HOME 
このページではトルコモーリタニアといった資源開発活動が活発な地域での鉱物資源調査を中心とした研究・海外での現地調査についてご紹介しています。鉱床探査手法の開発には"金属の在処を探る方法の開発:鉱床の探し方"の研究内容をご紹介しています。その探査手法の開発にあたってはHigh-quality, Low-tech and Low-budgetを基本的なコンセプトとして研究しています。巡検・調査では直近の現地調査において撮影した写真などを掲載しています。また、資源開発対象となっていくような話題性のある論文等のレビューも随時更新中です。本ページでご紹介している情報等が、実際に鉱物資源探査に従事している皆様の一助となれれば幸いです。

これまでの研究概要と抱負

これまでの研究概要

現在までの小職の研究は主にスカルン鉱床を対象としたものである。スカルン鉱床では鉱物組み合わせや化学組成の変化に基づくゾーニングパターンの発達が一般的に知られている。それらの詳細な情報は、スカルン鉱床の成因や鉱床探査手法の開発にとって有用であると考え、研究を行ってきた。

広島大学在学中、学部では韓国のCu-Feタイプのスカルン型鉱床の研究を行い、スカルン鉱物の化学組成の特徴や関係火成岩類の性質を明らかにした。更に、スカルン鉱物の流体包有物均質化温度の測定や金属元素の組成分析を行い、鉱床の生成時の条件を推定した。これらの結果を1993年の資源地質学会において一部講演している。

広島大学修士課程においては晶質石灰岩中に発達する脈状スカルンを用いて物理化学的な解析を行った。スカルン鉱物の化学組成の分析値や流体包有物均質化温度の測定値を活用し、脈状スカルン生成時における空隙溶液中の濃度プロファイルを計算した。その結果、拡散交代作用において局所平衡が成立している場合、各成分は互いに独立に拡散するのではなく、ある特定の成分が拡散交代作用を律速している可能性があることを明らかにした。

金属鉱業事業団に入団してからは、国内はもとより海外においても様々な鉱床タイプの鉱床探査を行い、多くの調査報告書を作成した。それらのうち、鹿児島県の山ケ野鉱床周辺における調査結果をEconomic Geologyフィールドガイドブックに掲載している。また、フィジー・ナモシ地域の探査成果を資源地質に掲載するとともに、本年6月の現場担当者会議において講演した。更に、鹿児島県菱刈鉱床周辺の火山岩類のSr同位体を用いた地球化学的研究についても今年度の資源地質学会年回においてポスター発表を行い、ベストポスター賞を受賞している。

筑波大学博士課程では、岐阜県の神岡鉱床周辺に分布する同位体組成が変化する石灰岩等について、同位体組成と構成鉱物、組織、元素組成、鉱物化学組成などの関係の研究を行った。その結果、酸素同位体組成の低下すなわち熱水変質が強くなると共に、(1) Mnに富む明るいカソードルミネッセンス像を示す方解石が卓越し、 (2) 熱水から晶出した緑泥石が多くなり、未変質石灰岩の苦鉄質鉱物に比べてFeと若干のMnに富むことなどを明らかにした。これらの特徴は塩酸や酢酸を利用した元素分析やカソードルミネッセンス分析によって明瞭に識別できることも見出し、簡便で、迅速なこれらの手法は、熱水の活動域や熱水性鉱物の濃集場を直接特定しうる探査方法であり、スカルン鉱床を含むZn-Pb型熱水鉱床への適用が期待できることを示した。この結果の一部は1999年のResource Geologyに発表し、2001年6月に資源質学会から研究奨励賞を授与された。

今後の抱負

○メソサーマル型金鉱床について

現在までの調査・研究結果から、岩手県、宮城県内に分布するいわゆるメソサーマル型金鉱床を産状に基づいてまとめると、1)破砕帯や断層沿いまたはひん岩の貫入面沿いに深部熱水が上昇して珪化・粘土化を伴う金鉱化帯を形成する(破砕帯型)、2)花崗岩類の活動に伴う熱水活動により、堆積岩類や花崗岩類中に鉱染帯を伴う含金石英脈を形成する(鉱脈・鉱染型)の2つのタイプに分類できることが明らかとなってきた。タイプ1はひん岩または断層・破砕帯が地下深部に潜在する花崗岩類まで到達しているような環境の地表浅部の兆候と考えられる。特に、ホルンフェルスが地表に大規模に発達している場合、ホルンフェルス中の断層・破砕帯における鉱染・珪化・変質作用に金鉱化作用が認められるようであれば花崗岩類の活動に伴う金鉱化帯(タイプ2の金鉱化作用)が地下深部に潜頭している可能性があり、今まで十分な調査がなされていないことからそのポテンシャルは非常に高い。一方、タイプ2では花崗岩類がまだ削剥されず地窓状に分布し、ホルンフェルス、鉱染帯及び含金石英脈の発達するような場合、地下浅部に貫入する花崗岩類周辺において含金石英脈を主とする潜頭性の鉱化帯の発達が期待できる。

