日本ロボット学会誌,Vol.13,No.2,1995.
特集 構造材料技術の最先端
−ロボット工学者のための先進材料入門−

付    録
ロボット工学者のための材料用語集

応力
 固体材料や構造物などでは外力が作用すれば微小であっても必ず変形が生じる.この変形に抵抗して材料の内部には抵抗力が生じる.物体内部に生じるこの力を内力という.物体内部に仮想断面を考えれば,この面上での内力は外力とつり合っており,単位面積当たりの内力を応力という.仮想面上では内力は,一般にはその面とある角度をなす方向に作用しているが,それを仮想面上に垂直な方向と平行な方向に分解し,垂直な成分を垂直応力,平行な成分をせん断応力という.なお,仮想面が互いに引張り合う時の垂直応力を引張応力,圧し合う時を圧縮応力という.一般には,物体内の応力状態は,その点を含むx,y,zの三つの面に作用する6個の応力成分で示される.

弾性
 固体に外から力を加えると,力に応じて固体は変形する.力が小さい間は力を0に戻すと形も元に戻る.このような性質を弾性という.弾性変形は,外から加えた力により,原子の配置が安定な構造からわずかに変化することによるもので,この変形をひずみと呼ぶ.ひずみには伸びを表わすひずみとずれを表わすひずみがある.

塑性
 ある種の材料では,作用する力の大きさが一定限度に達すると変形の急激な増加を生じ,力を除いてもその変形が元に戻らないことがある.この現象を降伏といい,降伏によって永久的な変形を示すような材料の力学的性質を一般に塑性という.しかしより狭い意味では,降伏によって時間に依存しない永久変形を生じる性質を塑性といい,永久変形が時間に依存する場合には特にこれを粘塑性(クリープ)と呼ぶ.塑性は結晶構造をもつ材料の典型的な性質であり,金属材料において特に著しい.結晶質材料の塑性は主に転位の増殖と移動によってもたらされるが,高温では原子の拡散粒界すべりによっても生じる.

破壊
 固体材料が,外力の作用のもとに二つ,またはそれ以上の部分に分離する現象を破壊という.このときの応力を破壊強度という.特に材料を引張りあるいは曲げ変形した場合の破壊強さをそれぞれ引張強度曲げ強度と呼び,破壊を取扱う最も基本的な値となる.微視レベルでの破壊は,特定の原子面間の引張分離あるいはせん断分離にほかならない.金属材料の破壊機構は微視レベルの引張分離に対応するへき開,せん断分離に対応する微小空洞の成長と合体,およびすべり面分離の三つに大別される.金属組織学的には結晶粒内破壊,結晶粒界破壊のいずれであっても,上述した三つの破壊機構は同様に出現し得る.実際の破壊はすべての破壊機構が共存するのがむしろ普通である.また,破壊機構の差異を反映して,巨視レベルでの破壊形態にも脆性破壊延性破壊という区別が生じる.

延性
 引張りによる最終破断までに材料の著しい伸びや絞りを伴う破壊を延性破壊といい,このような材料の性質を延性と呼ぶ.脆性破壊との区別は多少あいまいで,破壊までに伴われる塑性変形の難易と破壊機構のいずれかにより,かなり任意に判断されている.金属材料の場合,延性破壊の破壊機構はすべり面分離あるいは微小空洞の成長と合体となる.巨視的な破壊形式からみれば,純金属の点状破壊やのみの刃状破壊,板のせん断破壊あるいは傾斜破壊,丸棒のカップコーン破壊などは典型的な延性破壊である.

脆性
 最終破断までに材料の著しい伸びや絞りを伴わない破壊を脆性破壊という.ガラスやある種の結晶性固体は本質的に脆性であり,破壊までに全く延性を示さないことがある.しかし多くの金属材料はある程度の延性を示し,塑性変形の結果として破壊を生じる.したがって,脆性は材料に固有の特性ではなく,温度,ひずみ速度および応力状態のような延性を支配する因子の影響を受ける.特に,体心立方格子や稠密六方格子の金属材料は,高温においては延性破壊をするにもかかわらず,温度の低下とともに脆性破壊をするようになる.これを延性−脆性遷移という.

