5  微動アレイ探査法の理論開発 (新手法の開発、適用限界の把握、観測の効率化など)

 

地面は、産業活動や自然の波浪や風などによって常に揺れています。もちろん体に感じないほどの小さな揺れで、微動計(高感度な地震計)を置いてやっとわかる程度のものです。この小さな揺れは微動(ランダムノイズ)と呼ばれています。地面に複数の微動計を同時に置いた観測を微動アレイ観測といいます。下の写真はマイカーに微動計を積んで観測地点に行ってアレイ観測をしているところです(車の後ろの黒いけし粒のようなのが微動計ですが,この微動計でごく小さいアレイを展開しているのが分かるでしょうか?).

 

bido

 

微動アレイ観測によって表面波の位相速度(レーリー波、ラブ波と呼ばれる波の伝搬速度)が分かります(周波数ごとに伝搬速度が違うので分散曲線と呼ばれたりもします).分散曲線をもとにして地盤特性(S波速度構造)を推定することができます。微動アレイ観測から地下構造推定までの一連の流れを、私たちは微動アレイ探査と呼んでいます。

地下構造を決めれば地震動による揺れがどの程度大きくなるかという地盤増幅特性を見積もることができます.これは地震災害の軽減につながります!

微動探査によって地盤特性を決めるやり方は,地面に穴をほったり人工地震を起こして地震データを解析するよりも(こういうのを一般に地下構造探査と呼びます)ずっと簡単ですので,その分費用がやすくてすみます.私は微動探査が地震動による災害軽減に役立つと信じて,この探査法の魅力をどんどん追求するような研究をしています.

私たちは,研究の基礎となる数学的枠組みを「A generic formulation for microtremor exploration methods using three-component records from a circular array(微動探査のための円形アレイ3成分記録を用いた一般公式)」と題して2006年に発表しました.この理論は表面波の位相速度を推定するための空間自己相関法(SPAC法)と呼ばれる方法を一般化したものです.この理論によって私たちは,従来は取得できなかった様々な情報を微動の波動場から抽出することができるようになりました(関連PDF資料).

最近,上記の一般理論を基礎とする様々な解析アルゴリズムをとりまとめた解析パッケージをつくり,無償でダウンロードできるようにしました.詳しい内容は動アレイ解析用の公開ソフトBIDOのページで説明しています.ご興味があればぜひお立ち寄りください.

 

 

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更新2009-10