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モーリタニア国鉱物資源開発戦略策定調査(JICA)

○モーリタニア

2003年11月17日から11月29日までモーリタニア・イスラム共和国へ出張しました。その内容について簡単にご紹介したいと思います。
今回の調査は、独立行政法人国際協力機構(JICA)が実施する「モーリタニア国鉱物資源開発戦略策定調査」の一環として行われた現地協議及び現地予察で構成されています。
本事業のカウンターパートはモーリタニア国のOMRG(モーリタニア地質調査所)という組織です。下の写真はOMRGの庁舎の入り口です。

この「モーリタニア国鉱物資源開発戦略策定調査」とは、モーリタニア政府が日本政府に対して行った協力要請に対して実施されるもので、調査目的・調査内容は2003年3月に両国間で合意された実施細則(S/W:Scope of work)及び議事録(M/M:Minites of meeting)に基づくものです。
下の写真は主なモーリタニア国の関係機関との協議の様子です。


OMRGでの協議の様子


鉱山省副大臣との協議の様子

なお、JICAは本調査をプロポーザル形式で業務委託募集を行い、三井金属資源開発(株)が受託しています。また、補足的現地調査等の鉱物資源調査に係る指導・監督を行うため、JICAが産業技術総合研究所に専門職員の派遣を委嘱することとなっています。

モーリタニア・イスラム共和国は日本の約2.7倍の国土を持つ大きな国です。アフリカ大陸の北西部に位置しており、西サハラ、アルジェリア、マリ、セネガルと国境を接しており、国土の中央部から東方にかけて広大なサハラ砂漠が広がっています。首都は大西洋に面するアフリカ西海岸に位置するヌアクショットで、全人口250万人のうち80万人が居住しています。
ヌアクショット市内の様子は下の写真のようです。


宿泊したホテルの前の様子


市内を車で移動中のところです。

道路は舗装されている区間が多いのですが、殆どの交差点では信号がありません。このため、交差点付近ではちょっとした渋滞になることが多く、全ての方向から車がひっきりなしに交差点につっこんでくるので、市内の交通状態は大目に見ても良いとは言えません。

今回は短い期間ですが、現地の状況を把握するため現地予察調査を行いました。


ヌアクショット市街から車で20分くらい東方に行けば、このような砂漠地帯が広がっています。上の写真の右奥から風が吹いており、風上側が盛り上がった凸に、風下側に馬蹄形の急斜面のなす窪地ができる、典型的なバルハン砂漠を成しています。バルハン砂漠は砂の供給量が多い地域でよく認められます。


この写真は風下に向かって撮ったもので、バルハン砂漠の風上側の盛り上がりが特徴的に認められます。
最初の砂漠と下の写真との砂の色の違いに注目してみて下さい。若干下の写真の方が白い傾向が強いのが解ります。この原因は白色の度合いが強い方の砂には細かい白色の石灰質デブリ(おそらく海成珊瑚の死がいが二次的風化作用によってコンクリーションしたもの)がいくつも入っているからです。大西洋(ヌアクショット)に近づくに連れ、この傾向は顕著になり、ヌアクショット市街では海成の地層を示す貝殻片が至るところで観察できます。


ヌアクショット近郊の幹線道路沿いに住む現地住民達

さて、ヌアクショットから南東に舗装道路をひた走ると、下の写真のような風景が広がってきます。


モーリタニアの南部では典型的な砂漠というよりかは、潅木が所々に認められる土漠になっています。


特に、地形的な低地(涸れ川)沿いには、草原のようなものも認められます。このモーリタニアの南部地域は弱い雨季があるのです。


また、幹線道路沿いには約30Km毎に、上の写真のような携帯電話用のアンテナが設置されています。モーリタニア国内には2社の携帯電話会社があり、それらを使えば、幹線道路沿いのある程度の範囲で携帯電話の通話が可能です。しかし、今回の現地調査地域では圏外でした。


幹線道路を外れて南下すると、道路はひたすらダートになります。日中の気温は11月で30℃以上になりますが、湿度が低いのでそんなに暑いとは感じません。


ダート沿いには至る所に井戸が掘られており、付近住民や家畜の貴重な水源となっています。井戸の中には水が溜まっていましたが、ひどく茶色に濁っており、飲んだら一発で病院行きです。


今回のキャンプ地に到着です。今回のキャンプ地はアレレ村というところで、ヌアクショットから行くよりも、セネガルからの方が地理的に近い地域でした。
村には写真のようないくつもの小屋があり、そこに住民が暮らしています。電気、ガス、水道はもちろん整備されていません。


今回宿泊した小屋です。小屋自体は厚い土壁で作られており、扉が表に2枚、中は間仕切りで仕切られており、部屋間を行き来することはできません。横側面と扉正面に、小さな窓が取り付けられています。保温性は抜群で、夜は扉を締め切ると完璧な寝苦しい夜を再現できます。
今回宿泊した村には、おおよそ100人強の住民が住んでいました。リモートエリアにしては比較的大きな村と言えます。スリなどの一般犯罪の危険もなく、治安上の問題はほとんど感じられません。


夕食の一皿。ヤギの肉+ジャガイモを甘く煮たものです。味はまあまあで、"マトンのリンゴ煮込み"といったところ。ヤギはその日のうちに絞めたももを使用しました。新鮮で、臭みはほとんどありませんが、塩とコショウがあればと思いました。これをパンと一緒に食べます。