硬さ
 物体の変形しにくさ,傷つきにくさ.物体が他の基準とする物体によって押込みあるいは引っかきなどの手段で変形を与えられた時の抵抗の大小を示す尺度となるものである.試験法として押込み式,引っかき式および反発式の三つの方式のものが行なわれている.それぞれ,その試験機に応じて実際に定められた規定にしたがって硬さが求められる.測定はいずれの場合も比較測定であって,標準物質と比較して硬さを決定する.

靭性
 材料の粘り強さを表わす用語.破壊を起こすのに要する単位体積当たりの仕事量などを目安として示される.靭性材料として定性的に取扱われているものは,引張強度が大きく,かつ衝撃値の大きいものである.

破壊靭性
 亀裂が存在する材料に応力がかかっている場合,この亀裂が進展するためには材料の有する抵抗力に打ち勝たなければならない.この抵抗力のことを広い意味で破壊靭性という.材料中に欠陥がある場合の破壊強度ということで工学上きわめて意義が高い.一般には亀裂進展過程を支配するパラメータがその材料の破壊靭性を越えた時点で破壊が起こることになる.負荷応力と亀裂寸法の関数である応力拡大係数の臨界値が用いられることが多い.破壊靭性は温度,ひずみ速度,腐食,熱処理等,種々の因子に依存する.

降伏
 物体に作用する応力がある一定値(降伏応力)に達すると,巨視的な塑性変形あるいは粘塑性変形が開始し,ひずみが急激に増加する現象を降伏という.一般の金属は,その結晶粒の内部に転位の運動に対する種々の障害物を含んでいる.面心立方金属では外部応力がからみ合った転位や分散した不純物原子による抵抗に打ち勝ち転位が長距離運動して増殖できるようになったとき降伏が起こる.体心立方金属では,低温域での降伏応力はらせん転位が長距離運動するための力である.高純度の体心立方金属では降伏は一般にはみられない.

座屈
 材料に加わる応力が材料本来の強度に達する以前に材料が大きく変形する現象.棒とか平板に曲げがほとんど生じないような荷重が加わる時,荷重がある大きさに近づくと突然大きなたわみを生じることがある.一般に構造物の変形は,荷重の小さい範囲ではただ一つに定まる.しかし同じ構造物に有限のたわみを生じた平衡状態も考えられ,2種類の平衡状態を比較すると,たわんだ平衡状態のほうが初めの平衡状態よりもエネルギーが小さく,したがって安定となることがある.この現象は平衡状態の分岐点において生じ,座屈といわれる.

加工硬化
 物体に塑性変形を与えると,変形の度合いを増すにつれて変形に対する抵抗が増大し,変形を受けていない材料よりも硬くなる.これを加工硬化,またはひずみ硬化という.変形とともに材料が硬化し,加工抵抗が増加する現象と同一であるから加工硬化と呼ばれている.塑性変形に伴い転位が増殖され,それが不均一な分布となり,互いにもつれ合うことで運動する転位に対する障害となり,それ以上の転位の運動が抑制されるために変形抵抗が増す.加工硬化を生じた金属はもとの材料よりも降伏応力が増加し,硬く強くなるが,脆くなる.加工硬化した材料は焼なましすることによって軟化させることができる.

