目次

1.概要
2.噴火活動史
 2-1.新島の噴火史の概要
 2-2.新島における最近数千年間の最新の噴火
 (a)若郷火山(3千年以前に噴火)
 (b)阿土山火山(3千年前〜西暦886年の間に噴火)
 (c)向山火山(西暦886年噴火)

 2-3.神津島の噴火史の概要
 2-4.神津島における最新の噴火活動(天上山火山838年噴火)  
 2-5.新島・神津島のマグマ噴出率
3.最近の地震災害
 3-1.新島の地震災害(昭和11年) 
 3-2.神津島・式根島の地震災害(昭和42年)
引用文献 =本文中の[]内の番号に対応=

2-3.神津島の噴火史の概要

 神津島は周辺の島(祗苗島{ただなえじま}・恩馳島{おんばせじま})を含めて18以上の流紋岩質単成火山から構成される(図3).苦鉄質マグマの活動は確認されていない.各火山は溶岩ドームもしくは厚い溶岩流(層厚100〜200m )を形成し,火砕流や火砕サージの発生を伴う火山もある[2, 3].

 神津島における最新の活動は,神津島中央部に位置する天上山火山の噴火で,西暦838年に起こった[7].それ以前の噴火年代については,各種の報告[8, 9]があるが,一部の火山では研究手法により順序が前後することがあり,神津島の噴火活動史は必ずしも明らかではない.

 神津島には北西−南東系の断層やリニアメントが発達し,一部の黒雲母流紋岩溶岩の噴出中心が同方向に配列する事が指摘されている[3].神戸山-穴の山-花立火山列の水和層年代は誤差範囲内に収まり[8],高処山-大沢-松山鼻火山列は火山灰層序学的にほぼ同一噴火ステージに入る[10].このことから,これら北西−南東方向に配列した火山列は,それぞれ一連の噴火活動で形成された可能性がある.

2-4.神津島における最新の噴火活動(天上山火山838年噴火)

 天上山火山は神津島における最新噴火により形成された黒雲母流紋岩質の火山体である.火砕流・火砕サージの噴出後,火砕丘を形成し,最終的に溶岩ドームの形成に至った.この噴火により噴出した降下火山灰および火砕サージ堆積物は,新島・式根島で確認することができる.古記録には,この噴火に関連すると思われる降灰が近畿地方から関東地方にかけての広い地域で報告されている.現在,伊豆大島・静岡市・丹那盆地で確認される白色火山灰は,天上山噴火による降下火山灰と考えられている[11].天上山火山の総噴出物は1.7×10^12 kgと算定される.

神津島の地質概略図. 文献[3]を簡略化.

2-5.新島・神津島のマグマ噴出率

 新島における最近1万4千年間のマグマ噴出率を,既存の報告[4, 7,12]を基に見積もると,1000年間の平均噴出率は0.57×10^12 kg/k yrとなる.一方,神津島火山における最近2.2万年間の平均噴出率は,既存の報告[2, 8, 10]に基づいて見積もると0.10×10^12 kg/k yとなる<脚注2>.

 フィリピン海プレート北端部の他の第四紀火山の平均噴出率は,三宅島の最近7000年間では約0.41×10^12 kg/k yr(最近3000年間では0.86×10^12 kg/k yr [13]),伊豆大島の最近1500年間では5.3-5.9×10^12 kg/k yr [14]<脚注3>である.これらと比較すると,新島のマグマ噴出率は伊豆大島のおよそ1/10で,三宅島の最近7000年間とほぼ同程度である.一方,神津島火山は,新島・三宅島の約1/5で,伊豆大島の約1/50である.

 新島・神津島のマグマ噴出率の算定では,地形的に保存されていない火砕物量は積算されていない.また,周辺の海底には単成火山と思われる台状や円錐状の海丘,軟弱な堆積物に覆われた火山体と思われる音響反射面が認められるが[16],これらも積算されていない.以上の点から,今回の算定結果は新島・神津島及びその周辺域のマグマ噴出率を過小評価している可能性がある.新島・神津島の噴火活動度をより正確に評価するためには,周辺海域(特に水深100m以浅の海域)の詳細な海底地形図の作成,音波探査法による構造調査,また,ピストンコアなどを用いた海底堆積物調査による火砕物の把握が必要と思われる.

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<脚注1> 新島および神津島については,火砕物の平均密度として1.0×10^3 kg/m^3,溶岩については2.2×10^3 kg/m^3を用いた.向山火山の火砕流堆積物について,噴出源から全方向に均等に分布していたと仮定して計算した.
<脚注2>神津島火山の噴出物量の積算に砕屑物として含まれるのは,天上山838年噴出物と,秩父山火砕サージ堆積物-A[10]だけである.
<脚注3>;伊豆大島火山の平均噴出率の算出には,文献[14]のTable IIIに示された噴出物量(火砕物および溶岩)に対して,火砕物に関しては平均密度1.5×10^3 kg/m^3,溶岩に関しては2.7×10^3 kg/m^3を用いて,重量換算とした.
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3.最近の地震災害

3-1.新島の地震災害(昭和11年)

  昭和11年12月27−28日にかけて群発地震が発生し,新島は多大の被害を受けた.この地震の震央は新島の西方約20kmで,最大M=6.3とされている[15].一連の地震により本村集落では家屋・倉庫等の半数以上が全壊を含め何らかの被害を受け,多数の地割れが発生した[16].地割れは新島の各火山の平坦部を作る溶岩中には一つも認められず,本村および若郷低地の火砕物及び砂丘砂層中にのみ認められた[17] .この地震による式根島の被害は新島に比べて軽微で,地割れの確認はなされていない. 

3-2.神津島・式根島の地震災害(昭和42年)

 昭和40年8月頃から神津島付近で有感地震が頻発し,昭和42年4月6日15時17分頃の地震(震央は神津島中央部,M=5.3)では,式根島で家屋の被害,神津島で地割れなどの被害が発生した[18](下鶴ほか, 1967).
 特に被害の大きかった式根島では,気象台新島分室の調査により,23箇所で地割れの発生が確認された[19].式根島は一枚の厚い溶岩流からなるが,その表面は最大3.5mに達する向山火山噴出物に覆われている.家屋はこの火砕物上に建造されることがあり,これが地震の被害大きくしたとする解釈もある[20](東京都防災会議, 1989). 
 東大地震研は,昭和41年5月および10月に神津島において高感度地震観測を実施した.その結果,天上山山体あるいはその直下,比較的浅い所に地震が発生しておらず,火山の表面活動あるいは噴火は起きないであろうと推論された[21] .

   

引用文献

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