アレレ村の子供たちが日本人が珍しいのでしょう、よってきます。みんな基本的にシャイで、中々彼らから話しかけることはありません。言語はアラビア語とフランス語のちゃんぽんのようですが、私には皆目わかりません。そんなときはデジカメで彼らの写真を撮って見せるのが一番手っ取り早い交流方法です。撮った写真をその場で見せると必ず喜んでくれます。


昼食です。夕食と同じくヤギの肉を焼いたものと、ジャガイモのフライでした。


道沿いで泊まれば、あっという間に人だかりが出来ます。


モーリタニアでは、今でもロバが輸送・移動の手段として活躍中です。


今回の調査中は、イスラム教徒にとって辛いラマダンの時期と重なってしまいました。彼らは日中陽が差しているうちは、何も、水さえも口にすることが出来ません。 そんな彼らを横目に日本人はコーラなんぞを飲んで乾きを癒します。

さて、本題の現地調査の様子について簡単にご紹介します。


今回の調査では、3カ所の銅または金の鉱徴地を調査しました。そのうちの2カ所をご紹介します。上の写真はKadiar(カジャール)という、モーリタニアグリーンストーン帯中に胚胎する赤鉄鉱+鏡鉄鉱の卓越するCu-Au含有ゴッサンです。地表ゴッサンは地層の走向と調和的にN10W方向に300m程度連続するのが確認できます。ゴッサンは緑泥石−白雲母片岩中の石灰岩を交代して発達しており、オパール質シリカ+酸化鉄などの鉱物に富み、ジャスペロイド様の鉱物組み合わせを示しています。この鉱徴地ではOMRGがボーリング調査を実施しています。それによれば、地表下にも銅で1-2%の鉱化帯が鉄に富む石灰岩帯中に脈状・鉱染状に認められるとのことで、Auも若干含んでいるようです。


赤鉄鉱などの酸化鉄はおそらく初生の硫化鉱物が風化作用によって酸化されたものと考えられます。上の写真は白雲母片岩中に認められる自形黄鉄鉱が風化され、酸化鉄に置換されたものです。


ゴッサン付近にはいくつかの露頭が観察できます。上の写真は緑泥石−白雲母片岩の露頭の様子です。


地表ゴッサン周辺の地表には多くの酸化鉄コンクリーション(いわゆるピソリス)が多く認められます。ASTERなどの衛星画像解析により、このような酸化鉄に富むゾーンを明瞭に抽出できると期待されます。


地表ゴッサン周辺には塩基性岩が変形を受けた地層も認められ、一部は蛇紋岩下しています。写真の青緑色の露出岩石がそれらに該当します。また、露頭の至る所に、白色脱色した岩石も認められます。これは蛇紋岩などが変質を受けたものと解釈されています。よく観察すると、クロマイトが変質を免れて残っており、磁石を近づけると強い磁性を示します。ゴッサンを形成した熱水活動に関係するかどうかははっきりしませんが、ゴッサンがCoやNiを含むことから、これらの塩基性岩に含まれていたCo、Niなどの元素がゴッサンを形成した熱水活動により移動・濃集したことを窺わせます。

次に、もう一カ所の鉱徴地を見てみましょう。
上の写真は上記のKadiar(カジャール)鉱徴地の北約20Kmに位置するbouzraibie(ブズレビエ)鉱徴地です。カジャール同様、地表ゴッサンが認められますが、個々は特徴的にMnに富む酸化帯が発達しています。ゴッサンではAuの鉱徴が認められ、他にZn、Pb、Cuなどが濃集しているようですが、Au以外は経済的価値を持たない品位を示しています。


この鉱徴地ではゴッサンの走向方向と直交する方向にトレンチ調査が行われています。そこでは幅4mの金鉱化帯が認められています。品位は低く1-3g/tと報告されています。


幅4mの金鉱化帯の部分の写真です。この金鉱化帯は特徴的にバライトの卓越する層準と重複しています。周辺には流紋岩や安山岩が変成した岩石が認められ、産状からおそらく金に富む亜火山岩胚胎塊状硫化物鉱床が変成を受けたものと考えられます。


金鉱化帯を胚胎するバライト層の接写写真です。ピンク色の基質部にはMn炭酸塩鉱物(ロードナイト)が形成されています。


金鉱化帯の見掛上部の層準の岩石の接写です。黒い部分には鏡鉄鉱が、ピンク色の部分にはロードナイトが形成され、層状を成しています。


bouzraibie(ブズレビエ)鉱徴地の周辺には小規模な銅鉱徴がいくつか認められます。上の写真の下部に見える露頭は鉄鉱石様の岩石中にmalachiteが認められました。遠方にはbouzraibie(ブズレビエ)鉱徴地の含AuMn−Fe酸化物ゴッサンが、小高い丘を成しています。

簡単ですが、この辺で今回はおしまいです。これからも巡り会いを大切しながら、世界中に住むまだ見ぬ人々との多くの交流ができれば人生も豊かになるだろう、と思っています。そして、このページをごらんになって頂いた皆さんに、少しでも私たちの調査のことを分かって頂ければと思います。

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