合金
 2種類以上の元素の混り物である金属の総称.合金は純金属,固溶体および金属間化合物の一つあるいは数相の集合体である.合金の成分元素同志が任意の割合で完全に溶け合って一つの相をなしたものを固溶体とよぶ.溶媒元素の結晶格子の間の安定位置に溶質原子が割込んだ侵入型固溶体と,溶媒,溶質の原子が共通の結晶格子点を相互に置換し合って位置している置換型固溶体がある.また金属間化合物は2種以上の金属元素が結合する一種の化合物で,その結合の割合は一定モル比であり,規則正しい原子配列をする.合金の組成,温度,圧力に対して,その状態でどのような相が存在するかを示した図が状態図あるいは相図と呼ばれるものである.合金は多数の相を含み,体積の大部分を占める相をマトリックス相,粒子の形でマトリックス相の中に分散している相を分散相と呼ぶ.マトリックス相も分散相粒子も,一般には多数の結晶粒の集合体である.合金元素のもたらす効果の主なものは次の3つにまとめられる.第1の効果はマトリックス相の固溶体の性質を変えることである.合金元素が固溶すると金属の強さは一般に上昇する.これを固溶体硬化という.固溶元素の存在は結晶中の電子のエネルギー構造を変え,電気抵抗や透磁率などの電磁気的性質に影響を及ぼす.また耐酸化性,耐食性を改善することもできる.第2の効果は,格子変態点の変化,中間相の形成などの相変化によって,マトリックス相の種類を増加させることである.この効果はオーステナイト鋼,半田合金,強磁性合金,形状記憶合金などに応用されている.第3の効果は分散相の形成に基づくもので,その一つにジュラルミン等で見られる分散粒子あるいは析出粒子による合金の硬化がある.このような合金を時効硬化性合金という.また,合金元素を添加すると熱処理による組織変化の範囲が広がることも,合金が金属材料として利用される基本的な理由の一つである.

熱処理
 固体の状態で高温加熱や低温への急冷などを行なうことにより,温度による溶解度の差や格子変態を利用して合金の組織を変化させて必要な性質を与える方法を熱処理という.基本的には焼入れ焼なましの二種に分類される.焼入れは,焼入れ温度に保って高温相とする操作と,望ましくない相変化が生じないように急速に冷却する操作とからなる.広義の焼入れの目的は,熱的に平衡な状態としては得られない状態を無理に非平衡状態として得ることである.鉄鋼ではオーステナイト化温度に加熱した後に急冷し,マルテンサイトを生成させて硬化させる処理をいう.焼なましにおいては必要な高温に必要な時間保った後,一般には炉中などで徐冷する.広義の焼なましの目的は,熱的に非平衡な状態を平衡な状態に向かって変化させることである.軟化,残留応力の除去,組織の均質化,偏析の軽減などが目的であり,被削性,冷間加工性,機械的性質などが改善される.

格子欠陥
 理想的な結晶においては,原子は規則正しい格子を作って並んでおり,このような結晶は完全結晶と呼ばれる.しかし実際に得られる結晶では,この規則性は少し乱れており,この乱れを格子欠陥と呼ぶ.格子欠陥には点状,線状,面状のものがある.点状の欠陥としては,本来の原子の種類と異なる不純物原子の存在,正規の格子点から原子が抜け落ちてしまっている空格子点,正規の格子点でない位置に原子が入り込んだ格子間原子があり,線状の欠陥としては塑性変形に関与する転位がある.また,面状の欠陥としては,多結晶の粒界(同質結晶が互いに接する境界),結晶面の積重なり方の欠陥等がある.

転位
 原子の配列あるいは結晶格子の乱れが一つの線に沿って生じている格子欠陥を転位という.結晶固体にある程度以上大きい外力を加えると塑性変形が生ずる.塑性変形が元に戻らないのは,原子のつなぎかえが起きることによるが,これにあずかるのが転位である.転位は転位線の方向を表わすベクトルと,結合のずれがどの方向にどれだけ起きているかを示すベクトル(バーガースベクトル)によって表わされる.転位線とバーガースベクトルが垂直な場合には刃状転位といい,平行のときはらせん転位という.転位の中心の部分はまわりの部分よりエネルギーの高い状態にあるので,外から力を加えると容易に原子のつなぎかえを起こし転位が移動する.また転位は動く過程で自己増殖を起こし,この機能は塑性変形の機構の中で非常に重要な因子である.転位の構造と性質は工業材料の多くの性質を理解する基本である.

相転移
 物質のとは,一定の種類の分子が一様な比率で存在し,かつそれらの集合状況が一様であるような,その物質の状態のことである.すべての物質に気相,液相,固相の3相が存在するが,一つの物質の固相がいくつかの固相に分れることもしばしばある.相の間の移り変りを相転移という.一つの物質の相転移は温度,応力,電界,磁界のいずれかを変えて起こり得るが,温度を変えて起こる相転移が最も普通である.

