3月31日降下火山灰及び漂着軽石の特徴とその起源

2000年4月12日火山噴火予知連資料

(2000.4.17, 9.13一部訂正)

総合観測班地質グループ(地質調査所・北海道大学理学部・道立地質研究所)

1. 降下火山灰及び漂着軽石の特徴
 2000年3月31日に洞爺湖東岸に降下した火山灰と4月2日に洞爺湖東岸に漂着した軽石について特徴を観察比較しその起源を考察した.漂着軽石は,3月31日から4月2日の降灰分布域から3月31日の噴火で湖面に落下したものと判断される.
 降下火山灰は,径0.5mm以下で灰黒色,シルトサイズ以下の粒子を含み淘汰はよくない.径0.15-0.25mmの粒子の構成物は,石基鉱物に富む細かく発泡した火山ガラス[G1]が約5割(発泡度は様々),結晶片が約3割,結晶質の火山岩片[L]が約2割,その他によく発泡した石基鉱物を含まない透明な火山ガラス[G2]や褐色不透明の繊維状火山ガラス[G3]が少量含まれている(表及び図).径0.06-15mmの粒子についても多少量比が異なるものの構成要素に大きな差異はない.
 洞爺湖東岸に漂着した軽石は大きさ2-20mmで灰白色を呈する.軽石はこまかく等方状に発泡し針状斜長石と鉄鉱物からなる石基鉱物を含む.これらの特徴は降下火山灰の大部分を占める石基鉱物を含む火山灰のうち発泡のよいものと一致する.軽石は発泡のよいものだけが漂着し,発泡の悪いものは沈んだと考えればつじつまがあう.以上の火山灰及び軽石の形態と内部組織の特徴から,降下火山灰の主要部分をしめる火山灰[G1]と漂着軽石は同一起源と考えられる.

2. 降下火山灰及び軽石の起源
 3月31日の火山灰及び軽石のガラス組成は1977年軽石の組成と類似している(別資料参照).そのため軽石及び火山灰が,新たなマグマ破片ではなく火口付近の地表の1977年降下軽石層が吹き飛ばされた可能性もありうる.その点について放出量が見合うかどうか検討した.
 3月31日の火口(N1〜N12火口; 予知連資料)の面積は,約9,600m2 である.火口付近は,1977年降下軽石層の30cm層厚線のすぐ外側にある.軽石の密度を0.9として概算すると,約2200トンとなる.局所的に1977年軽石が再堆積も含めて厚い部分があったとしても大幅に増えることはない.一方,3月31日の降灰量は75,000トンであり,火口近傍での粗粒部分を含めると20〜100万トンと推定される (予知連資料,宝田ほかによる計算).以上の計算結果は,3月31日噴出物に1977年軽石が噴火により混入しても,その割合は噴出物総量よりは1桁以上小さい.このことは降下火山灰中に多量のガラス火山灰が入っている事実と矛盾する.また,地表付近にあった降下軽石層が吹き飛ばされることがあっても,噴火の衝撃で細粒に大量に粉砕されるとは考えにくい.以上の検討結果は, 降下火山灰及び軽石の起源が1977年軽石の再移動ではなく,今回の本質物であることを示唆する.

(観察:星住英夫・宮城磯治・川辺禎久・東宮昭彦)
 (試料採取:宝田晋治・山元孝広・吉本充宏・広瀬 亘)

図 2000年3月31日降下火山灰 
A; 双眼実体顕微鏡 (落斜光),B; 双眼実体顕微鏡 (落斜光及び透過光),C-F; SEM
  G1, G2, G3, L, Xは表を参照のこと

  含有量* 形状 発泡度/発泡形態 色調 石基鉱物 起源
火山ガラス[G1] 〜50% 湾曲した面に囲まれた多面体 細かく(0.05-0.1 mm程度)球状に細かく発泡する.発泡度は様々. 発泡の良いものは白色,悪いものは灰色 斜長石・鉄鉱物を多量に含む 本質
火山ガラス[G2] <3% フレーク状・T字状・平板状 よく発泡する 無色透明 ほとんどなし

異質

(洞爺火砕流?)

火山ガラス[G3] <1% やや円磨した多面体 細かく繊維状に発泡する 褐色半透明 ほとんどなし 異質
結晶片 [X] 〜30%

斜長石・斜方輝石・単斜輝石・鉄鉱物

まわりに火山ガラスが付着する場合あり

本質〜異質
岩片 [L] 〜20% やや円磨した多面体 大部分は緻密 赤褐色・黒色・緑灰色 結晶質

類質〜異質 

(変質岩が多い)

漂着軽石   多面体〜やや角のおちた多面体(平板状のものが多い) 細かく球状に細かく発泡する.発泡度はよい. 灰白色 斜長石・鉄鉱物を多量に含む 本質

Us-1977-II

Us-1977-III

  多面体 細かく球状〜チューブ状に細かく発泡する.比重 0.6〜1.7** 白色〜灰白色 少量の斜長石・鉄鉱物(±)を含む (ユニットごとに量がことなる)  

 *0.15-25mm粒子でのおおよその含有率,  **新井田ほか(1982)による

表 3月31日降下火山灰及び漂着軽石の特徴


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