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7.元素比マッピング

山ケ野鉱床周辺では,熱水変質作用の進行とともにAu, Ag, As, Sb, Kが増加し,Na, Ca, Srが減少している.これらの元素組成を指標にして熱水変質帯を抽出する場合,単一の元素にのみ注目すると原岩の組成不均質性に強く影響されるという弱点があるため,その適用に変質帯原岩の性質をしっかりと把握しておくことが必要である.

この点で,変質による斜長石のみに起因する変化や,微量元素の変化に着目した場合,元素組成比は単一元素の変化に比べて原岩の化学的不均質性による影響を受けにくい.元素比は適用する地域によって絶対値の変動はあるものの,元素濃度単独での指標に比べてより一般性のある指標として熱水変質に伴う元素変化をより鋭敏に捉えることができると考えられる.

この解釈に基づき,濃度スケール(%オーダーまたはppmオーダー)が同じ元素組み合わせを用いた元素比K/Na比及びAs/Sr比の元素比変動を示した分布図(元素比マッピング)の結果を第10図に示す.K/Na比が高い岩石の分布範囲によってIII帯を明瞭に識別出来ているのがわかる.特に,As/Sr比では,第4図の変質鉱物分布では識別できなかった金鉱化作用を伴うIII帯のみを明瞭に識別できている(第10図).従って,本地域のようなIII帯の露出する地域では鉱化作用や変質鉱物分布の情報を併せ持った探査指標としてK/Na比やAs/Sr比を利用できると考えられる.ただし,この指標を適用する際には,1)変質帯の原岩の組成不均質性の定量的評価,2) 粘土鉱物種の変化を用いた温度構造解析による鉱床の削剥レベル(現在の地表面が変質帯や鉱床のどこに位置づけられるか)の検討が必要不可欠である.

第10図  山ケ野鉱床周辺における岩石のK/Na比及びAs/Sr比分布,並びに岩石微量元素と鉱物組み合わせの空間分布.As/Sr比の高い岩石は金鉱化作用を伴う山ケ野鉱床地表の変質帯V帯中に分布.

実際の探査現場では,求める金属元素の中長期的な用途の拡大・縮小といった市場付加価値変動リスクを軽減するため,必要最小限の調査項目による効率的な探査区域の絞込みや探査費用の縮減が求められている.今回紹介した岩石の化学分析のみによる探査手法は従来の土壌,岩石,川砂調査などを併用していた探査(Meldruma et.al, 1994)と同等程度の探査区域の絞り込みが可能である.特に,近年のICP分析などを用いた多元素同時分析技術の発展により,岩石粉砕等も含めた岩石化学組成分析価格は安価となっている.従って,これらの元素比変動と粘土鉱物種の変化を用いた必要最小限の温度構造解析を組み合わせることによって,より精密で,安価で効率の良い探査が可能となると考えられる(第1表).

第1表  元素比マッピングにより期待される費用対効果

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MURAKAMI Hiroyasu (2004) : Elemental ratio as an indicator for geochemical exploration: Application for the Yamagano Low sulfidation epithermal Au-Ag deposit