ガラス転移
 ある種の液体を冷却すると,融点でも結晶化せず過冷却になる.この過冷却液体をさらに冷却すると,粘性が増大し流動性を失って液体構造が凍結した状態(ガラス状態)になる.この現象をガラス転移という.アモルファス合金は熱力学的にはガラス状態にあるとされている.

アモルファス
 結晶の中では原子または分子は周期的に規則正しくならんでいる.これに対して,原子の配置あるいは原子のつながりが大きく乱れた固体を非晶質あるいはアモルファスという.ガラスやゴムがその例である.またこのような状態を無定形状態という.その格子構造の特徴は,すぐ隣どうしの原子の距離,数などは対応する結晶の場合とあまり変わらないが,大域的なつながりが乱れていることである.アモルファス合金は,蒸着,スパッタリング,あるいは液体や気体状態からガラス転移点以下の温度に超急冷することによって作られる.熱力学的には非平衡状態にあり,結晶化温度以上に加熱すると原子配列の規則的な状態に戻る.アモルファス合金の一般的特徴として,強さ,硬さ,耐食性が非常に高く,優れた磁気特性をもつので,さまざまな工業的応用が見込まれている.

相変態
 化学組成は同一であるが,物理的性質や原子配列が異なる物質のそれぞれの状態を変態という.特に鋼や合金を熱処理した場合に起こる同一元素の集合状態の異なる変化を一般に相変態と呼んでいる.共析変態とは,二元性合金において固溶体が分解して別の二つの固溶体に変態する反応をいう.オーステナイト状態の鋼が分解し,フェライトとセメンタイトが同時に析出するパーライト変態が有名である.成分元素の拡散を伴わないで原子の配列が変わる相変態をマルテンサイト変態と呼び,それによって生じる組織をマルテンサイトと呼ぶ.高温相の結晶格子が温度低下と共に低温相の格子へとゆがみやすくなり,多数の原子がいっせいにおよそ1原子間距離以下程度移動して起こると考えられている.マルテンサイトは,格子のずれによって,微視的には母相の結晶粒を分割するようなレンズ状の板としてあらわれる.マルテンサイト反応のもう一つの特徴は,板状の相が音速の1/3というきわめて早い速度で成長することである.鋼の場合,オーステナイト(面心立方晶)を急冷するとマルテンサイト(体心正方晶,体心立方晶,最密六方晶)が生成し,この処理を焼き入れと呼ぶ.形状記憶合金などの場合は可逆的で,低温相から高温相への変態もマルテンサイト変態によって生ずる.

形状記憶合金
 塑性変形を加えても,その後の除荷あるいは固有の臨界点以上の加熱で変形前の形状に復帰する合金を形状記憶合金という.臨界点以下の温度で生じた軟らかいマルテンサイト相が,臨界点以上の昇温で元の母相へ逆変態するので形状が回復する(熱弾性型マルテンサイト).これは変態の化学駆動力と負の非化学駆動力(変態に伴うひずみエネルギーなど)とがつり合った,いわば熱効果と弾性効果とがつり合った状態である.また臨界点以上のある温度範囲で応力付加によって容易に変態が進行し(応力誘起マルテンサイト),除荷のみで元の母相に可逆的に戻り形状が回復するので,この現象を擬弾性と呼ぶ.いずれの場合も形状回復の原因はマルテンサイト相が母相へ戻ろうとする復元力に原因している.

超塑性
 金属をある特定の温度,ひずみ速度条件下で引張変形すると,局部的なくびれを生じないで数百%に達する異常に大きい伸びを示す現象を超塑性という.応力σとひずみ速度εとの関係σ=Kε^mにおいて,ひずみ速度感受性指数mが0.3〜1と大きい条件下で生じる.この現象は,結晶粒径が非常に細かいものを高温,低ひずみ速度で引張った時に生じる微細結晶粒超塑性と,マルテンサイト変態の過程で応力を加える時に発生する変態超塑性の二つに分けられる.超塑性の発現により,成型加工性が向上し,変形抵抗が低下するので,精密加工として利用できる.また,固相接合能と振動吸収能の向上も期待できる.