また、これら2つのタイプの鉱床周辺には珪化帯、硫化鉱物鉱染帯などが認められる場合が多く、これらの成因を解明することは今後の鉱床探査、とりわけ潜頭性鉱床探査に重要な指針を与えるものと考えられる。そこで、鉱床母岩の化学組成の特徴と変質帯・珪化帯などの産状を比較検討した結果、岩石の元素変動を利用した潜頭性鉱床の探査手法を確認しつつある。今後は、従来からほとんど調査・研究が行われていないこのようなタイプの鉱床について、変質鉱物の共生関係などを観察する一方で、Sr、Pb、Ndなどの同位体を用いた研究を行うことにより鉱床生成モデルを構築し、新たな探査手法の開発を目指したい。

 更に、メソサーマル型金鉱床は肉眼でも識別可能な粗粒金を産出することで有名であり、このような金鉱床の精錬手法に"有機溶媒精錬法"が適用できると期待される。この成果をあらゆる岩石について適用できれば、"探査現場での簡易金分析器"の開発も可能と考えられる。しかし、金の溶解に最適な存在形態、粒度や組成などを検討する必要があり、クリアするべき課題も多いと考えられる。いずれにせよ、このような低コスト・無公害の精錬法の研究も含め、多角的な視野に立ちながら鉱床探査・開発手法を確立していきたい。

○骨材資源・環境影響評価を視野に入れた資源情報総合解析図について

金属に限らず、骨材や粘土鉱物なども近年大幅に需要が増大してきた資源である。これら広義の資源の安定供給にかかる調査・研究は本来系統的に行われるべきであるが、組織的・予算的・目的的制約が強く、情報が偏る傾向が強い。しかしながら、近年のめざましい多元素同時化学分析技術の発達により大量で高精度の分析が安価で提供され始めており、このような分析により得られたデータと広域・系統的な地質調査で得られた地質学的・岩石学的・鉱物学的諸データとを組み合わせた研究を行うことでマルチ資源評価指標を開発できる可能性が高い。その際には、小職のこれまでの鉱床探査・解析ノウハウを応用できると考えている。また、岩石に加え水、土壌などの試料を含めて総合的に情報を整備した上で、高精度なマルチ資源評価指標を開発することにより、地球化学図の枠を超え、農業分野等も含めた資源情報の総合解析図の作成も視野に入れることができる。このような国土の総合的な資源情報の整備−解析−評価は、広義の資源の系統的調査・研究に留まらず、環境先進国を唱える我が国にとっても必要不可欠であることから、環境影響評価への応用にも繋がっていくと期待される。

○水−バクテリア基礎調査について

 岩手県旧松尾鉱山の坑廃水処理に利用されている鉄酸化バクテリアなどのバクテリアや、バクテリアが生息するような強酸性水が卓越する休廃止鉱山周辺も含めた水の全国的・系統的な分布調査・基礎研究は、義務者不存在の休廃止鉱山を多く抱える我が国地方自治体、技術指導を行う国の調査研究機関や実際に現場作業を行う民間企業にとって非常に有用であると共に、環境基礎情報の収集・整備の一環として重要である。国の最高研究機関である産業技術総合研究所は、このような基礎的情報の整備・応用ノウハウの構築に向けて、坑廃水処理などの鉱害問題の発生が予想される鉱山開発の盛んな発展途上国に対して技術移転を行うという立場、バクテリアを利用した金属精練法への応用という観点からも早急に調査・研究を行わなければならないと考えられる。更に、この調査の応用として水を用いた新たな鉱床探査手法の研究も試みたい。

○研究の意義と社会的貢献

鉱床探査の成否は、採択する鉱床生成モデルに依存しており、モデルに沿った探査手法の適用が重要な鍵となる。従って、鉱床形成に寄与した熱水と関連のある鉱物組織や組成を研究し、元素移動機構を解明することは探査手法確立には最も重要であると考える。ましてや、探査の効率化、低コスト化の面からも微量成分分析などの簡易で安価な手法による鉱床探査は有望地区の多数存在する発展途上国でますます重要になると思われる。このような調査・研究は環境影響評価、骨材資源評価などと表裏一体であり、観察する自然現象は同一の事実に基づいている場合が多い。言い換えれば、ほぼ同一のプロセスを経た自然現象を研究対象としているという観点から、21世紀の世界が直面する資源、環境、食糧、宇宙開発問題等に対しても答えを提供できるような調査・研究が行えることを意味している。従って、資源・環境分野に限らず広く応用できる技術・ノウハウを用いた多分野での社会貢献が上記の調査研究を通じてできるものと考えている。

HOME