ドームの形成に至るまでの、鬼首カルデラで発生した噴火活動の年代値についても再検討する必要があるものと思われる。