2008年6月14日に岩手県と宮城県の県境を震源として,マグニチュード7の大地震が発生した.ここでは,震源近傍の強震記録を解析した結果を紹介する.
観測点分布を図1に示す.震源域を取り囲めるように12点の観測点を選んだ.加速度原記録に0.1 - 0.5 Hzのバンドパスフィルターをかけた後に,2度数値積分を行った変位にして解析に用いた.

図1:観測点の位置(▼)と震央(★).黒丸は本震発生後24時間以内に発生したM>=2.5の地震.赤線は活断層を示す.データは中田・今泉 (2002) を使用.陰影図は国土地理院発行の数値地図50mメッシュ(標高)を使用.活火山およびその位置は,産総研の活火山データベース (http://riodb02.ibase.aist.go.jp/db099/index.html) を参考にした.
長さ42 km,幅15 kmの断層を仮定した.断層の上縁は0.4 kmほどである.断層の走向や傾斜角はGlobal CMTのbest double coupleの節面の1つ (走向:205度,傾斜角:50度)を仮定した.この断層を矩形の小領域に分割し,各矩形領域でのすべり量,すべり角度,破壊開始時刻を波形から推定した.様々な値の破壊伝播速度を仮定して解析を繰り返し,観測波形を最もよく説明できるものを採用した.震源の位置は,気象庁の一元化震源の暫定値である.
得られた結果を図2に示す.破壊開始点より浅く,破壊開始点の南南西側に最大すべり8 m強のすべりを伴うアスペリティがある.一方,破壊開始点の北北東側にはほとんどすべりがなく,この方向は破壊が広がっていないと解釈してもよいかもしれない.破壊の継続時間は14秒程度であった.

図2:波形解析で推定された結果.すべり量(左上; コンター間隔0.5 m),すべり角度(右上; 同5度),破壊開始時刻(左下; 同1 s),モーメント解放量率 (moment rate function; 右下).☆は破壊開始点を示す.右側が南南西方向,左側が北北東方向.
断層全体の平均すべり量は1.2 mである. 得られた地震モーメントは2.2 x 10^19 Nm,モーメントマグニチュードは6.8である.Global CMTの地震モーメントの値 (2.7 x 10^19 Nm) のほぼ同程度である.
得られたすべり分布を地図上に重ねてみると,はの木立と荒砥沢ダムとの間にアスペリティが位置することがわかる.

図4:断層面を地表に投影したもの.
得られたすべり分布を地図上に重ねてみると,はの木立と荒砥沢ダムとの間にアスペリティが位置することがわかる.

図5:波形の比較.観測波形を赤の実線,合成波形を青の破線で示す.堆積層の速度構造(山地部でも新第三系がそこそこ厚く分布している)を再検討する必要がある.波形は縮小して表示.ダウンロードして原寸で見ると,もう少し見やすいと思います.
謝辞:(独)防災科学技術研究所のK-NETおよびKiK-Netで収録された強震記録を使用した.記して感謝いたします.