架橋反応
 原子が線状に結合している分子相互間に橋をかけたような形の結合を形成する反応.ポリエチレン,ポリ塩化ビニル,ナイロン等の線状高分子には,加熱すると軟化,流動化し,冷却すると再び硬化する性質があり,溶媒にも比較的溶けやすい.一方,架橋により高度に三次元網目構造を形成したフェノール樹脂や尿素樹脂などは,加熱しても流動化せず,溶媒に対しても不溶となる.架橋の程度があまり高くない場合には溶媒を吸収して膨潤する.架橋を導入する方法としては,架橋剤による化学反応,重合反応過程における不飽和結合を二個以上もったモノマーや多官能性モノマーの混合(架橋重合),放射線照射が利用され,いずれも耐熱性,耐溶剤性,耐摩耗性などの改良による各種の用途が開かれている.

エラストマー
 常温付近でゴム弾性を示す高分子物質をいう.応力を加えると数百%の伸びを生じ,応力を除くと短時間で変形が回復し,変形は可逆的である.エラストマーはその回復力を主にエントロピー的な力に頼っている.これに対し可塑性が顕著な高分子物質をプラストマーとよぶ.

複合材料
 二つ以上の素材を巨視的あるいは微視的に組合せて造られた,素材単独では出し得ない有用な特性をもつ人工材料である.その特徴は構成要素が三次元的に結合しており,要素間に明瞭な界面が存在することである.複合材料は合体系複合材料生成系複合材料の二つに分けられる.合体系は複合の前後で素材の形態,性質あるいは分率がほとんど変化しないもので,FRPのような構造用複合材はこれに属し,複合材の特性と素材の特性の間には複合則(複合材料の特性を構成素材の特性とその体積含有率のみで表わす関係式)が成立することが多い.生成系は複合過程の前後で構成素材の形態,特性,分率が著しく変化したり,初めになかった相が出現するもので,一般に複合則は成立しない.この系は今後,機能性複合材料として重要なものである.一般に複合材料の構成は固体のマトリックスと粉粒体,繊維などの分散材,および強化材からなり,大別して繊維強化系粒子分散系の複合材料がある.繊維強化系はさらに繊維強化プラスチック(FRP),繊維強化ゴム(FRR),繊維強化金属(FRM),および繊維強化セラミックス(FRC)に,粒子分散系は粒子充填プラスチック(PFP),粒子分散強化金属(PRM)などに分けられる.

ぬれ性
 固体と液体とを接触させたとき,固体表面が液体で覆われやすいか否かを表わす用語である.ぬれ性は固体平板上に落下させた液滴表面接線が固液界面に対してなす接触角で定量的に表わされ,これが小さいほどぬれ性がよい.金属基の繊維複合材料を溶融金属含浸法で作る場合に繊維と母材金属間のぬれ性が大きな問題で,繊維の表面処理や母材金属の成分調整等によりぬれ性の改善が種々試みられている.

アブレージョン
 粉体と材料の間に生じる摩耗現象.相対運動している材料間に粉体が入った場合,粉体層上を材料が摩擦した場合,粉体内を材料が運動した場合,粉体層上に材料が衝突した場合などに生じる摩耗をいう.粉体を含む流体の衝突による摩耗を含める場合もある.一般には固体粒子が材料より十分硬い場合に生じる.アブレージョンによる損傷は材料の硬さとよい相関関係にあり,硬い材料ほど耐アブレージョン性に富む傾向がある.(似た単語にアブレーションがある.これは材料表面が高温にさらされるとき,表面が加熱により溶融気化して熱を奪い,内部まで熱が伝わるのを防ぐことをいう.)

参 考 文 献
1) 新しい材料の事典,日本材料科学会編,共立出版
2) 先端材料事典,日本材料科学会編,裳華房
3) 機械工学辞典,越後ほか編,朝倉書店
4) 世界大百科事典,平凡社